↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/30

29話

 浩一が心の底でそう言ってから瞬きを一度だけした。その刹那、浩一の元へ砲弾が突っ込んできた。その弾丸は浩一の左肩へと突き刺さるように直撃する。

「グワァアアアアアァアアアアアアアアアア!!」

 それは瞳に斬られた時の傷とはまるで違った。鋭くて、裂けて血が出る痛みではない。重く、砕けて、骨がバラバラになるような痛み。浩一は自らが受け止めた弾丸を右手に持った刀で叩きつけ、無理矢理左に弾き飛ばした。刀が折れる心配など一切せず、遮二無二振るった刀は砲弾を弾いても折れることは免れ、弾かれた砲弾はその重さでそのまま地面に突き刺さるように落ちる。

「グッ……う、ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

左肩の上腕骨と肩関節の骨が砕け全く力が入らなくなっていた。ダラリと落ちた左腕の痛みに眩暈がしそうになりながらも、浩一は直進することをやめなかった。一方のカインは砲弾を撃ち込んだショックで2発目を撃つことは出来ない。

「もらったぁああああああああ!!」

 と、浩一が言い残りカインまで残り5mという距離まで近づいた時だった。カインは今まで咆哮するのみに使っていた歯の無い口を顎関節が外れそうな大きく口を開く。するとその中には巨大な壺の様な大砲が存在していた。

「嘘、だろ!?」

 いつしか両肩のマガジンが急速回転を始めていた。それはまるでエネルギーを生み出すプロペラのように回転し続け、その回転が速くなればなるほどに口の中の大砲は紅い火花を生み出していた。

「ヌワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 浩一は右腕に力を込めて自らの刀を犬のカインの口の中、壺の様な大砲を貫くように突き刺す。空虚な口の中に突き刺した感覚は当初は泥のようだったが、少し刺した瞬間にはズプリという音とともにプリンにスプーンを初めて入れたような感触を味わう。その感触は浩一にとって不快そのものだった。

「うっ……グッ」

 触感による不快感と自分が相手を殺しているという思いの嫌悪感とが混ざり合い、嘔吐感となって浩一に襲ってきた。口の中に酸っぱいモノが上がってくるも、無理矢理浩一はソレを飲み込んでから、刀の柄尻に腹を当てて更に力を込めて押しこむ。それだけでなく、刀に纏っている包帯を操るとカインの両肩のマガジンへと向かわせる。高速回転するマガジンを包帯で絡め、犬のカインのエネルギーを精製するのを食い止めようとするものである。だが浩一の刀の包帯の動きはまるで亀のように遅い動きであるため、眼にも止まらないルーレットの様な高速回転をしているマガジンの前には簡単に弾かれ、千切れてしまう。

「止まれェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!」

 浩一は自分の眼の前で発熱し続ける壺の様な大砲に焦りを覚えながら最後の力を振り絞ると、カインの口に突き刺していた刀を下に移動させ、下顎の部分を左右に斬り裂く。その時だった。充填された力が下顎から溢れると。その力は下顎の亀裂部分から爆発を始めた。

「なっ……!?」

「イヤァアアアァァァァアァアアアアアアアアアアアアア!!」

 犬のカインの顔面にある大量の皮の無い人間達が絶叫した。その声が浩一に届いた瞬間、カインに集まっていたエネルギーは暴発したかのように自らの身体へと跳び散り始めた。そして、犬のカインの両肩にある銃口にカインのエネルギーが触れた。その時だった。大きなエネルギーは銃口内の巨大な残りの火薬に引火する。


それは、あまりにも巨大な爆発となった。

 

残った火薬の力は一瞬にして中華飯店の一階を爆発させた。その爆発は、一瞬で一階の内装を溶かしていくほどのものだった。


「なっ、なんじゃ!?」

「……グッ」

 中華飯店の屋上にいたアルドと混沌は自分達の居る足元で地響きが起こったことを知った。2人は咄嗟に地面に這う形になり、屋上に張り付く。

「混沌!」

「チッ!」

 アルドと混沌は互いの手を繋ぐ。互いに散り散りとなるのを防ぐとともに、最悪の場合に備えるためだ。

「一時休戦じゃ。状況を判断できるまでは戦うつもりはないからのう! 殺し合いならばその後じゃ!!」

「クッ……」

 反論をしようとしたが、混沌は未だに傷を完全に回復しきれてはいなかった。不本意ではあったが、アルドの申し出は混沌にとっては幸運そのものだった。


「状況は悪い、分からないから悪い」

「そのようですね」

 中華飯店から離れた裏路地で戦っていた剣弐と梁崙の戦闘は一進一退し、互いに決定打を打てないでいた。そんな中、突如起きた爆発に2人は驚きを隠せないでいた。

「ここは……戦いは終わりですね」

「それが良い。無駄をするのは悪い」

 そう言うと互いに「解」と言い、血鬼斬を元の形に戻す。すると梁崙は頬の傷に剣弐は腕の傷に、それぞれ血鬼斬の刃を当てると、血鬼斬は形を無くしていくと共に刃を当てた部位の傷は塞がっていった。

「私はあそこに戻ります。……貴方は?」

「行っても何も出来ず悪い、戻り報告するのが良い」

「そうですか……。敵同士ではありますが、貴方とはまた会いたいものです。……失礼します」

 そう言うと梁崙は剣弐に一礼すると一目散に中華飯店へと走り出した。残った剣弐は髪に付けたヘアピンをいじり、そして梁崙とは逆の方向へ走りだした。


「うっ……うう」

 瞳が眼を覚ました時、周りは焼けただれ壁も、内装も、周りの椅子やテーブルも焼けていた。瞳は背中の傷に痛みを感じながら、それでも立ち上がった。ふと、前方を見てみると、そこには見知った少年の歪んだ顔があった。

「麻生君!? ……解!」

 瞳は傍らに置いてあった剣をナイフの形に戻すと自らの背中に刃を当てる。気休め程度に傷を塞ぐと浩一に駆け寄った。

「川、島……」

「貴方、これ……」

 浩一はカインの爆発の寸前。咄嗟にカインに背中を向けると同時に、可能な限り刀の包帯を左右に伸ばし、爆発を自らの身体と包帯で受け止めた。だが、左右の護りを固めたために浩一は自分自身を護ることは出来ず、背中で爆風を直接浴びてしまった。

「無事、か?」

 浩一は瞳の無事を確認した途端、刀の包帯を解き、前のめりに倒れ込んだ。瞳は倒れ込んだ浩一の背中を見てみる。すると肌が真っ黒く焦げており細胞が壊死していた。火傷の中でも最も重い症状である。瞳は中腰になると自分の膝に浩一の頭を乗せた。

「麻生君っ!? どうしたの、一体何が……?」

 瞳に気付いた浩一はそこで力が抜けたのか、瞳によりかかった。瞳は浩一を抱きかかえると、その場に座り込み浩一の頭を膝に乗せる。

「……何、泣いているんだよ」

 浩一はジャック、そしてカインとの連戦でボロボロであり全身傷まみれだった。その少年は自分よりも遥かに強い少女が流す涙を指で掬う。その行為に、始めて瞳は自分が泣いていることに気がついた。

「何で……私泣いているの?」

「御前、意外と泣き虫だったんだな」

 おどけて見せた浩一は横になったまま手を伸ばし、瞳の頭を撫でる。ギリギリの距離であるため、どちらかと言うと額の辺りを撫でる事になったが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。