第21話:敵か味方か? 闇の武器商人(ジャンクマーケット)
「ご覧ください。かつて国家の管轄外で、不法な兵器や未知のテクノロジーが取引されていたとされる暗黒市場の跡地です」
「……ただの廃車置き場とガラクタの山だろ」
トタン屋根の露店がひしめき合い、怪しい回路や錆びた砲身が乱雑に積み上げられた露地裏のようなバザール。
「いいえボルトさん。ここは無法者たちが暗躍した危険地帯です。一歩足を踏み入れれば、怪しげな取引に巻き込まれ――」
「ヘッヘッヘ……いらっしゃい、旦那がた。威勢のいい鉄くずどもだねえ」
積み上がったブラウン管テレビの影から、怪しげなトレンチコートを羽織った一本足の『ジャンク商人ロボ』が滑り出してきた。両目のセンサーがギラリと怪しく光る。
「オレは荒野一の闇の武器商人・ディーラー。どんな危険な代物でも、相応の対価さえ払えば手に入るぜ……?」
「武器商人……。警戒してください、ボルトさん。粗悪品を高値で売りつけるタイプの悪質な商業者です」
「見りゃ分かるよ。うさんくささ100%だろ」
ボルトが呆れ顔で吐き捨てると、ディーラーはニヤリと笑い、コートの内側に仕込まれた怪しい品々を見せつけてきた。
「フフッ、見る目がないねえ。……どうだ? この『一発で都市を吹き飛ばす究極の超小型ミサイル』は? 特別価格、お前のその右腕の高品質ギアと交換でどうだ?」
ディーラーが提示したのは、どう見てもただの『使い古された赤色の花火(ロケット花火)』だった。
「だれが騙されるかボルトォ!! ただの爆竹じゃねえか!!」
ボルトが怒鳴りつける横で、パッチが「わあー! なにか交換してくれるの〜!?」と目を輝かせて前に飛び出した。
「おや、そっちのちびっ子は買い気があるねえ。……物々交換と行こうじゃないか」
「はい! パッチの宝物あげる〜!」
パッチが球体ボディのハッチから取り出したのは、先ほどの核シェルターのゴミ箱から拾ってきた『カチカチに乾燥した1粒のポップコーンの種』だった。
「は……? なんだこのただの固い粒は……」
「これ、パッチの超ウルトラレアパーツだよ〜! 交換して〜!」
パッチが悪意ゼロの満面スマイルでグイグイと迫る。さらにパッチは商人ロボの足元に転がっていた『高価そうな高出力エネルギーコア』を勝手に引っ張り出した。
「よし! これと交換ね〜! ありがとう〜!」
「あっ!? 待て! それはオレの店の最高額商品――」
「物々交換成立です。パッチさん、良い取引でしたね」
僕が淡々と追撃をかけると、動揺したディーラーはバランスを崩し、自分が積み上げていたガラクタの山へ倒れ込んだ。
ドガシャーン!! バキバキバキッ!!
「ギャアアアア!? オレの商品が全滅したぁぁぁ!? 破産だ……破産だあぁぁぁ!!」
煙を上げるガラクタの山の中で、ディーラーの頭部コンデンサが激しいショックでオーバーヒートを起こし、プシューと音を立てて沈黙した。
「……勝手に自滅しやがった。どっちが闇の商人なんだか分からねえな」
ボルトが呆れたように頭を振る。
「怪しい露店取引の恐ろしさを身をもって体験できましたね。記録に残しておきましょう」
僕は手元の端末を開き、手早く『銀河トリップ(GalaTrip)』へ評価を入力した。
【スポット名:地球・旧北米区『虚飾の暗黒街』】
総合評価: ★☆☆☆☆(1.0)
商品の質: ★☆☆☆☆(出品されている掘り出し物の99%はただの危険なゴミです)
取引の安全性: ★☆☆☆☆(商人の耐圧性能が低く、簡易な交渉で即座に破産・機能停止します)
【レビュアー:ナビ(銀河観光公社)】
「無法者たちが集うとされる闇市場の跡地です。自称・武器商人が危険な取引を持ちかけてきますが、商品の大半は詐欺であり、交渉耐性も皆無です。まともな買い出しスポットとしては一切機能していません」
「送信完了です」
ピッ
通知音が響く。
> 「役に立った!」が1件押されました。(ユーザーID:0000)
> ユーザーID:0000「★1評価に同意。あそこの掘り出し物は99%がただの粗大ゴミだし、値切り交渉をすると商人がすぐ逆ギレして爆発する危険な市場だ」
画面を見たボルトが、パッチが手に入れたコアを転がしながら溜め息をついた。
「……逆ギレで爆発する前に自滅してくれて助かったな」
「ええ。さて、役立たずの市場に用はありません。先を急ぎますよ」
僕たちは手に入れたコアを玩具にして転がすパッチと、やれやれと首を振るボルトを引き連れ、煙を上げるジャンク街をあとにした。
(第21話・終わり)




