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第14話 翡翠の肌に宿る封印の紋を、もっと深く

 ヴァルの剣の刻紋を完全に読み、第三段階に覚醒した翌日。


 ティアの封印を少しでも詳しく読むため、改めて鑑定を行うことにした。


「ティア。封印の紋は全身に分布している。顔や手だけでなく、身体全体を確認する必要がある」


「はい。わかっています」


 ティアはあっさりと頷いた。天然なのか覚悟なのか判別がつかない。


「どこまで見れば充分ですか」


「肩から腰までのラインに封印紋が集中しているはずだ。上半身を確認できれば——」


「わかりました」


 ティアがローブの前を開き、肩から滑り落とした。


 薄い肌着一枚の上半身が露わになった。


 小柄な体躯。華奢な肩。白磁のような肌。——そして、その体格からは想像しにくいほどに豊かな胸が、薄い肌着の下で柔らかく揺れていた。ローブが隠していた曲線は、ヴァルとは異なる種類の豊かさだった。ヴァルが鍛え上げた身体の上に乗る力強い豊満さだとすれば、ティアのそれは、華奢な枝にたわわに実った果実のようだった。


「ティア——肌着も、脱いだ方がいいか」


「封印紋は肌の内側にあるんですよね。布越しでも読めますか」


「読めるが、精度が落ちる」


「じゃあ——」


 ティアが肌着の裾を掴んだ。躊躇なく引き上げようとして——途中で手が止まった。頬に赤みが差している。天然に見えて、やはり恥じらいはあるのだ。


「あの——ゼクさん。わたし、こういうの初めてで。その。男の人に肌を見せるの」


「俺も——こういう鑑定は初めてだ」


「お互い初めてなんですね」


「……語弊がある言い方だが、そうだ」


 ティアが、えいっと声を出して肌着を脱いだ。


 腕で胸を隠す。だが小柄な腕では到底隠しきれない。腕の上下から白い肌と、柔らかな膨らみの曲線がはみ出している。


 そして——ティアの上半身に、蒼白い封印の紋が浮かんでいた。


 肩から鎖骨を通り、胸の間を蛇行し、腹部に至る複雑な紋様。美しくすらあった。ティアの白い肌の上で、蒼い光の線が静かに脈動している。


「触れるぞ」


「はい——」


 指先をティアの鎖骨に当てた。琥珀色の光が灯り、蒼い封印紋と接触する。情報が流れ込む。


 指を封印紋に沿って滑らせていく。鎖骨から胸の上部へ。紋は胸の膨らみの上を通り、中央——谷間の直上を通過して反対側へ渡っている。


「ゼクさん——くすぐったい、です」


「動くな。紋のラインを途切れさせると読み直しになる」


「はい——でも——あっ」


 指が胸の上部の曲面に差しかかったとき、ティアの身体がびくりと震えた。


「ここの紋が特に密度が高い。封印の要——核に近い部分だ」


「そこ——感じます。紋が、熱くなるんです。ゼクさんの指が触れると」


 ティアの肌が、かすかに上気していた。蒼い紋の周囲の皮膚が薄紅色に染まっている。封印紋は感覚神経と接続しているらしい。触れられると反応する。


「もう少しだ。腹部まで確認させてくれ」


「はい——」


 指が胸の曲面を離れ、肋骨の下を辿り、腹部に至る。くびれたウエストの上で、封印紋が渦を巻いている。


「ここが第二の核か。——ティア、封印は三層構造で、各層に核がある。今確認できたのは第一層の核が二つ。胸部と腹部。第二層と第三層の核は、もっと深い場所にある」


「もっと深い——?」


「今日はここまでだ。これ以上は俺のスキルの出力が足りない」


 ティアがほっとしたような、少し残念そうな複雑な顔をした。


「ゼクさん」


「何だ」


「あの——ゼクさんの指が触れると、封印が少し楽になるんです。普段は重くて、身体が冷たくて。でも琥珀色の光に触れると——温かくなって」


 ティアが肌着を着直しながら、恥ずかしそうに笑った。


「また——やってもらえますか」


「……ああ。必要なら何度でも」


 ヴァルが廊下から「長いぞ」と声をかけてきた。


 ティアが慌ててローブを被った。

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