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正体、みやぶったり。


作戦決行当日。

日課となったまひるのお世話を終えた俺は大学へ向かう。ほっておくと何も食べないまひるにお昼ご飯のおにぎりを作った俺を誰か褒めて欲しい。


お昼までの授業を上の空で受け、俺はさっそくカフェoasisへ向かう。


「あら、いらっしゃいヒナヒナちゃん」


「おはようございます、ノエルさん」


カウンターの中でお皿を拭いていたノエルさんが出迎えてくれる。相変わらず店内は数人のお客さんしかいない。


「……あれ?今日はあの常連さん来てないんですか?」


「響子ちゃんのこと?今日は来てないわよ」


そりゃそうか。いくら常連とは言え、毎日来るとは限らないよな。学校もあるだろうし。不良生徒もたまには学校に来てたしな……。


「あの、彼女ってどんな子なんです?」


「あらあらぁ。もしかして、響子ちゃんのこと、気になっちゃってる感じ?……あなたも隅に置けないわねぇ」


ノエルさんがニヤニヤとこちらを見る。いや、確かに気にはなっているけど、そんなんじゃないんです。


「おや、なんの話をしているんだい?」


そんな苦し紛れの弁解をしていると月島先輩がやってきた。バッドタイミング。


「いやねぇ、ヒナヒナちゃんがね、響子ちゃんのことが気になるっていうから」


「へぇ……。日向くんは響子のような女の子がタイプなんだね」


「だから違いますってば!からかわないでくださいよ……!」


月島先輩は口に手を当ててクスクスと笑っている。笑顔も素敵だ。こんな時でなければ見惚れていただろう。


くそ、響子さんのことについて教えてほしいと言い出せない雰囲気になってしまった。しかたない、ぶっつけ本番でいくしかない……。


俺は看板メニューのオムライスを食べながら考える。響子さん=LAKIさん。これはほぼ確定だろう。ただ、そのまま聞いても素直に正体を教えてくれるとは思えない。かといって、こちらから正体を明かすのはリスクが高い。LAKIさんじゃない可能性もゼロではないし。


「どうしたもんかな……」


まひるに任せておけと言った手前、いまさら後戻りもできないし。……まぁなるようになれだ。


◇◇◇


午後からの授業もぼんやりとやりすごし(大丈夫か、俺)本日2回目のoasisへ向かう。今日もシフトが入っているので、響子さんに怪しまれることはないだろう。


ノエルさんに簡単なドリンクの作り方を教えてもらっていると、ターゲットがやってきた。今日もむすっとした顔で窓際のいつもの席へ腰掛ける。


「ご注文はお決まりでしょうか」


「いつもの」


いつものアイスココアを教えてもらった通りに作りながら響子さんの様子をうかがう。どうやら勉強をしているようだ。根は真面目な子なのかもしれないな。


──よし、そろそろ作戦開始だ。


「そういえば店長ってどんなバンドが好きなんですか?」


「そうねぇ、いろいろ聞くけどやっぱりロックが好きね。特にUKの、まぁいわゆるブリティッシュロックバンドかしら」


「やっぱりそうなんですね。店名もoasisって名前だしそうじゃないかと思ってました」


「ヒナヒナちゃんはどんな音楽を聴くのかしら。見た感じ結構詳しそうだけど」


来た!ノエルさんが狙い通りの質問をしてくれたので俺は心の中でガッツポーズをする。


ちらりと響子さんの方を見る。よし、イヤホンはしていないな。




「──最近は歌い手ってやつにハマってまして。とくに"LAKI"っていう歌い手さんが大好きで。最近はそればっかり聴いてます」


LAKIという部分を強調して大きめの声で答える。


「……ぶふっ!」


響子さんが飲みかけていた水を吹き出す。……想像以上の効果だった。


「あら、大丈夫かしら。ちょっとヒナヒナちゃん、これ」


ノエルさんは俺におしぼりを渡す。……渡すときにウィンクをしていたのが気になるが、ちょうどいい。


「大丈夫ですか?これ、使ってください」


「わ、悪い」


響子さんは口元を手で拭いながらおしぼりを受け取る。……なんか申し訳なくなってきた。


しかし、ここで止まるわけにはいかない。追い討ちをかけよう。


「もしかして、響子さんもLAKIさんが好きなんですか」


「は、はぁ!?んなわけねぇだろ!」


明らかに動揺している。俺が名前で呼んだことにも気づいてないようだ。


「どうしたんですか、そんなに慌てて。……もしかして響子さんがLAKIさんだったり?」


冗談めいた風に核心に迫る質問をする。これでトドメだ……!


「んなわけねぇだろバカ!」


くそ、頑なに認めようとしないな……。まぁ、証拠もないし無理もない。


こうなったらあの最終兵器を出すしかない……!


──俺はすこし顔を近付け、スマホを取り出しながら小声で話しかける。なんか楽しくなってきた。


「……昨日、LAKIさんが投稿した写真なんですけど。これ……昨日の試作品のケーキですよね?」


「……ゔっ」


その写真を見た響子さんがくぐもった声をあげる。


「昨日このケーキを提供したのは、あなただけなんです。……これでもまだ違うと言い張るんですか?」


「……なにが目的だ」


「いえ、そのー……。ええと」


……まずい。正体を明かすことには成功したけどここからのことをまったく考えていなかった。どうしよう。いきなりバンドやりませんか、って言うのもなんか違う気がする。


「……ヒナヒナちゃーん?どうしたのー?」


俺があれこれ考えているとノエルさんが俺を呼ぶ。このままここにいても怪しまれるし、一回戻ろう。



響子さんを振り返ると、ものすごい顔でこちらを睨みつけていた。もし好感度があるなら、マイナスに到達しているだろう。明らかに脅そうとしてた感じになってしまったし。


「……ヒナヒナちゃん、あなたって結構肉食系なのね。見直しちゃったわ」


ノエルさんにもすごい勘違いをされてしまった。


──作戦失敗……!



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― 新着の感想 ―
[一言] まひるのターンがこない。 日向は間抜けなキャラだったんですね。何で失敗するかな。 オアシスのノエル。店を潰しそうな名前。
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