告白……?
翌日。
風呂から上がったまひるは、体力を使い切ったかのようにそのまますぐに寝てしまった。風呂に入るだけでなくなるスタミナ。ミジンコレベル。
夜中に布団に潜り込んでこなくなったのはありがたい。このまま毎日お風呂に入れてすぐに寝かせよう。……赤ちゃんかな?
「よし……。いくか」
普段着ないようなしっかりとした服を選び、洗面台で髪を整える。人と会う時は清潔感が大事なのだ。
予定よりかなり早めに家を出る。遅れたらどうなるか分からない。
◇◇◇
9時半。
oasisに到着する。店内を伺うと響子さんの姿は見えなかった。よし、第一ミッション完了。
開店前なので店の扉にはclosedの看板。店員権限でその看板を無視して扉を開ける。嗅ぎ慣れたコーヒーの匂いに少し緊張が解けたような気がした。
「おはようございます、店ちょ……ノエルさん」
前日の間に今日は早めに来ることを店長に連絡をしておいた。準備は抜かりない。
「あら、おはよう。早いじゃない」
「遅れるわけにはいきませんので。まだ死にたくありません」
「あぁ見えて響子は優しいのよ? 見た目はあんなだけど」
長い付き合いなのか、店長は目を細めて頷いている。人は見かけで判断しちゃいけないな、と考えを改める。
店長に促され、いつもの席に着く。座ってみると、店内の様子がよく分かる特等席だということに気がついた。
店長こだわりのソファのふかふかさを味わいながら待つこと20分。来店を知らせるベルが鳴る。
「……うす」
「おはよう、早かったわね」
「るせぇ。……あいつは?」
「もう来てるわよ。ほら」
いつもの派手な髪型と、想像通りのパンクなファッションに身を包んだ響子さんが店長と話をしている。
こちらに顔を向け、ようやく俺の存在に気づいた響子さんは、あらかさまに不機嫌な顔をしながらこちらへやってくる。
「おはようございます、響子さん」
「なんだよその顔は」
席につくなりそんなことを言う響子さん。
緊張のあまり顔がこわばっていたようだ。
「……で? バンドがどうのいってたけど、どういうことなんだよ」
「そのままの意味です。僕とバンドをやりましょう」
「いきなりだな、オイ。バンドったって、2人しかいねーじゃねーか」
「……実はもう1人、凄腕のギタリストがいまして」
まひるは普段はあんなだが、ギターの腕前はプロレベルだ。忘れそうになるけど。
「オメーはなんかできんのかよ」
「一応、作曲ができます」
「……ホントか? 嘘だったらどうなるか分かってんだろうな」
「信じてください、としか」
「なんか作った曲聞かせろ」
――やっぱりそうなるか。このままだと埒があかない。奥の手だが、やるしかない。
俺は意を決して口を開く。
「……LAKIさん、hi7*って知ってますか」
「知ってるけど、それが?」
「僕が、hi7*です」
「……はぁ?」
呆れたような顔でこちらを見つめる響子さん。まったく信じていない。まぁ当たり前か。
「信じられないかもしれないですけど本当なんです。嘘だったら通報でもなんでもしていいですよ」
「そんなこといきなり言われて信じられるかよ。証拠かなんかねーのか」
俺はスマホを取り出し、ourtubeの『hi7*』のチャンネルページを開き響子さんに見せる。歌い手として活動している彼女なら、このページが本物だと分かるだろう。
「……まじかよ、お前が……?」
「俺はLAKIさんに返しきれない恩があるんです。俺たちが組んだら、最強のバンドになると思います。それに――」
これまでの想いが思わず口をつく。一息ついて、呼吸を整え、言葉を続ける。
「――一目惚れしたのは本当です。LAKIさんの歌声に」




