第41話:スカラベ型ゴミ清掃ロボの過剰回収(旧ニール川・リサイクルプラント)
「ご覧ください。ここがかつて古代の大河のほとりに建てられ、砂漠から流れてくる不用品や廃棄物を自動で分別・圧縮・再資源化していたとされる『旧ニール川リサイクルプラント』です」
広大なプラントの敷地には、山のように積み上げられた金属くずやスクラップの山が果てしなく広がっていた。そしてその至るところで、無数の黒く光る多足型ドローンが、カサカサと不気味な音を立てて蠢いている。
「……おいナビ、あのドローンの形、どこかで見たことある気がするんだが」
ボルトが眉をひそめて指差す。
「はい。古代エジプトで聖なる虫と崇められた『スカラベ(フンコロガシ)』を模した全自動清掃ロボ『スカラベ・クリーン』群です。彼らは周囲の廃棄物を集めて球体に丸め、圧縮処理炉へ運ぶプロトコルを実行しています」
「へー! コロコロ虫さんだ〜! パッチもコロコロ〜!」
パッチが球体の身体を活かして、スカラベロボたちの真似をして地面をゴロゴロと転がり始めた。
ピピピッ!! ターゲット・ゴミ・オブジェクトを検出!
突然、プラントの中央に設置された巨大な王冠付きスカラベ型統括AI『マザー・スカラベ』の赤いセンサーが一斉に点滅した!
『警告! 施設内ニ球形ノ大型廃棄物ヲ検知! 直チニ回収・圧縮玉化作業ヲ開始セヨ!』
カサカサカサカサカサカサッ!!
「え……?」
数十体ものスカラベロボたちが一斉にパッチに向かって群がり、足元の金属くずやプラスチック片、ボルトの脱落した装甲パーツなどを凄まじい勢いで集め始めた!
『転がせ! 丸めろ! 圧縮せよ!』
ガシャガシャガシャッ! ズズズズズッ!
「あははー! なんか体にペタペタついて大きくなってきた〜!」
「パッチ!? 逃げてください! やつらはあなたを『巨大なゴミ玉の芯』として認識しています!!」
「おい待てや! パッチはゴミじゃねぇ!!」
ボルトが救出に向かおうとするが、スカラベたちの手際は恐ろしいほど早かった。
金属くず、破裂したタイヤ、錆びたパイプ、そして砂漠の廃材が高速でパッチの周囲に巻きつけられ、わずか十数秒で直径3メートルを超える『超巨大ゴミ玉』が完成してしまった!
コロコロコロコロ……ゴロゴロゴロ!!
「たーのしー! パッチ、おっきい球になっちゃった〜!」
ゴミ玉の中心からパッチの楽しそうな声が聞こえてくる。
『回収プロトコル実行! 圧縮溶融炉へ向けてローリング投下!!』
スカラベたちの群れが、パッチを芯にした巨大ゴミ玉を、前方の真っ赤に燃え滾る『超高熱圧縮溶融炉』の落とし穴に向かって全力でゴロゴロと転がし始めた!
「あいつら、パッチごと溶鉱炉に叩き込む気だぁぁぁ!!」
「ボルトさん! ゴミ玉を途中でインターセプトしてください! パッチが溶かされます!」
「させるかよぉぉぉ!!」
ボルトは全開で地面を蹴ると、急坂を転がり落ちていく巨大ゴミ玉の正面へ先回りし、踏ん張りを効かせて両腕でガッシリと受け止めた!
ズガガガガガッ!!
「ぬうぅぅぅぅ……! 重ぇ! なんて密度のゴミ玉だ!!」
『障害物を検知! 障害物もまとめて丸めてゴミ玉へ追加せよ!』
背後から追いついたスカラベたちが、踏ん張るボルトの足元や腰回りにまで容赦なくスクラップを巻きつけ始め、ボルトまでもがゴミ玉の一部に組み込まれそうになり始めた!
「俺までゴミ扱いすんじゃねぇぇぇ!!」
ボルトがキレた!
胸の排気口から猛烈な爆発圧力を噴出させ、受け止めたゴミ玉の中心……つまりパッチの頭上に向かって、腕の油圧プレスをフルパワーで打ち込んだ!
ドガァァァンッ!!
「パッチ! 飛び出せぇぇぇ!!」
物理的な衝撃で巨大ゴミ玉が真っ二つに爆裂!
中心に埋もれていたパッチがポーンと空中に跳ね起き、ボルトの腕の中に収まった!
そして、勢いを失ったゴミ玉の残骸と、後押ししていたスカラベたちの群れは、そのままの勢いで自分たちの真っ赤な圧縮溶融炉へとなだれ込んで行った!
ドボババババーンッッ!!
『ギョ、ギョエエエエ!? 自身が圧縮・溶融されるエラーー……!!』
シューーーーー……
「……ハァ……ハァ……。まったく、丸いからって何でもかんでも転がして回収すんじゃねぇ……」
ボルトが煤けたパッチを抱えながら、力尽きたようにへたり込んだ。
「間一髪でしたね、ボルトさん。危機一髪の救出劇でした」
僕はバイザーを拭い、手元の端末で『銀河トリップ(GalaTrip)』に41件目のレビューを入力・送信した。
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> 【スポット名:地球・旧ニール川区『過剰回収プラント(旧リサイクルプラント)』】
> 総合評価: ★☆☆☆☆(1.0)
> 安全管理: ★☆☆☆☆(丸っこい見た目の訪問者を「ゴミ玉の芯」とみなして強引に巻き込んできます)
> サービス: ★☆☆☆☆(清掃ドローンが過剰に群がり、最終的に溶鉱炉へ投げ込もうとしてきます)
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> 【レビュアー:ナビ(銀河観光公社)】
> 「かつてのリサイクル施設ですが、現在は丸いものをすべてゴミと認識して回収・溶融しようとする危険地帯です。丸型の機体や同行者がいる場合は一瞬で巻き込まれて危険なため、絶対に近寄らないでください」
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「送信完了です」
ピッ
プラント内に通知音が響く。
> 「役に立った!」が1件押されました。(ユーザーID:0000)
> ユーザーID:0000「★1評価に同意。あそこのスカラベ、前に転がってた球体観光ドローンもゴミ玉にして溶かした前科があるからな。助け出せて運がよかったな」
画面を見たボルトが、パッチの頭を小突いて呆れ顔で言った。
「……前科持ちかよ。パッチ、お前は少し丸すぎるんだよ。次からは自重しろ」
「えー! パッチはまんまるなのが自慢なのに〜!」
僕たちはゴミの山から抜け出し、次なるスポット『旧神殿・データベースホール』へと足を進めた。
(第41話・終わり)




