第38話 炎上
大変間が空いてしまいすいません。
お仕事がだいぶ落ち着いたので、毎週日曜日を目途にあげていきます!
溢れかえる熱気に主館乙女は満足げに頷く。
今回のイベントは間違いなく成功と判断されるだろう。
これで学園内での評価もあがるはず。
小さくガッツポーズを取る乙女を、柔らかな翡翠の瞳が捉える。
「大盛り上がりですね。歓声がこんなにも響いてる」
陽光を透かして煌くプラチナブランドを揺らしながら絶世の美少年、カール・フォン・ホーエンハイムが笑いかける。
この近辺の歓声が響き渡っているのは彼が現れたことによるものだが、細かいことは置いておこう。
乙女は隣の席へとカールを促す。
座るカールの前にあるのはマイクと自立式ドローンカメラ、そうここは解説席である。
色々な要因で盛り上がっているこの祭りをさらに盛り上げるべく、乙女は解説をカールにお願いしたのだ。
「よく受けてくださいましたね、カール君。正直断られると思ってましたよ」
自分の講演会以外で表に出ることを極端に避けるため、普通には受けてくれないだろうと思っていた。
頷かせるために生徒が見ている前で土下座など、案をいくつも用意したが無駄に終わってしまった。
「そうですね、いつものただの催しなら断っていたでしょうね」
輝く翡翠を細めながら会場を見つめるカール。
その姿に乙女は口角を上げながら詰め寄る。
「何やらお目当てがあるみたいですねぇ」
「それはお互い様でしょう」
「ふふふ、楽しくなってきましたねぇ。ではではそろそろ始めますか☆」
乙女が手を上げて合図をすると一斉に空に空砲が打ち上げられた。
――――
「うおッ、ビックリした。・・・いよいよ始まるのか」
空砲に驚いて空を見上げた先に、いつの間にか半透明の巨大なスクリーンが展開されていた。
『レッディースエーーーンドジェントルメーン、やる気に満ち溢れているかぁ?ボーイミーツガール!!』
何かのライブでも始まるかのような煽りに、会場が揺れるような声で返す。
その反応に乙女ちゃんも満足げだ。
『いいねいいね、そのパッション♪でもまだ足りないなぁ・・・』
乙女ちゃんはうんうんと頷いた後に、ニヤっと悪く微笑む。
その微笑みに何かうすら寒さを感じる。
これ以上ややこしいのは勘弁してほしいんだが。
『この盛り上がりを大いに超えるためゲストをご用意しました!!早速ぅ、出てこいやッ★』
いやもうどんなテンションだよ。
てかゲストって誰呼んだんだか。
その人物が姿を見せた瞬間会場は大いに揺れた。
人の声って本当に建物を揺らせるんだな。
俺はその原因を見ながらぼんやりとそう思う。
「何やってんだよ生徒会長」
『こういう場は初めてなのでなんと挨拶しようか悩みますね』
『何を言いますかカール会長、慣れっこちゃんでしょ♪』
『講演会はもっと静かですからね。勝手が違うといいますか・・・。どうも紹介に上がりましたカールです』
割れんばかりの黄色い声援に思わず耳を塞ぐ。
こういう日常的な姿はあんまり見せてくるタイプじゃないから刺激が強いのだろう。
あちこちで救護班が駆けまわっている。
『ここだけで盛り上がってもしょうがないのでサクサクっと進行しちゃいますか!ズバリカール会長の注目選手とか聞いちゃおうかな!!』
『注目・・・ですか。そうですね、僕が注目するまでもなく目立って入るのですが』
何故か悪寒が走り肩を抱く。
勘違いであってほしいんだがスクリーン越しに目があった気がする。
『御影真白君ですかね。彼がとても気になりますね』
『ほほぉ、すでに最高に悪目立ちしている彼ですか~』
誰のせいだと思ってんだよ!
つうかさっきより殺意が増してるんだが。
和やかな空気感から戦場のような重たい圧を感じる。
明らかに空気が変わったのが嵐たちにもわかるようで俺に同情の眼差しを送ってきた。
「他人事みたいな反応だが、お前ら一応チームだぞ」
「それはわかってるけど、大変なのは私たちじゃないしねぇ」
「しっかり坊を巻き込まないように守ってくださいね」
「日頃の行いだろう」
こいつら言いたい放題だな。
解説は解説で何かを言っているが、正直怨嗟の声で何も聞こえない。
『さてさて色んな意味で大注目の御影選手は生きてリングを降りることはできるのか!試合開始です☆』
乙女ちゃんの声と同時に空砲が再び打ち上げられる。
「ウィリアム!」
「わかっている!『開廷』我らへの攻撃は罪と知れ」
輝く金の天秤が空へと掲げられる。
それとほぼ同時に質量をもった殺意が向けられる。
「全てを焼き尽くす炎となれ『灼熱』」
「彼の一体を灰に帰せ『獄炎』
「始まりと終焉を司る炎の化身よ焼き払え『炎神』
大小問わず様々な炎の塊が一点を目指して放たれる。
あまりの熱量に世界が歪んで見える。
まあ、その一点って俺なんだけどな。
「あっついラブコールだねぇ」
ご丁寧に火の能力者ばかりとは対策をしっかりたてていると感心する。
基本的に鏡を使う能力は鉄もしくは水に依存するから、融かし蒸発させる火の能力が最も有効的だ。
「この程度の力に負けはせんが・・・威力が異常だな」
ウィリアムの天秤が放つ光の膜に炎が次々に打ち込まれていく。
少しするとカタンと天秤が左に傾き輝く。
「許容量を超えるな、一度放たねばならんか。貴様への念はそれほどか・・・いや事前に合わせていたのか」
ウィリアムが顎に手を当て俺を一瞥する。
確かに『思創の卵』は認識しやすければしやすいほど威力が上がるが、それでもこの威力はおかしい。
俺への負けてほしい念を含めても強すぎる。
会場の応援席を含め最初の一撃は炎と決めていたのかもしれない。
「一度解くが行けるか?」
「こっちはいつでも―」
「真白お任せしますよ?」
「任せとけお前の大事な坊ちゃんは守ってみせるよ」
全員の反応を見てフンと鼻を鳴らし、ウィリアムは手を掲げる。
「ここからが開幕だ『裁きの剣』」
模擬戦の時を超える輝きが会場を埋め尽くし、視界が白で埋め尽くされていく。
天秤の輝きが収まると、何グループかは戦闘領域の外にいるが、膝をついて耐えている者もいた。
「なるほど、障壁の類か。考えているな」
「お前のって威力増して弾き返すんだろ?それ耐えるってどんだけ高い『武装具』持ってきてんだよ」
俺みたいな庶民クラスではお目にかかれない代物だろうことは想像に難くない。
「おい、人数が減っているぞ!さっきの光で紛れたのか?」
「たった二人なら様子を見るまでもねぇ!畳みかけろッ!」
ここからは嵐たちとは別行動だ、頼むぞ。
「しばらくは俺は見に回る。しっかり引き付けろ」
「いちいち偉そうだな。素直に守ってくださいでいいだろうに」
ウィリアムの『裁きの剣』は強力な分次の発動までに時間がかかる。
その間は俺の腕の見せ所だな。
「かかって来いよ!お前らの望む首はまだつながってるぞッ!」




