13 布津の神移し#3
「超攻撃型曳手陣形」
新しいチカラを最大限に利用した陣形。
いや新しいチカラだから可能な陣形とも言える。
俺が遊軍として働いたとしても、移動するのは徒歩となる。
それでは移動にどうしても時間がかかる。
そして移動そのものも攻撃の意識の邪魔となる。
神輿の上に乗る事で移動というものを捨てた。
これで攻撃に意識を集中できる。
ヒコ 「ヤエ様!そろそろ先頭にも篝火が届きます!」
【ケのチカラ】
任意の物を遠くに飛ばすチカラ。
そして、纏向に作ってもらった手槍。
これを合わせて「超遠距離速射砲」と昇華させた。
先頭の剣を持ったノロヰを探す。
3人がかりで相手をしているアレか。
ノロヰはデカい。守り人より頭が一つ抜けている。そこを正確射撃を行う。
フレンドリーファイア(誤射)の可能性は低い。
【カムナのチカ】
この能力を目標を視認さえできれば射撃可能。
目標物に向かって浅く斜に構え腰を落とす。
手槍を見て能力を移す。
ノロヰに向かって左手を当てる。スコープの代わりだ。
手槍を持った右手を引く。
能力が伝わった手槍はほぼ空中に浮いている状態だ。
ノロヰを動きを予測し照準を合わせる。
距離は25m前後か。
視認完了
【ケン!!!!】
槍投げのように投げた手槍はチカラを纏い、目標物に引き寄せらるかのように直線軌道を描く。
神輿の上から投げられた手槍は守り人の頭を超えノロヰに向かう。
空気抵抗や重力は関係ない。
「バァススススッーーーーー!」
よし!ノロヰの頭にクリーンヒットした!
ノロヰはそのまま崩れ落ちて逝った。
使える!
ぶっつけ本番、ミスの可能性も大きかったが何とかなった。
「ヤエ殿!」
神輿の下から声が聞こえた。シコオさんだ。
頭に布をぐるぐるに巻いている。
シコオ 「大事ありません。後はお任せください!」
替えがいないから任せるしかない。
これでノロヰが消えはしないし、発生量も変わらないがこれ以上発生量が増える事は無いだろう。
纏向まで残り1/3程度。
守り人もかなり疲弊してきている。
ギリギリか・・・・
根性論になるが俺が頑張るしかない。
前後に発生した剣持ノロヰを中心に射撃する。
【カムナのチカ】
剣持ノロヰは幸いにも少数しか発生していない状態だ。
【ケン!!】
「バァススススッーーーーー!」
当たったが微妙にずれた。
俺 「ヒコ!もっと篝火を炊け!もっと人を使うてもかまわん!」
ヒコ 「はい!」
暗いと照準がずれる。
弾数を無駄にはできない。
修練の結果、射撃精度と威力を保持したまま可能な射撃数は結局50回だった。
追加の修練もあり、これが俺の限界値である。
手槍はその数に合わせている。
俺 「先手よーーー!足を速めよ!」
先手 「おーーーー!」
予断を許さない状況でできる事はできる限り石上に到着する事。
多少の無理は承知の上だ。
【カムナのチカ】
【ケン!!】
先頭のノロヰと優先的に片づける。先頭が止まってしまっては全体の行軍スピードに直結する。
【カムナのチカ】
【ケン!!】
剣持ノロヰが現れたら即時に対応する。
【カムナのチカ】
【ケン!!】
劣勢に追い込まれているエリアへも集中砲火する。
一気に15発は使ったか・・・・正直、予想以上の消費の仕方だ。
残弾を気にせず、使い切ってしまい俺も白兵戦に戻るか・・・・
それでは全体の指揮ができなくなる・・・・
「ヤエーーーーー!」
このデカい声はオオミナだ。
オオミナは今回運手に入ってもらっている。
俺 「何や!!お前と遊んでる暇はない!!」
オオミナ 「ワシを先頭に行かせろ!!」
俺 「おヌシは運手や!そこでおれ!」
オオミナ 「知らん!おヌシばかりが気張っておる!!ワシにもええかっこをさせぇ!!」
俺「あほか!!」
オオミナ 「先頭にはワシが行く!!おヌシは剣持ノロヰだけを見よ!!」
俺 「それでは運手が滞る!!」
オオミナ 「知らん!!ええから先頭はワシに任せよ!!これではおヌシが持たぬ!!」
俺 「ぐっ・・・・」
痛い所を付かれた。
オオミナ 「おヌシは剣持ノロヰだけを見よ!!ええか!!」
俺 「他はどうすんねん!!」
オオミナ 「信じろ!!ワシを、皆を信じろ!!」
俺 「・・・・・・」
信じて作戦が上手くいくなら俺はこんなに苦労はしていない。
長たる俺に責任がある。皆を無事帰らせる責務がある。
が無理が生じてきているのも事実だ。
確かにこのまま俺一人で何とかするというのは傲慢、過信かもしれない。
でも本当に大丈夫か?もし任せて死人が出たらどうする?
信じてみるか・・・・俺は長であるが故、作戦立案は実際の戦力の1割減で考えていた。
それが癖づいているのかもしれない。
そもそも、俺の戦力分析が正解だと言う保証もない。
信じてみる・・・・
分からん。
俺に信じろという意志の強さにベット(賭ける)してみるか・・・・
トップのプロアスリートも最後はメンタルだというしな・・・・
俺 「ビビりのおヌシにできるのか?」
オオミナ 「できる!!」
俺 「よし!任せた!」
オオミナは深くうなずいた後、神輿から離れ駆けだしていく。
が、駆け出しして後しばらくすると立ち止まった。
何か問題でも起こっただろうか?
立ち止まったオオミナがボリュームの制限を解除し叫び始めた。
「先手の者よーーーーーー!!!!」
先頭から後手まで聞こえるデシベルだ。
戦闘中で振り返りはしないが皆聞こえているはずだ。
「おヌシたちの力はこんなものかーーーーー!!!! ヤエに頼うてばかりで情けないのーーーー!!!!」
この場面で味方をディスり始めた。
「弱いおヌシたちを仕方がないから運手のワシが助けてやる!!!! これから先頭で引っ張ってやるから、おヌシらは付いてこい!!!!」
キーーーンっという音が聞こえる程の静寂が一瞬あった後、
「お前にだけは言われたない!!」
「お前が一番弱いんじゃ!!」
「偉そうに口出しすな!!」
「いらんわ戻れあほ!」
「あほか!うるさいわ!!」
「後でしばくぞ!」
凄まじい怒号が飛び交う。
新しい形のコールアンドレンポンス?
アホなオオミナはなぜか固まったままだ。
たぶん、次の言葉が思いつかないのだろう。
「何か言えーーー!!」
「固まるなーーーあほーー!!」
「はよ行けーーー!!帰れーーー!!」
怒号という炎上に油を注いでいる。
「はっ!」
オオミナはなぜか万遍の笑みを浮かべて走って行った。
「何やそれ!!」
「何もないんかい!!」
「おもんないぞ!!」
「どこ行くねん!!」
オオミナのお天然、ここに極まれり。
葉っぱを掛けるつもりが炎上を引き起こした。
が、モチベーションが上がったことは事実だろう。良い方向か悪い方向かは分からない。
俺 「皆の者----!!!! 後でオオミナをしばくぞーーーーー!!!!」
「うぉおおおおおおおおーーーーーーーーー!!!!」
火にガソリンをくべておいた。
石上まで残り1/3強。この勢いを利用して乗り切る。
【カムナのチカ】
【ケン!!】
皆を信じ、俺は剣持ノロヰに集中する。
先頭からオオミナの大声が聞こえる。
信じよう。
その頃、石上では俺達を待つイズシのおっちゃんがいた。
シキ 「どうされました?」
イズシ 「待つのは不得手や。」
シキ 「誰でもですよ。」
イズシ 「そんなもんか。」
シキ 「ヤエの事を案じておるのですか?」
イズシ 「う~ん。オオミナの方やな。アレはヤエが無理をし出したら付き合う癖がある。一人だけ無理をさせるのが嫌なんやろな。しまいはオオミナが怪我をすることが多い。アレは走りだしたら自らで止めるという事をしらんからな。」
シキ 「オオミナはもう大人ですよ。」
イズシ 「人はそうは変わらんぞ~。」
シキの兄ちゃんに聞いたが、そんな会話を二人でしていたらしい。
「うぉおおおおおおおおーーーーーーーーー!!!!」
絶賛、彼はブレーキを踏まずにアクセルをベタ踏みしている。
ヒコからの知らせでは、また顔面血だるまになっているらしい・・・・
返り血か自分の血か分からんが安全安定の暴走中だ。
現在、石上まで1/4に差し掛かろうとしている。
少々、問題が発生している。俺の【ケのチカラ】の残弾が20本となっている。
本当のギリギリ足りるかという所か。
オオミナや曳手たちの勢いもいつまで持つか分からないが、皆を信じてこのまま勢いで押し切ってしまうか・・・・
この御魂移しの戦略上の分岐点だ。
将として正しい判断をしなければならない。
「ヤエ殿!」
後手のオオヒコさんだった。
「廻しますぞ。」
つづく。




