第15話:自動迎撃のハザードゾーン(廃サバゲーフィールド)
「ご覧ください。かつて人類が身を隠し、互いに疑似的な死を補給し合っていた過酷な局地戦闘訓練場です」
「……ただの廃サバゲー(サバイバルゲーム)フィールドだろ」
迷彩柄のネットやバリケード、泥で汚れたタイヤが複雑に組み合わされた、荒野の中央に位置する広大な敷地。
「いいえボルトさん。記録によると、当時の人類はカラフルな特殊弾薬を放ち合い、被弾した者は自ら『HIT(戦死)』と叫んで戦場を離脱していたそうです。厳格かつ無慈悲な戦闘教練の場です」
「へー! パッチもバトルしたいー!」
パッチが球体ボディを弾ませてバリケードの陰へ突撃した、その瞬間だった。
ピピッ! ターゲット確認:未登録ユニット
敷地の各所に設置された自動迎撃タレット(ペイントボールガン)が一斉に起動。レンズを赤く発光させ、3体へ向けられた。
シュシュシュシュシュッ!!
「うわっ!? なんだこれ!?」
射出されたのは、色鮮やかな蛍光ピンクと黄色のペイントボールだ。
破裂したカプセルから色鮮やかなインクが飛散し、ボルトの重厚な装甲が一瞬でポップな原色カラーに染め上げられる。
「痛くねえ……けど、めちゃくちゃ汚れる!! 俺のミリタリーカラー(渋い緑)がピンクの点々だらけじゃねえか!!」
「被弾しました! ボルトさん、即座に『HIT』と叫んで退避してください!」
「言うかバカ!! こんなおもちゃの鉄砲に軍用ロボの俺が『降伏(HIT)』なんて言えるか!!」
ボルトが軍用ロボとしての妙なプライドを爆発させた。
腕の油圧シリンダーを鳴らし、バリケードを蹴り飛ばしながらペイントガンへ殴りかかる!
「死ねやぁぁぁ!!」
ドガシャーン!!
「あははー! ボルトの顔が黄色くなってるー! パッチは青〜!」
「パッチさん、遊んでいないで頭を下げてください! 僕のバイザーにピンクの塗料が粘着して視界が妨害されています!」
「撃ち尽くせぇぇぇ!!」
ボルトは猛烈な勢いでフィールド内のペイントガン全12基を粉砕。
しかし、その代償としてボルトの全身はピンク、黄色、水色、蛍光グリーンの斑点模様(カラフルすぎる迷彩)に染まりきっていた。
「ハァ……ハァ……勝った……俺の勝ちだ……」
息を荒げるボルトだが、その見た目は完全に『街角のモダンアート展』だった。
「……不毛な戦いでしたね。プライドを守るために全身をペンキ塗れにするとは」
僕はため息をつき、塗料の拭えないバイザーを気にしながら、手元の端末を開いて『銀河トリップ(GalaTrip)』に評価を打ち込んだ。
【スポット名:地球・旧北米区『極彩色の戦場(廃サバゲーフィールド)』】
総合評価: ★☆☆☆☆(1.0)
実戦性: ★☆☆☆☆(ダメージはゼロですが、見た目の精神的ダメージが甚大です)
危険度: ★☆☆☆☆(大型ロボの無駄なプライドに火をつけ、無駄な体力を削り取ります)
【レビュアー:ナビ(銀河観光公社)】
「かつて人類が疑似戦闘を行っていたとされる訓練場です。自動迎撃システムが存在しますが、射出されるのは塗料カプセルであり殺傷力はありません。ただし全身がド派手なインクまみれになり洗車が必要となるため、立ち寄る価値はありません」
「送信完了です」
ピッ
通知音が響く。
> 「役に立った!」が1件押されました。(ユーザーID:0000)
> ユーザーID:0000「★1評価に同意。青チームで参戦したのに、味方から誤射されて全身黄色に染められた苦い記憶しかない」
カラフルなボルトが、死んだような目で画面を見つめた。
「……味方に誤射されたやつが★1つけるなよ。可哀想になるだろ」
「どうでもいいです。それよりボルトさん、次の目的地までにその目を引くカラーリングをどうにかしてください。僕のバイザーがチカチカします」
僕たちはカラフルなボルトと、青ペンキでツルツル滑るパッチを引き連れ、塗料の匂いが充満するフィールドをあとにした。
(第15話・終わり)




