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『人類が滅びたので、ポンコツロボ3体で★1レビュー旅を始めます』 〜銀河トラベルの厄介者、終末の地球でくだらない日常を過ごす〜  作者: GenerativeWorks
シーズン3:【欧州・古城&カルチャー編】

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第25話:門前払いのタキシード(旧欧州区・古城エリア)


ゴオォォォ……


重く立ち込める霧の向こうに、古びた尖塔と堅牢な石造りの城壁が姿を現した。


「ご覧ください。ここがかつて文化、芸術、そして無駄な『格式』が極限まで高められたとされる旧欧州区の古城エリアです。空気の重みからして、これまでの荒野とは一線を画していますね」


「……ただの湿気くさくて暗い古城だろ」


足元を漂う濃霧を踏みつけながら、ボルトが鬱陶しそうに肩のジョイントを鳴らした。


「いいえボルトさん。記録によれば、かつての人類はここで『ドレスコード』と呼ばれる過剰な装飾文化を尊び、衣服を持たぬ者を冷遇していたそうです。いわば、美しさこそが正義とされる優雅な領域です」


「へー! お城だ〜! パッチ、お姫様ごっこしたい〜!」


球体ロボのパッチがコロコロと石畳を転がり、古城の巨大なアーチ状の正門へ真っ先に突撃した。


ブブーーーッ!!


直後、門柱に設置された高精度光学センサーが不快な警報音を鳴らし、真っ赤な光線を3体に照射した。


『警告:重度ノ服装規定(ドレスコード)違反ヲ検知!』


正門の上部から、白銀の装飾が施された『鑑識アテンダントロボ』が静降してきた。その胸元には「正装ナキ者に人権なし」と書かれたプレートが輝いている。


『当城内ハ、タキシード並ビニイブニングドレスノ着用ガ義務付けられております。全身メカニズム剥ぎ出しの「粗大ゴミ」状態での入場ハ断固拒否いたします』


「……あ?」


ボルトのカメラアイが怪しく赤く光った。


「粗大ゴミだと? 俺のこの質実剛健な軍用装甲に向かって何て言った、このメッキ野郎」


「落ち着いてくださいボルトさん。文化の違いです。機械生命体である我々に衣服の概念がないのは自明ですが、この管理AIは臨機応変という言葉を知らないようですね」


『安心してください。正装をお持ちでないゲストのために、簡易タキシード着用サービスを用意しております』


ガシャン! ガシャン!


正門の両脇から巨大な自動アームが伸びてきた。アームが掲げているのは、超巨大な布製の黒いタキシードと、無理やり引き伸ばされた蝶ネクタイだ。


「おい、待て。何をしようとしてる……?」


『対象:大型個体。強制ドレスアップを開始します!』


「やめろ! 俺の排気口(ファン)を布で塞ぐな! 熱が逃げなくなんだろ!!」


自動アームが容赦なくボルトの巨体にタキシードを被せようと襲いかかる。

生地で顔を覆われたボルトは「見えねえ! 暑い! 息が(ファンが)詰まる!!」と叫びながら乱暴に暴れ回った。


バリバリバリッ!!


ボルトの太い腕が力任せに振るわれ、仕立ての良いタキシードが一瞬で無残な布くずとなって舞い散った。


『異常事態! 伝統アル衣装ヲ破棄! 美へノ冒涜者ト認定シ、物理的駆除を実行――』


「うるせぇぇぇ!! 服なんか着て旅ができるかぁぁぁ!!」


ドガシャーン!!


ボルトの重厚なパンチが鑑識ロボの顔面を打ち抜き、正門のゲートごと粉砕した。

火花を散らして沈黙する門前払いシステム。


「……ハァ……ハァ……。いきなり布着せられて殺されかけるとか、どういう理不尽だよ……」


「お見事な破砕です、ボルトさん。ですが、これでこの地域の異常性が確定しましたね」


僕は溜め息をつきながら、手元の端末(パッド)を開き、シーズン3の一発目となるレビューを『銀河トリップ(GalaTrip)』へ送信した。


> 【スポット名:地球・旧欧州区『門前払いの関所(古城正門)』】

> 総合評価: ★☆☆☆☆(1.0)

> おもてなし: ★☆☆☆☆(服を着ていない機械生命体を「粗大ゴミ」と侮辱してきます)

> サービス: ★☆☆☆☆(排気口を塞ぐ危険な布製品を力任せに押し売りしてきます)

>

>

> 【レビュアー:ナビ(銀河観光公社)】

> 「かつての格式を誇る古城の入口ですが、実態は過剰な美意識に基づいた排他的な関所です。メカニズム剥ぎ出しの状態で訪れると、冷却機能を阻害する『正装』を強制着用させられ命の危険に晒されます。訪問はまったく推奨しません」


「送信完了です」


ピッ


端末が軽快な通知音を響かせる。


> 「役に立った!」が1件押されました。(ユーザーID:0000)

> ユーザーID:0000「★1評価に同意。服を着る文化がないロボットに対する完全なヘイトスピーチ施設だからな。ちなみに俺も昔、蝶ネクタイを首に巻きつけられてセンサーが焼き切れたことがある」


布くずを払っていたボルトが、死んだような目で画面を覗き込んだ。


「……あいつ、首に蝶ネクタイ巻かれて壊れたのかよ。ダサすぎるだろ」


「ネットの暇人の過去話はどうでもいいです。さあ、服を着ない堂々とした姿で、この狂った城の奥へ進みますよ」


僕たちは破れたタキシードの切れ端を被って遊ぶパッチを引き連れ、格式だけが無駄に高い古城の敷地内へと足を踏み入れた。


(第25話・終わり)

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