作戦成功……?
「「はぁーーーー!?」」
静かなoasisの店内に綺麗なハーモニーが響く。他のお客さんがいなくてよかった。てか店長、こちらを見てニヤニヤするのをやめてください。
「どどど、どーゆーことだよ!?」
「こっちが聞きたいですよ! 月島さん、どういうことですか!」
俺と響子さんの視線を気にした様子もない月島先輩。そういやメンタルお化けだったわ。
「どういうこともなにも、そういうことだよ。日向くんは響子に一目惚れしたのさ。――バンドメンバーとしてね」
2人分のジト目を意に介する様子もなく、そうのたまう月島先輩。あやうく月島ファンクラブに脱退申請するとこだったぜ。
「紛らわしい言い方しないでくださいよ……。ただでさえ通報されかかってるのに」
「バンド……ってお前と? あたしが?」
我に帰った響子さんがこちらを睨みつけている。濃いアイメイクから飛ばされる眼力は俺をビビらせるのには十分だった。
「そろそろ響子も不良から卒業しないとね。いい機会だと思ってやってみたらどうだい?」
「誰が不良だッ……!そもそもこんなどこの馬の骨ともしれねーヤツと仲良くなれる気がしねぇ」
「馬の骨じゃありません。雛川日向です」
「うるせー黙ってろ!通報すんぞ!」
「やめてくださいお願いします」
ギャーギャーと騒ぎ立てる俺たちを見かねた店長がこちらへと向かってくる。仕込み中だったのか、手には包丁が握られている。怖すぎます店長。
「もう、あなたたち!いくらお客さんがいないからって騒ぎすぎよ!あんまりうるさくするなら給料減らすわよ?」
「「「すいませんでした」」」
流石のメンタルお化けも店長という権威には素直に謝るらしい。響子さんも借りてきた猫のようにしゅんとしている。俺も頭を下げる。
「でもいいじゃない。響子、せっかくだしやってみたら?どうせ学校サボりまくって暇なんでしょ?」
「……でもよぉ」
「日向くんも適当にあなたに声を掛けたわけじゃないと思うの。ちょっとでもいいから話してみなさいよ」
「……わーったよ」
最初から店長に相談すればよかったのでは?と思えるくらい響子さんが言うことを聞いている。まぁここでサボっている立場上、店長にはあまり強く出れないのだろう。
「響子さん、いきなりですいませんでした。でも僕は本気ですから。――明日、ちょうど土曜日ですしお時間いただけますか?」
「はいはい……。――ったく、どう言う展開だよこれは」
渋々といった様子だけど、なんとか話がまとまった。店長には感謝してもしきれない。
スマホを取り出して連絡アプリを立ち上げ、響子さんと連絡先を交換する。響子さんのアプリのアイコンは可愛い猫の写真だった。飼い猫だろうか。
「かわいい猫ちゃんですね」
「……ここあだ」
「……?」
「名前だよ名前! ココア!」
「……っふふ」
「何笑ってんだ怜!」
「いやいや、ずいぶん打ち解けたと思ってね。……ふふふ」
「……テメーあとでぶっ飛ばす」
――ウチにも勝手に住み着いたまひるがいることは隠し通そうと心に誓った俺だった……。




