第17話:未確認飛行物体との遭遇(エリア51風秘密基地)
「……信じられません。かつて人類は、我々宇宙からの訪問者を不当に拉致し、この人里離れた秘密基地(エリア51)で怪しげな実験に供していたというのですか……!」
「……ただの怪しい観光地の跡地だろ」
荒野のただ中にひっそりと佇む、巨大なドーム型の研究施設跡。厳重な警告看板とサビついた有刺鉄線が周囲を囲んでいる。
「いいえボルトさん! 見てください、この奥にある研究室の標本を!」
ナビが指し示したガラスケースの中。そこには、大きな頭部と黒い目を持つ、いわゆる「宇宙人(グレイ型)」の個体が緑色の液体に浸されていた。
「おお、同胞よ……! なんという痛ましい姿……! 我々銀河観光公社はこの非道な人道違反(宇宙道違反)行為を断固として非難――」
「おいナビ、落ち着いてよく見ろ」
ボルトが呆れ顔でガラスケースを拳で『コンコン』と叩いた。
ポコン、ポコン。
軽やかなプラスチック音が室内に虚しく響く。
「……ん?」
「これ、ただのハリボテのゴム人形だぞ。中に入ってんのも緑色に着色されたただの水だ」
「な……なんですって……!?」
ナビがバイザーを極限まで発光させ、端末で詳細な分子スキャンを実行する。
ピピピ……【成分:PVC(ポリ塩化ビニル)・食用着色料緑1号】
「バ、バカな……! 人類は我々異星生命体の恐怖を煽り、このような陳腐な工作物で集客を行っていたというのですか!? 同胞への侮辱どころか、単なる悪質な景品表示法違反です!」
「わあー! この宇宙人さん、お腹押すとペコペコ鳴るよ〜!」
パッチがガラスケースの底から落ちていた同型のミニ人形を拾い上げ、悪気なくパコパコと押し潰して遊んでいる。
「……もう言いたいことが多すぎて頭が痛くなってきた。おいナビ、こんなくだらねえハリボテ基地、さっさと★1打ってズラかるぞ」
「言われなくても打ちます! 我々宇宙からの旅人を愚弄した罪は重いです!」
ナビは憤怒のあまり高速でキーパッドを叩きつけ、『銀河トリップ(GalaTrip)』に極悪なレビューを送信した。
【スポット名:地球・旧北米区『偽りの密室(エリア51風秘密基地)』】
総合評価: ★☆☆☆☆(1.0)
機密性: ★☆☆☆☆(ただのプラスチック人形と着色水が展示されています)
知的誠実さ: ★☆☆☆☆(都市伝説で観光客を騙す悪徳テーマパークの成れの果てです)
【レビュアー:ナビ(銀河観光公社)】
「人類が宇宙人を解剖・保管していたとされる最重要機密基地です。しかし実態は、PVC製のチープな模型で恐怖心を煽っていただけの虚飾の館でした。本物の宇宙生命体として、この浅はかな捏造展示に強い憤りを覚えます。訪問の価値はゼロです」
「送信完了です……!」
ピッ
通知音が静かな研究室に響く。
> 「役に立った!」が1件押されました。(ユーザーID:0000)
> ユーザーID:0000「★1評価に同意。ただのハリボテ人形なのに、都市伝説だけで缶バッジとTシャツを売りつけて飯を食っていた怪しい施設だからな」
画面を見たボルトが、大きな肩を竦めて溜め息をついた。
「……Tシャツまで売ってたのかよ。どこまでも商たくましい奴らだな」
「ふん、まったくです! 旅情を売るなら本物の感動を提供するべきです!」
ナビが怒り冷めやらぬ様子で腕を組む横で、パッチは宇宙人人形を頭に乗せたまま、ゴロゴロと基地の出口へ向かって転がっていった。
(第17話・終わり)




