第36話 結成
予選メンバー受付最終日、俺と嵐はどんよりとした空気のまま教室に訪れた。
誰が見てもお察しの通りメンバーが見つからなかったのだ。
クスクスと笑う声に不快感さえ感じる余裕もない。
と言うかメンバーが見つからないのは笑っている奴らのせいなのだろう。
嵐と二人で他のクラスを当たってみたが輝夜のファンが多く拒否された。
声を掛けただけで逃げ出す奴が何人かいたので、一人捕まえて事情を聴くとこれまた酷い。
俺らと組むと今後学園生活を穏やかに過ごせないと脅されていたらしい。
そら気の弱いやつらは怯えるよな。
「おはようございます。随分と浮かない顔ですね、二人とも」
く、ハイドの爽やかな笑顔がまぶしい。
一応見つからなかった場合は救済措置として、ランダムで学園が余っている人を割り当てるらしい。
能力もわからない、そもそも連携が取れるかもわからない奴と組まされてもなあ。
「お前たちと違ってこっちは色々大変なんだよ」
「色々ですか」
「ハイドはメンバー決まってるからいいよねぇ」
嵐も流石に思う所があるのか、恨めしそうにハイドを見ながら机にうつ伏す。
「ああ、予選メンバーで悩んでいるんですか」
「引く手数多なお前たちと違って大層嫌われてるからな、俺」
そうですねと笑いながら頷くハイド。
やっぱり余裕がある奴らは違うなと軽くため息で返す。
それよりも気になるものが目に付くな。
「なあハイド、あいつどうしたんだ?」
全然突っかかって来ないウィリアムは大層不機嫌そうに腕を組んでいた。
嵐や俺に憎まれ口を叩く事もなく机とにらめっこをしている。
「ああ、チーム練習が上手くいってなくてですね」
細かいことは話してくれなかったがウィリアムとそりが合わなかったらしい。
「また偉そうに命令してたんでしょー」
フンと鼻を鳴らしながら嵐は突っ伏したまま横目にウィリアムを見る。
どうやら図星らしく、嵐の皮肉にキッとウィリアムが睨みつけ二人の間で火花が散る。
「今日の朝一にチーム解消されたんですよ」
「「は?」」
予想外の言葉に思わず嵐とハモってしまった。
いや何で落ち着いてるんだよ。
ってか笑ってる場合じゃないだろ。
「なんでも他で組みやすい人を見つけたと言われまして」
遠くを見つめるハイドを横目に嵐にアイコンタクト送る。
『もう行くしかなくないか』
『アイツと組むの?』
『他に俺らを受け入れてくれそうな奴いるか?』
いないと断言できる。
俺たちも今日まで遊んでいたわけではない。
それこそ端から端まで声をかけまくった。
嵐もそれが解っているから即答で拒否ができないのだろう。
「ん~~~~~~」
急に唸りだす嵐にハイドがこちらを見る。
視線に耐えかねてか諦めたかのようにため息をつく。
「これしかないかぁ。ハイド他に候補がいないなら私たちと組まない?」
眉毛を僅かに動かすハイドと苦虫を潰したような顔をするウィリアム。
先程の俺たちのようにアイコンタクトでやり取りをしている。
「嫌なら普通に断っていいぞ」
俺達よりも長く続くやり取りに助け舟を出す。
「誰も嫌だと言ってはなかろうがッ」
身を乗り出してこちらを睨みつけるウィリアム。
まあまあと宥めながらハイドがこっそり俺に耳打ちをしてきた。
「実は坊は真白に誘われるの待ってたんですよ。ただ一向に誘ってこないから拗ねちゃいまして」
「おい、余計なこと言ってないか」
「別に、お前の癇癪が大変だって話だよ」
「誰が癇癪かッ!」
そういう所だっての。
今にも飛び掛かってきそうなウィリアムをハイドが抑える。
「続きは授業の後にしましょう。丁度先生も来られたことですし昼休みにでも」
「そうだな。嵐も昼休みでいいか?」
「まかせる~」
興味なさげに手を振る嵐。
後のやり取りは俺にお任せか。
とりあえず何とかメンバー問題は解決しそうか?
気付けばクスクスと笑っていた声は聞こえなくなっていた。
――――
「それで、組むのか他探すのかどっちだ」
食堂でランチを食べながら俺はウィリアムに問いかけた。
フィッシュアンドチップスを口に放り投げながらウィリアムはハイドに目で指示をする。
「是非とも組みましょう。ただ能力に関してはお互いに手の内は明かさずにいきましょう」
まあ初日を越えれば敵同士だし完全に手の内を明かすのはまずいよな。
嵐も特に問題はないようで麻婆豆腐を黙々とつついている。
「流石に全部憶測はまずいから軽くは教えてもらうぞ」
「それはお互いに、ですよね」
「そりゃそうだ」
ハイドの笑顔がちょっと怖い。
嵐のは見たまんまだから俺のことだろうな。
能力関連の話は部屋で話すとして、後決めなければいけないことは・・・。
「リーダーって誰がやるの?」
食べ終わって一息ついていた嵐が俺とハイドを見ながら呟く。
「当然俺だろう。それ以外に適任がいないからしょうがない」
「冗談言ってないで真面目に話そうよ」
お前らガチトーンやめろ。
空気悪すぎて周りの奴が席立ってるだろ。
実際誰が適任なんだろうか?
性格上ではウィリアムだろうな。
人の言うことを聞く感じではないし、命令するのは向いているだろう。
周りをよく見るという点ではハイドに軍配が上がるか?
ウィリアムに指示するのが想像できないが。
嵐は・・・やらないだろうしやっても各々頑張ろうって感じか。
「話し合って決まるとは思えないんだが」
俺とハイドをおいて舌戦が目の前で繰り広げられている。
嵐さんや、自分が女の子なの忘れてないかい?
「そうですね、僕もそう思います。なので・・・」
いつの間にかハイドの手には簡単なくじ引きが用意してあった。
準備がいいな、こうなる事を見越してたなこいつ。
「運も実力の内、話し合ってもどうせ決まらないんですからこれでサクッと決めましょう」
有無を言わさぬ殺気のような圧を放つハイド。
圧ヤバすぎて顔が見れない。
「お前がそこまで言うなら、しかたないな」
「まぁ、時間の無駄だし」
「誰がリーダーでも恨みっこなしですよ」
「明日だけだがよろしくな」
色んな制約はあるがこの4人ならどうとでもなるだろう。
今度こそ悪目立ちしないように気を付けようと心にそっと誓った。
更新頻度がバラバラで申し訳ないです。
次話からバトルモード突入です!




