約束。
第二部、バンドメンバー集め編、始まります
その後。
まひるに正体がバレてしまった俺は矢継ぎ早に質問攻めを受けていた。
──いつ、この曲を作ったのか?
──きっかけは?
──他にメンバーはいないのか?
「この曲は俺が高校3年の時に作った曲で……。きっかけは、そうだな……。俺もバンド活動がしたくなって、それで作ってみたというか……。え?他にメンバー?いや、俺1人で作ったよ。半年ぐらいかかったけどな」
それぞれの質問に俺は簡単に答える。まひるは今までに見たことのないような興味津々といった様子で、俺の返答に「うんうん」と頷いている。
「……すごい。高校生でこの曲をつくったんだ」
「まぁ、時間はたっぷりあったからな。おかげで成績は良くなかったけど」
部活動をしていなかった俺は、空いた時間はバイトか作曲に当てていた。バイト中も思いついたアレンジがあれば、スマホでメモったりしていたから、起きている時間はほとんどあの曲に費やしていたことになる。
「……なんでおしえてくれなかったの」
「いや、聞かれてないし……。それに、その、あんまり言いふらしたくないというか」
有名になったはいいが、当時SNSなどをほとんどやっていなかったこともあり、hi7*の人物像はネット上でさまざまな憶測を呼んだ。やれ、有名ボカロPの別名義だ、やれ著名な音楽家の気まぐれだ。まさか誰もその正体が高校生だとは思っていなかっただろう。
「……あいたかった」
「そ、そうか。ただの大学生だけどな」
「……ううん。……『ひな』は命の恩人。しかも憧れの人。だいすき」
「お、おう。……ありがとう?」
大好きなんて面と向かって言われたのはいつ以来だろうか。というか、さらっと俺のことを「ひな」って。小学生の頃つけられたあだ名で呼ぶんじゃない。あの頃は女の子っぽい名前だと散々いじられたっけ。
「……わたし、ひなとバンドやりたい」
懐かしさに浸っていた俺にまひるは真剣な表情で告げる。
「いや、バンドっていったってな……。他のメンバーはどうするんだ?」
「……さがす」
「どうやって」
「……ひなが」
「俺がかよ……」
そのメンバーがいないから俺は1人でDTMをやっていたんだよ、と心の中でツッコみをいれる。俺だってバンドでステージに立ってみたいけどさ。
「……がんばって。ひなならできる」
食事も睡眠も1人でできないまひるに言われたくない。お前も頑張れ。
「わかった、まひるもいろいろ1人で出来るように頑張ってくれるならな」
「……うぅ」
「……そんな顔してもだめだ」
顔を愛用のクッションに半分うずめながら、ジトっと睨んでくる。その小動物のような可愛さに思わず折れそうになる。くっ……、耐えろ、俺。
「俺も少しは手伝うからさ」
その言葉に納得したのかしていないのか、まひるはクッションに顔を押し付けながら動かなくなってしまった。
とはいっても、メンバーか……。あてがなくはないけど、どうしたもんかな……。バンドを組むってなると、俺の正体を明かす必要もあるだろうし。
そんなことを考えている俺を尻目に、まひるはさっき買ってきたラーメンをレンジでチンしていた。さっきカップ麺を食べたばかりじゃなかったか?
そして、どういうわけかチンしたラーメンを俺の前に置いたまひるは、俺の顔とラーメンを交互に見る。ま、まさかこいつ……。
「……それは、食べさせろってことか……?」
「……ん」
まひるは満足げに頷く。さっきの約束はどうなったんだ。
「……すこしは手伝うって」
言ったけど。せめて少しは頑張る姿勢を見せて欲しかった。
俺は無心でまひるの口に麺を運ぶ。ふーふーしないと食べようとしないまひるに呆れながら、任務を遂行していく。
バンドメンバーか……。やるだけやってみよう。




