第39話 反射
「お前が化学派か神話派か知らないが、鏡の能力は火に弱いのは実証済みなんだよッ!」
ウィリアムの『裁きの剣』を耐えた面々が再び攻撃態勢に入る。
最初に比べれば人数は減ったが、それでも結構な人数だ。
何せこのフィールドの8割ぐらいは俺たちを狙っているからな。
残りの2割は何もせずただ眺めるだけ、戦わずに勝ちが拾えるなら俺でもそうするもんな。
「御影真白を倒して輝夜様に認められるのは俺だ!くらえッ!『火弾』」
「抜け駆けさせるか!全てを焼き尽くす炎となれ『灼熱』
一人が打ち出したのを合図に、四方八方から飛んでくる火球。
俺だけなら避けれなくもないが、後ろにいるお坊ちゃんを守るってハイドと約束したからな。
「リフレクトミラー最大展開」
手を前にかざして呟くと、6枚の鏡が円を描くように作り出される。
狙いは俺だけ、相性最悪、それでもまあ何とかなるだろ。
「ミラーを指定位置にセット。『反射』
一番最初に放たれた『火弾』に向かって一枚のリフレクトミラーを向かわせる。
ミラーは熱量に耐えきれず蒸発してしまったが、何とか後発の火球に当てることができた。
ドンッと腹に響く音をまき散らしながら連鎖的に火球が爆発していく。
「思った通り、追尾なしで相殺し合うな。なら次は・・・」
「クソッお前らもっと離れろ!扇状に囲って撃て!」
火を放てるメンバーはお互いに距離を取り合いもう一度攻撃の構えに移る。
予想通りの動きに、俺は自分の後ろにミラーを動かす。
「そうなるよな。嵐、ハイド、暴れろ!光を直線状に『反射』」
俺の背後から伸びる光に直線に立っていた奴らが目を覆う。
「くッ!目くらましか。構うな、光の範囲外の奴らは打て!」
「彼の一体を灰に帰せ『獄炎』
再び放たれる炎の波状攻撃、俺は残りの四枚で正面以外を守るようにミラーを配置する。
「『反射』」
さっきと同じようにミラーを犠牲に連鎖爆撃起こす。
「これであいつのミラーは光を出してるの以外壊れた!そのまま畳みかけろ!」
「二人とも任せたぞ」
光と共に伸びる俺の影が微かに揺らぐ。
『ほいほーい、りょかーい。疾れ『韋駄天』』
足元からの風圧にそのまま何人かが場外へ吹き飛ばされていく。
「なんだ!どこから――――」
さながら人間ボウリングのように、蹴り飛ばされた生徒が後ろで固まっていた生徒ごと場外へ吹き飛ばされていく。
シールドをいちいち削りきるのも面倒だから外に向かって蹴ってるな、あいつ。
「ぐえッ」
「お前いつの間に――――」
ハイドは暗殺者よろしく背後に立ってキッチリ締め落としていく。
マジで怖いな、『隠者の影』
自身もしくは自身の影が触れている影へと潜る能力らしい。
触れてさえいればどこからでも移動できるから、あの密集地帯では捕まえることはほぼ不可能だろう。
「とりあえず御影真白とウィリアムから排除だ!」
混乱のさなかでも俺への敵意は衰えないらしい。
ギラついた眼差しと共に四度目の炎が降り注ぐ。
「おーい、ボチボチきついんだが」
「うるさい、わかっている!『開廷』我らへの攻撃は罪と知れ」
再び掲げられた黄金の天秤がすべての攻撃を防いでいく。
やはり人数が減ったおかげか天秤は完全に傾ききってはいない。
「ハイド、右奥の茶髪、その後ろの集団の金髪の女、左隅の男を狙え」
『了解しました、坊』
「急に制御装具で通話なんてどうした?」
「フン、目障りだったからな。お前はお前の仕事をしろ」
何だよ偉そうにしやがって。
俺はやれやれと首を振りながら手を前にかざす。
後半にもう一試合あるからな、あんまり消耗したくないし追加三枚ってところか。
光の反射をやめ、俺の周りを4枚の鏡が漂う。
「御影真白、お前のその鏡は何だ。どういう原理で動いている」
ウィリアムは一際不機嫌そうにそう問いかけてきた。
「原理も何も指示があるまで俺の周りを飛んでろぐらいの感覚だが・・・」
「意味が解らん。物理法則を無視しすぎている。鏡を生み出すのは百歩譲っても鏡は宙には浮かん」
「それ言ったらお前の天秤もたいがい意味わかんないだろうが。とりあえず俺は前の方警戒するからな」
ウィリアムの返事を聞くことなく俺は光の膜の際に向かって走る。
「御影真白、お前のそれは異質すぎる。物事には起源があるというのにお前の鏡は測りきれない」
――――
『おーい嵐、そっちはどうだ?』
「ちょー余裕だねー」
邪魔なやつらを蹴っては飛ばし、蹴っては飛ばしていると真白っちから連絡が来た。
空に鏡が浮いてるからあれで反射して状況でも見ているのだろう。
案の定そろそろ単純な突撃が通用しなくなってくるから連絡してくれたらしい。
「今んとこ指示通り、ヤバそうな奴は避けてるから問題ないよー」
真白っち曰く、こういう乱戦で狙うべきはメイジかヒーラーらしい。
筋肉マッチョとヤバい空気まとっているの以外を狙いつつ、遠距離攻撃かシールドを展開している奴から狙って攻撃していた。
「ハイドのとこは気にしなくていいの?」
『ウィリアムがちょこちょこなんか言ってるし、あいつ動きがヤバすぎて口を挟む隙がないな』
先程自分も体験した影の能力を思い出す。
ハイドに触れている状態なら、ハイドの指定した人間も影に入ることができる。
息を止めていないといけないデメリットはあるが、些細な事だろう。
「サクッと終わらせたいならギア上げようか?」
さらに一人蹴り飛ばしながら提案してみる。
正直こんな準備運動にもならない戦いには辟易しているところだ。
もう少し骨があるかと思っていたが期待外れだった。
『いや、ボチボチ人数削れてるのと、ウィリアムが動きそうだから戻った方がいい』
「りょかーい、適当に切り上げてそっち向かうよ」
本気出しちゃダメってストレス結構溜まるよね。
それをいつもしている真白っちは本当に凄いやつだ。
私はクラウチングスタートの体制を取る。
しょうがないから進みやすいようにルートを確保してあげる。
音もなく消えた少女の余波が弾けると共に空の天秤が光り輝く。
真白の元へつくと同時に試合終了のブザーが鳴り響いた。




