一目惚れ?
LAKIさん勧誘計画について考えながら午後の授業を終えた俺は、足早にoasisへと向かう。彼女が来ているかを早く確認したかったからというのもあるが、月島先輩に任せきりになってしまいそうで焦っていたのもある。
路地裏に入り、オアシスの外から店内の様子を伺うと、いつもの席に座っている響子さんの姿が見えた。
「おはようございます、店長」
「店長じゃなくてノエル、よ。おはよう、ヒナヒナちゃん」
店長はいつもの可愛いエプロンをつけ、カウンターの中でドリンクを作っているみたいだ。店内を見渡すと、響子さん以外のお客さんはいないみたいで安心する。カフェの経営的には安心できないけど。
店長オリジナルデザインのエプロンをつけながら響子さんの様子を横目で見ると、いつものようにイヤホンをつけながらスマホをリズムよく叩いていた。ガチ勢かもしれない。
「ヒナヒナちゃん、いつものできたわよ」
どうやらタイミングよく響子さんが注文したアイスココアを作っていたようで、カウンターの上に出来立てのアイスココアが置かれる。
「あ、はい。いつもの、ですね」
トレイにアイスココアを乗せ、ドキドキしながらいつもの席へと向かう。コップをつたう水滴が、俺の心情を表しているようだ。
「お待たせしました、アイスココアになります」
コースターの上にアイスココアを置きながらちらりと響子さんの様子を伺うと、俺の存在が全くないかのようにスマホと格闘していた。涙が出そう。
存在に気づいてもらえないことに心が折れそうになるが、このチャンスを逃すわけにはいかない。席を離れず響子さんのほうをじっと見つめてみる。
「ふぅ……ってうおお!?」
スマホから目を離した響子さんがやっと俺の存在に気づいた。不審者を見つけたような反応に、俺のガラスのハートは砂のように砕け散った。
「アイスココア、お持ちいたしました」
「見りゃわかんだよ!そこでなにしてんだこの変態!」
「変態じゃありません。雛川日向です」
全く似合っていないエプロンについている名札を指差しながら自己紹介する。
「なに冷静に自己紹介してんだよ……」
「すいません」
そんなやりとりをしていると、来客を知らせる店のベルが鳴る。扉の方に目をやると、今やってきたであろう月島さんと目が合った。助けてください月島さん。
「おや、ずいぶん仲良くなったようだね」
可愛いエプロンを慣れた手つきで着ながら、こちらへやってきた月島さんが助け舟を出してくれる。
「仲良くねーよ。今警察に通報しようとしてたとこだ」
「日向くん……。面会には行くよ」
「いやいや通報しないで!?月島さんもノらないでください!」
「ふふっ、ごめんごめん。焦ってる日向くんが珍しくてつい」
月島さんの冗談で少し場の空気が和らぐ。やっぱり月島さんは最高だぜ。
「で?日向だっけ?なんか用かよ」
「なんで分かるんですか?」
「誰でもわかんだろーが。さっさと要件を言え」
俺が挙動不審すぎて話があることはもうバレていた。あまり長々と話すと通報されそうなので、さっさと本題に入ろう。なるようになれ、当たって砕けろ。
「――単刀直入にいいます。僕とバンドを組んでください」
「……はぁ!?」
まさかそんなことを言われると思っていなかった響子さんはあまりの驚きに目を見開いたまま固まってしまった。俺は助けを求めるように月島先輩の方に顔を向けると、その口からさらなる衝撃発言が飛び出した。
「――日向くんは響子に一目惚れしたんだってさ」




