第37話 準備完了
この話から新章となります!
頑張っていきます。
予選当日は快晴で気持ちのいい日差しが降り注いでいる。
俺はほどなく着替えを済まし、準備運動がてらジョギングと洒落こむ。
こんな日のジョギングはとても気持ちのいいものだ。
はたして全速力で走ることをジョギングと言っていいかはわからんが。
「やっばいな。ギリギリか?」
そう、寝坊である。
最近は起きれていたから油断してしまった。
大量に持ち込んだはずの目覚ましは全て電池が抜かれていて機能していない。
まあ、抜いたのは俺なんだがな。
アイツらうるさいんだよ毎日よ。
少し前までは大事な時は輝夜や巴さんが起こしてくれていたからな、完全に油断した。
汗を拭いながらペースを緩めることもなく走り続ける。
途中で輝夜や規束を見た気がするが気のせいだろう。
ようやく見えてきた予選会場の入り口に人影が見える。
他の生徒は集まっているだろうから、多分嵐たちだ。
絶対ウィリアムの機嫌がヤバいな。
「貴様たるんでいるぞッ!!」
「おっそーいッ!!こんな日に遅刻する?」
ウィリアムどころか嵐も怒っていた。
今にも飛び掛かりそうなウィリアムと嵐をハイドが止めてくれている。
何ていいやつなんだ、ハイド。
俺の味方はハイド、お前しかいない。
「英気を養っておいでですから、今日は三人分くらいの活躍を期待してもいいのでしょう?」
あ、味方はいないらしい。
アイツ目が笑ってない、遅刻は絶対許さないマンに違いない。
「本当に申し訳ない!俺が悪かった!スマン!ごめん!」
腰から体を直角に曲げて謝罪の連打、俺にできるのはこれしかない。
望みとあらばジャンピングスライディング土下座も出そう。
謝り倒す俺に沈黙で返す3人。
罵られるよりつらいなこれ。
「リーダーである俺を待たせるとは大した不遜だ。働きをもって返せよ」
「期待してますよ」
「ほら開会式始まるよ」
3人とも軽くふうっとため息をつくと三様に声を掛けてくれる。
是非とも頑張らせていただきます!
――――
入学式の時のような流れで開会式は行われた。
校長の長い挨拶、学園長の短めの鼓舞、生徒会長の応援まではワンセットらしい。
相変わらず生徒会長の挨拶は黄色い声でかき消される。
今回はあいさつの後メイン解説も担当するらしく生徒会長はいそいそと退出していた。
教頭の腰の低い案内でそれぞれの会場へと俺たちは移動する。
案内が終わり、去り際に教頭と目が合うと優しくうなずいて応援してくれた。
会場は全部で4つあり、BクラスとCクラスそれぞれで2つずつ使用。
本日行われる試合は2回、午前中の第一試合で半数脱落、午後からもう一試合でさらに半数脱落と結構な数を絞るようだ。
「1日二試合か」
「作戦どうすんのよ、リーダー」
ウィリアムを睨みながら嵐は足をタンタンと鳴らす。
不服なのが溢れてるぞ。
厳選なくじ引きの結果ウィリアムがリーダーとなった。
当然だと言わんばかりの態度に嵐が切れたのは言うまでもない。
あの後何とか引きずりながら食堂を出た。
「なるほど、基本的に同じ戦法は使えませんね。昼休憩の間に試合の振り返りが会場モニターや端末で見れるそうです。特に活躍や注目度が大きかったチームが映るみたいですね」
自己アピールをしたいなら大きく立ち回れってことか。
ただその分自分の癖や弱点何かが露呈しやすくなると。
この試合形式ならコソコソして、勝手につぶし合ってもらうのが一番だが今回はそうもいかない。
うちのチームが間違いなく目立つだろう、主に俺のせいで。
周囲を見渡せばギラついた視線、というか殺気が飛んできている。
スタートと同時に集中砲火は間違いなしだな。
思い返してみるが俺はそんなに恨まれるようなことをしているだろうか?
「こういう小賢しいのは得意なやつに任せるのが適任だな」
今まで黙り込んでいたウィリアムがポツリと呟く。
おい、何こっちを見てやがる。
ハイドも嵐も何で俺を見ているんだ。
「リーダー命令だ、御影真白お前が俺たちを動かして見せろ。まぁ俺は王だから動かんがな」
ポーズを取りながらウィリアムは尊大に言い放つ。
ハイドは止めるどころか拍手をして俺に微笑む。
これ絶対今決めた事じゃないだろこいつら。
「いやおかしいだろ。普通リーダーが指示するもんだろ。王だから動かないってのも意味わかんねえしよ」
「私は真白っちでいいよ。こいつに命令されたくないし」
「フン、貴様に俺の言葉の真意がわかるとも思えんがな」
はいそこ、火花散らさない。
嵐さん顔が怖いよー、落ち着いて―。
「ふざけている訳でなく真白が適任であると私は思ってますよ。嵐さんは真白の言うことなら疑うことなく動けるでしょうし、私は貴方の指示を信頼します」
「・・・いや何その信頼」
俺は頭を軽く抱えながら考える。
確かに嵐に百パーセントの指示は俺しか出せないだろう。
ハイドの能力は昨日帰り際に軽く教えてもらったし、ウィリアムの能力も大体は想像つく。
だが指示だしとなると目立つことこの上ないし、俺の指示により敗北したチームはより一層の憎悪を抱くだろう。
なんという負のスパイラル。
「真白っち、他に選択肢ある?もし1回戦で負けたらこわ~い顔して姫パパが待ってるよ」
「んなことはわかってるよ」
「腹をくくりましょう真白」
「遅刻の罰をこれで許してやるんだ感謝しろ」
こいつら、言いたい放題だな。
「わかったよ、やればいいんだろう。その代わりウィリアムお前の能力の確認を幾つかさせてもらうぞ」
「いいだろう、答えれるものには答えてやろう」
お前は何でいつもそんなに偉そうなんだよ。
俺たちは改めて能力のすり合わせをして考えていた作戦を伝える。
作戦を聞いてウィリアムの口角があがるのが見えた。
どうやらお気に召したらしい。
嵐とハイドは軽く準備運動を始める。
この二人には一番動いてもらうことになるだろう、頼んだぞ。
俺はふうっと大きく息を吐くと今度は吸う。
それを何度か繰り返して周りを見る。
粗方のチームが作戦を整え終わったらしく、不敵に笑いながらこちらを見ている。
ピリついた空気を肌に感じながら拳を握りしめて気合を入れる。
「やれるもんならやってみろ。全員返り討ちだ」




