表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/188

7.一時乃縁


 助けた弓使いは栗のような色の茶髪で、両脇をゴムで縛った髪型をしていた。

 ツインテール……ではないな。サイドテールというのだろうか?

 

《ピッグテールですね。豚の尻尾に似ている事からそう呼ばれてます》

(可愛い名称なのかそうじゃないのかよく分からんな)


 彼女からは田舎な雰囲気が漂っている。

 まぁ日本に比べればここの都会なんてたかが知れてるんだが。


《ってそうじゃないですよ! 一応ちゃんと傷が無いかどうかチェックしないと!》

(あぁ、そうだった)


 えっと、服は破けた様子はない。

 ワイルドベアーの攻撃は受けてないようだ。

 とりあえずそこは一安心。あいつの爪汚ねーから、傷口から何か菌が移りそうだ。

 あとは……ちょっと膝がすりむいてるな。


「膝、大丈夫か?」

「は、はい! これぐらいならぜんぜんぜん」

「うーん、ちょっと待ってろ」


 ナイフポーチから小さなケースを取り出す。

 中には軟膏が入っている。

 殺菌と止血に使える薬だ。

 竹のような木の樹液を煮詰める事で作れる。


「ちょっと痛いけど我慢しろよ」

「はい!」


 ちょっと多めに薬を塗る。

 この薬、効き目はあるんだけど結構傷にしみる。あとちょっと臭い。

 しかし実際怪我する時は、そんなこと言ってられないからな。

 予備の布で傷口の周辺を保護してとりあえず手当は大丈夫だ。


「あの、ありがとうございます!」

「良いって良いって、困った時はお互い様だし」


 そんなやりとりをしていると、客車と合流した。

 ブラウン君にちょっとびっくりしていたな。


「えーっと、これが俺達の客車なんだけどどうする? 乗ってくか?」

「えっ」

「あぁ、方角はナフィ方面な。流石に逆向きには行けないけど」

「いえ、ナフィへ行く道で大丈夫です」

「そうか。じゃあ行こうか」

「は、はい!」


 なんとなくなし崩しにだが、同乗させてやった。

 こういうのは一時の縁というか、旅は道連れなんとやらというか。


《情けは人の為ならず! ってやつですね!》

(えっそれ悪い意味になってないか?)

《本来は、人を助けるのは巡り巡って自分の為だって意味なんですよ》

(へー)

 

 まぁ、そういうことだ。

 そんなこんなで、俺は道端に落ちていた弓冒険者を拾ったのだった。





 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~




「あー、ユーハさん結託してるでしょー」

「してないしてないって」


 新しい同乗人が増えるという事は、コレをやらなければならない。

 そう、マテリアルだ!


 ということで新同乗人を交えてマテリアルをやっている。

 のだが、何故か彼女は俺を援護してくれる。

 助けてくれたお礼なのだろうか。

 もしくは俺に惚れたのか?

 いやぁ、モテる男は辛いなぁ。


「あ! ユーハさんも援護してるじゃないですか!」

「いやぁ、ついな」

「ズルいです! 私も時々援護してるんですから、援護返してくださいよ!」

「えー、お前たまに裏切るじゃん」

「ぐぬぬ……」


 確かにリアもたまに俺を援護してくれるが、ゲームとなるとこいつはたまに堂々と裏切りをする。

 裏切りをするということは、その借りを返されても文句が言えないという事だ。

 ヤンデレだからと言って容赦はしないさ。

 ちなみに試合は何故かライトベルの一人負けになった。


「……手札が事故った」

「まぁ、そういうこともあるさ」


 だが、遠慮なくおかず権は貰っていく。

 いつぞやの目玉焼きの件、忘れちゃいないからな。




 試合が終わってひと息つく。

 観戦に回っていたスランが、ライトベルから熱心にルールを教えて貰っている。

 まぁ、奴隷の身分だとこういう娯楽にまで教えられないだろうなぁ。

 スランは言葉こそ拙いが、頭はどうやら結構良いらしい。

 一回ちゃんと色々知識詰め込んでみようかなぁ。


「そういえば、お名前何というんですか?」

「あぁ、そうだ。何となく流れで乗せてしまったから名前聞きそびれてたな」

「はい、地元ではマイと呼ばれていました」

「へぇ、可愛い名前ですね」

「俺がユーハで、こっちがリア。そこにいるのがスランで、あっちがライトベルだ」

「ナフィまでの間ですが、よろしくお願いします」


 滑舌が普通だ。

 さっきまでは緊張してたのだろうか。

 人見知りなんだろうな。その心の壁を取り除くマテリアルはやっぱり偉大だ。


《何というか、素朴な子ですね》

(そうだな。だが、女の1人旅とは感心しないなぁ)


 エルフの里からナフィへの道のりは、客車だと朝出れば夕方にはなんとか到着できる。

 しかし、徒歩だとそうはいかない。

 途中に宿はないので野宿しなければならないのだ。

 エルフの森はモンスターがかなり駆除されている。

 とはいえ全くいないかと言えばそうでもない。現にワイルドベアーも出て来た。


 野宿するという事は寝るということだ。

 客車なら昼でも夜でも好きな時間に眠れるし、他の仲間がいれば交代で眠れる。

 様々な面で安全性がまるで違う。


《いざとなれば粉塵を使ってもらえますしね!》

(粉塵?)

《いえ、何でもないです》


 特に彼女は弓使いだ。

 ソロで旅をするには少々辛いだろう。


 だが、説教をするつもりはない。

 恐らく、彼女には彼女なりの理由があるのだろう。

 俺は別にマイのお母さんではないしな。




 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~





「何から何まで、お世話になりました」

「お元気でー」

「今度はいいパーティーを組んで旅に出ろよー」


 俺達は順調にナフィに到着した。

 彼女を町の入口でおろし、宿へ向かう。

 ロントとエレフトラは元気にしてるだろうか。

 そしてスランはロントに襲いかからないだろうか。多分もう大分毒は抜けたと思うんだけどなぁ。





 宿に向かう途中、ロントを見かけた。

 方角的に、武器屋からの帰りだろうか。


「ロントー!」


 遠くから大きな声を出して呼ぶ。

 ……ダメだ聞こえてねぇ。

 ブラウン君に近寄るように指示を出す。


「ロント、おい!」

「へ? あぁ、ユーハか。帰ってきたのか?」

「おう。乗るか?」

「乗る」


 ブラウン君の速度を落とし、ロントを引き上げる。

 スランが飛びつこうとしていたが、リアに抑えられていた。

 傷口が開いたらどうするんだ。


「で、どうだった? エルフの里での犯人探しは」

「……全くダメ」

「里の長は違ったらしいんだよな。俺とライトベルで確認したから間違いない」

「そうか」


 里の実力者とやらもたかが知れてたしなぁ。

 里の裏切り者で、強い奴が抜け出ていたりしてな。

 何か優秀な血が流れてて、血継限界がどうとか。


「そうか、まぁ仕方ないさ……っと」

「ヒメ! ヒメ!」


 スランがロントに向かってそっと抱きついた。

 ロントの困惑の表情が面白い。

 何故ヒメなんだ? っていう。

 しばらくこのまま放置してみよう。




 宿に到着すると、すぐさまリアが受付で手続きをしていた。

 多分宿には伝えてあったので、今日は泊まれるだろう。


「……ユハ」

「あー」


 そうだ。すっかり忘れてた。

 こいつを持って行かなくちゃいけないんだ。

 リアもやらないとなぁ。

 ちなみに、スランは自重してロントにお姫さま抱っこをさせたりはしなかった。

 怪我人にそういう事はさせちゃいけないよな。うん。


「あっそうだ」

「……どうしたの?」

「お前、要は3階まで行ければいいんだよな?」

「……うん」

「じゃあ、俺が全力の精霊魔法でお前を窓へ投げ入れればいいんじゃないか?」

「……やめて」

「いや、やってみよう。うん。物は試しだしな!」


 ライトベルを抱えて外へ飛びだす。

 おぉ、いい感じに3階の廊下の窓が開いている。

 あそこに投げ込んでしまえばいいんだな。うん。


「よーし、行くぞー! さーん! にー!」

「いやぁぁああっ!」


 体が鉛のように重くなった。

 ライトベルの呪術だろうか。

 これでは投げ込めない。


「これ、お前の魔法?」

「……うん」

「冗談だったのに」

「……もう」


 体が元に戻った。

 仕方ないので階段でライトベルを運ぶ。


「それにしても、ちょっと可愛かったぞ」

「……何が」

「お前の悲鳴」


 ポコッと軽く殴られた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ