表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/188

6.旅人救出


「リー! リー!」

「はいはい、そうですね」


 スランの発音がちょっとだけ良くなっていた。

 だが、相変わらず単語は言えないようだ。

 俺たちの名前の頭文字を一文字言うのが精一杯らしい。

 おかげで何か野球で盗塁しようとしてる走者みたいだ。


 ちなみに今スランは、例のエルフ変装セットのカツラを被っている。

 俺が買ったお土産は、いい感じにスランの玩具になっている。

 まぁ、邪険に扱われるよりはいいな。

 ドヤ顔でリアに見せつけている姿が可愛い。


 ライトベルはエルフの里で買った本を読んでいる。

 中には観光パンフレットのような無料で手に入るものもある。

 里の歴史の研究とかに使えるらしい。

 ナフィに戻るまで暇なので、少し借りて読ませて貰おう。




 適当に本を借りたら、恋愛ものの小説だった。

 結構熱烈な絡みもある。正直、ちょっと息子がおっきしてしまった。

 これは興奮するだろ。

 何が興奮するって、女の子から借りた小説がえっちいとか。


「……それ、エレフトラから借りた奴」

「あぁ……」


 小説の中で、女性が男性を襲う的な描写があった。

 恐らくライトベルは参考にしてしまったんだろうな。


 ん? 何かがひっかかる。


「なぁ、リア」

「はい?」

「お前に燻製のテイミングトカゲの話したのって誰だ?」

「あぁ、エレフトラさんです」


 あれ?

 あいつ、順調に俺のパーティー引っ掻き回してないか?


「というか、あいつ確かアダルトな事苦手だったよな?」

「……知識だけなら、女性陣最高はエレフトラ」

「お風呂場だと一番エッチですよねー。ロントさんによくセクハラしてますし」


 そ、そうなのか。

 じゃあ俺の前で見せるあの恥じらいは何なんだ?


「あいつって、俺の前じゃ恥かしがり屋だよな? アレ演技ってことなのか?」

「いや、多分違うと思いますよ」

「へ?」

「……エレフトラは、男が苦手」


 ……あー

 そういやあいつシスターだったな。

 いや、ちょっと待てよ?


「シスターだから男性と接点無かったんですよ」

「それはおかしくないか? あいつ、シスターになったの半年ぐらいだったよな?」

「……そうなの?」

「知らなかったです」


 そうか、その事実知ってるのは俺とロントだけだったか。

 ただだからと言ってあいつが男を知っているとも思えない。

 むしろ、耳年増と言った方が自然だ。


 あいつは知識はある。

 だが、実際に俺とライトベルが交わり兼ねない場面を見たら赤面して逃げ出す。

 あの時の反応は、どうも作られたものな気がしないんだよな。

 まぁ、とりあえず保留ということにしておこう。




 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~




 客車内での過ごし方は人それぞれだが、基本的には無言だ。

 たまに雑談することはあるが、大体丸1日ずっと一緒とかだと会話の内容がない場合がほとんどだ。


 一番わかりやすいのがライトベルだ。

 彼女は多くの本を持ちこみ、大体はソレを読んでいる。

 中には価値がある本もあるそうで、いざとなればそれを売り払うという手段も考えてるらしい。

 金持ちが現金以外に宝石を持ち歩いてるのと同じようなもんだろうか。


 エレフトラもこれに近いものがある。

 ただ、彼女は加入してから日が浅いのでたまにソワソワしている。

 それはスランも一緒だ。


 ロントは基本的に外の景色を眺めているのが多いかな。

 あとたまに筋トレをしている。

 ダンベルのようなものを買おうか? と提案したことがあるが、ブラウン君の負担になるようなものはダメだと断っていた。

 腕立てしたり、たまに外に出てブラウン君と並走したりしてる。


 俺とリアは割とその時々だ。

 ライトベルから本を借りたり、膝枕したり。

 ただ、1つリアの趣味が増えた事がある。編み物だ。


「こんな暑いのに編み物なのか?」

「冬に練習を始めては遅いじゃないですか。秋までにある程度編み物をマスターしつつ完成品を貯めて、秋に一気に売るんですよ!」

「なるほど」


 確かに客車の中は基本的に暇だ。

 その時間を内職に当てるというのはいいかもしれないな。

 俺も何か考えておこうかなぁ。

 何か思いついたらな。




 その時も、リアは編み物をしていた。

 俺はライトベルと読書。スランは丸まって眠っていた。


《ユーハさん!》

「……あっ」


 ポートとライトベルが同時に反応した。

 モンスターだろうか。


《この道の先で、1人の冒険者がモンスターに襲われてます》

「……あいてはワイルドベアー」

「ワイルドベアーか。最悪俺1人でも処理出来るな」

「……繁殖期でもないし、まだそこまで大人じゃない個体。多分ユーハ1人でなんとかなる」

《ライトベルさんの呪術もありますしね。余裕だと思いますよ》

「距離は?」

《1キロ程です》

「余裕だな」


 ナイフをちゃんと装備している事を確認すると、俺は客車から体を乗り出した。




 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~





 客車をひいているブラウン君と、全力で精霊魔法をかけた俺。

 現時点で、この条件だと実は俺の方が数段早い。


 ブラウン君には普段から精霊魔法がかかっているが、力を増す魔法だけだ。

 足を速くする魔法がかかってないのは、客車の問題だ。


 俺たちが使っている客車は、客車の中でもかなり丈夫な部類に入る。

 それは長距離の移動を考えられている為だ。

 だが、それでも客車自体には精霊魔法をかけられない。

 ブラウン君の足を速くしようとすると、客車の車輪が壊れてしまう恐れがある。

 実際一度それで壊れかけたという事件も発生している。




 俺は自分に足を速くする魔法、力を増す魔法、投擲の命中を上昇させる魔法を全力でかける。

 何だろう、体が軽い。

 精霊魔法が強く効いているのか?


《これはエルフの住む森だからですね。精霊魔法に有効なオーラのようなものが働いてます》

「へぇ、好都合だな」


 息を吸って吐く。

 そして、客車から飛び降りる。

 ナイフを触れて位置を確認しつつ、強く地面を蹴った。





「いたっ!」

《弓の方ですね。女性ですか?》

「熊相手にアレは確かにつらいだろうな。多少強引に割り込む!」


 俺は猛スピードで走りながら、ナイフを投擲する。

 この速度で走っていると、バイクに乗っているかのように風圧が凄い。

 精霊魔法投擲の命中を上昇させなければ、恐らく当たらない投擲だ。


 ワイルドベアーは矢を腹部に受けながら、女性の冒険者へ襲いかかる。

 女性の冒険者は距離を取りながらなんとかして状況を打開しようとしている。

 だが、このままじゃジリ貧だろう。

 まぁ、俺がそうさせないんだけどな。

 投擲したナイフがワイルドベアーの足に当たる。

 威力はないので体勢を崩すにも至らないが、気を逸らす事はできる。

 俺は今の自分の勢いそのままに、ワイルドベアー相手に強烈な飛び蹴りをかました。


「そぉい!」

「きゃっ!」


 弓の冒険者にビックリさせてしまったかもしれないが、知った事ではない。

 クマは俺に強く蹴り飛ばされる。

 間髪入れずにクマ相手に再び飛び乗る俺。

 そりゃ! 何度もナイフで突き刺してやる!


《今話題のジャンプ攻撃って奴ですね!》

(どこで話題なんだよ!)


 俺はワイルドベアーの急所を的確に攻撃する。

 喉とか目とか後頭部とか。

 流石のワイルドベアーも、これには絶命だ。




「ふぅ、大丈夫だったか?」

「……」


 弓使いの冒険者はポカーンとした顔でこちらをみていた。

 いや、そりゃそうか。絵面としては、唐突に飛び蹴りからの滅多刺しをした不審者だ。

 彼女はハッと我に返ると、何度か瞬きをした。


「怪我は無かったか?」

「は、はひ!」

「はひ?」

「大丈夫です! 怪我はないれす!」

「そ、そうか」


 大丈夫じゃなさそうな気がするが。主に滑舌が。

 まぁ、あまり気にしないでおこう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ