第23話 主婦と仲良しピンクとブルーは何がしたかったんや……。
そこからライリーはけっこう頻繁にうちでお茶をして帰ることが多くなった。
おネエなんだから別に危険じゃないと思い込んでからの私は、ライリーに警戒をしなくなったことも大きい。
人ったらしのライリーによってパパもとても友好的に接していて、なんだかウチの『お姉ちゃん』みたいなポジションだった。
ちょっと憧れるな、お姉様♡
ノーマンはしきりに警戒を解くには早すぎると言っていたけど。
私的にはもう完璧信用しきっていたのだった。
「……んで、なんでアナタガイルノデスカ?」
今日も今日とてノーマンと一緒にお昼ご飯を食べに屋上にいたら、何故か目の前にユウリが立っていた。
「……いちゃ悪いのか?」
なんかふんぞり返り、すっごい顔で私を睨みつけていた。
「……いえ、別に……。」
なんか睨まれて怖いのでさっさと目線を逸らし、ノーマンと隅っこの日陰に移動する。
なんでこの人屋上の真ん中でふんぞり返ってんだろ……。
しかも隅っこに移動した私をずっと睨んだままなんですよね。
なんか用事があるなら早く言って欲しい!
食欲が減退するじゃんよ!
「……セイラ、俺が壁になってやるから奥に行きな。」
ノーマンがそう言って私とユウリの間に入ってくれた。
ユウリに背を向けて、私を死角にしてくれる。
「……ありがと。」
トホホの顔でもモソモソとサンドイッチを口に運んだ。
食欲減退するって、こんなの。
もう帰ってくんないかな。
日光浴なら学園の庭園でやればいいのに……。
そろそろ食べ終わるかなってぐらいに痺れを切らしたのか、ユウリがドスドスとこちらに歩いてきて、私の目の前に立った。
ノーマンがそっと私を庇うように手で壁を作ってくれるが、ユウリはそれをフンっと鼻で笑う。
「私がブラウン嬢に何かするとでも?」
「……いやそう言われても、よくわからないからこうしている訳で。」
ノーマンが淡々と表情も変えずに話すと、ユウリはいちいちカチンと来るのか怒りが募っているように見えた。
「キミは関係ないだろ!喧嘩売っているのか!?」
「……怒りのスイッチがよくわからん人だな……。」
「……侮辱する気か!!」
「……メッソウモゴザイマセン」
淡々と口答えするノーマンにユウリは真っ赤な顔して怒りをあらわにした。
「男爵令嬢風情が、トーマ様に取り入って友達だと!?
どうやって友達になったんだ!?
吐け!そして身の程を知れ!そして友達を今すぐ取り消してこい!」
ユウリは耳まで真っ赤にしながらそう叫んだ。
「はい是非お願いしたいです!」
私はパァッと笑顔になる。
なんだこいつ私の救世主か?
友達取り消し部隊隊長に任命していいかな?
なんて思ったが、ユウリのイベントを思い出す。
『初めはなんて女だって思ってたが、キミも色々苦労してたんだって気が付いたんだ……。
色々大変な人生だったんだね。
もう寂しくないよ、私がそばにいるから……!』
あー……可哀想がりさんだった。
彼は確か私の境遇で同情していくタイプだっけ。
妾の子で、平民上がりで、母親が亡くなってなどなどの不幸揃いに弱いタイプ。
そんな彼も似たような境遇だったからである。
あー、このまま嫌われたままでいたいんだけど、どう転ぶかな……。
私の意外な言葉に理解が追いつかなかったのか、ポカーンと固まっている。
固まっていたおかげで私も回想する時間があったので良かったのだが……。
「……是非、とは?」
意識を取り戻し、私の言葉を繰り返す。
「いやだから、身の程知っているので友達を取り消すように是非協力をお願いしたいのです。」
「……いやいやいや、キミが自分でなんとかしろよ。」
「なんとかできないからお願いしているんですよ!」
「ど、どうやって取り入ったか知らないし、私が取り消せるわけがないだろ!」
「側近なんだからなんとかしてくださいよ!!」
「自分でなんとかしろ!!」
「男爵令嬢がなんとかできるわけがないでしょう!」
「……あの、ちょっといいでしょうか。」
言い合う私たちにノーマンが挙手をした。
それをユウリが『なんだ言ってみろ』と言ったので、ノーマンがため息交じりに口を開いた。
「このパターン毎回で申し訳ないんですが、もうチャイムなっちゃいましたよ。」
ノーマンがゆっくりとお弁当を持って立ち上がった。
私も慌てて立ち上がると、ユウリが焦った顔で屋上から走り去っていった。
『覚えてろよ!』
なんて捨て台詞を添えて。
私に言う前にお前がなんとかしろおおお!!
私の今日の叫びである。
+++
ユウリの言い分に納得ができずに、机に肘をついて頬を膨らましていた。
「セイラどうしたの?なんでこんなに膨らんでるの?」
「人を風船みたいに言わないで!」
私の頬をブニブニと指で突きながら、ライリーが笑ってた。
「何かあったの?」
「あったけど、あってないようなあったような……。」
ライリーはうちに出入りするようになって、お母様やパパから私の事情を聞いている様子。
トーマに友達になってくれと言われ断れなかったことや、シトロンに連れ去られたこと。
お母様やパパが知らないロゼリア様にビンタされちゃった事までも知っていた。
……まぁ学園でこれは噂になったしな……。
知っててもおかしくない。
さっきの事を説明すると、ライリーは頬に手を当てたマダムのように小首を傾げる。
「色々大変だったわね……」
「そうなんですよぉ……。」
て言うかいつまでブニブニしているのだ。
いい加減やめれ!と、ペイッと手をはたき落とす。
ノーマンは呆れたように引き攣ってるし、ライリーは手をはたき落とされてもニコニコである。
「……とりあえず、青色の希望通りに友達辞めれたらいいんだけどなぁ。
と言うか友達になって欲しいと言われて、その後何もないってことは夢だったのかも?」
「……いやそれはないって。」
私の言葉にノーマンが冷静に突っ込む。
その言葉にまたブスッと頬を膨らます私であった。
……そしてブニブニが……と、最初に戻る。
「彼らをもう避けるのはやめたの?」
ライリーの言葉に私はキョトンとした顔をした。
「え?……可能な限り避けますけど。」
「俺はもう無理だと思うけど……。」
そんなこというノーマンをギロリと睨み『避けるんだ!』と言い聞かせる。
ライリーはにっこりと笑って、こういった。
「私も協力するわ。」
「え?」
なんで?って思ったけど、その後の言葉に私の顔に不信感が募る。
「面白そうだから!」
あーですよね。
そんなこったろうと思ったけど!
「他人事だと思って!!」
私の叫びはライリーの楽しそうな笑顔に消えていった。
まぁいいけどさ、協力してくれるなら……。
後でバイト代請求されても払いませんよ!
フンスフンスと鼻を鳴らしながら口を尖らす私にライリーはまたにっこりと微笑むのだった。
それをじっと見つめるノーマン。
教科書で口元を隠しながら、じっと私とライリーの様子を見つめていた。
そして小さくため息を吐くと、窓の外を見上げていた。
私はそんなノーマンの様子に気がついていなかったのだった。
+++
「もうすぐ夏休みかぁ……」
家で寝る前にいつものようにノートを広げていた。
日記のようにあった事や思ったことなどを書き足していく。
だが忘れてはいけない。
来週からテストだ。
テスト勉強は……ノーマンがくれたノート頼み。
ふと振り向くと、後ろでウーはすでにベッドで寝る体制。
足を組んでベッドの上で読書を楽しんでいらっしゃる。
読んでいる本は、多分ジジのオススメ恋愛小説……。
ウー様最近このシリーズにハマっているのだ。
ちょっと悲恋な感じのやつで、ウオンウオン時折泣いている。
犬が人間の恋愛に号泣するとか、びっくりだぜ……。
ノートを書き書きしていると、何やらしたの方が慌ただしくなっている音が聞こえる。
『……こんな時間に、来客?』
うちは夜間の来客なんて珍しい。
時計を見ると、もう8時を過ぎていた。
しかもなんだか慌てているような声。
誰かが階段を上がる足音。
しかもそれが1人じゃない感じ。
ウーでさえいつもと違う感じに私に飛びついてきて、何故か私がお姫様抱っこをしている感じ。
中々重いです、ウー様。
ウーを抱き抱えガニ股になって耐えていると、扉をノックする音が響いた。
ウーをベッドに放り投げ、恐る恐る扉を開けると……。
「やぁ、こんばんは。」
私の目の前にはシトロンが立っていたのだった……。
……は?
……なんで!?




