お茶会の後7
ここで確認すべきことはマークの仕事内容についてでございます。
マークは従僕です。それなのに、マークの行っていたことは毒味です。
毒味の仕事は端から危険を承知してもらってからする契約でございます。そして本人だけでは無く、使用人の紹介者や仲介者にも納得して頂いてから契約するのです。
従僕の契約とは内容も給金も訳が違います。
さらにマークは、いえ、マークだけでなく、ギルシュ侯爵家に仕える者には貴族籍の者が多くおります。
マークもその一人です。ユルガン男爵家から預かっております。
夫は、夫がこれを存じていないわけがないのでございます!
「あなたはマークに毒味をさせていらっしゃったのでございますか?」
自分でも冷たいとわかる声音です。
「…。」
わたくしの問いに答えず、ただただグラスを見る夫に苛立ちが募ります。
「奥様…それは…」
執事が割って入り、何か説明をしてくれようとしますが
わたくしはそれを手で制し、重ねて夫に尋ねました。
「預かっている自覚がお有りですか?」
「すまない。」
夫の短い謝罪に、一つため息をつきます。夫から見た状況を聞こうとすると、再び、執事が割り入って、深く頭を下げました。
「申し訳ありません。私の指示でございます。」
「どういうことです?」
わたくしは視線を執事に向けます。
一月半ほど前から、王宮での夫の周りに、不穏な空気が漂っていたそうでございます。
それは普段は屋敷の事を取り仕切る執事にも届くほどで、従僕として王宮に行く夫に追従していたマークは緊張を余儀なくされるような状態だったとのことです。
執事は対策として、毒味を雇い仕事場に同行させるよう夫に進言したそうですが、聞き入れてもらえず、苦肉の策としてマークに指示を出したそうです。
そして、夫はマークが毒味をしていることを知らなかったそうでございます。
何故、執事はそんな勝手をしたのでしょうか。執事も毒味の仕事について、よく理解しているはずです。
それを聞いて執事は、申し訳ございません、と繰り返すのみで、その心の内は教えてくれませんでした。
勝手をするなら毒味を雇う勝手をして欲しかったものです。
しかし、いくらそれを言っても、後の祭りでございます。
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