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デウス・ウルト   作者: 妖怪はらへった
第二章 天峰学園 一年生編
33/42

第30話 厄日

 ちょちょいちょいちょい、普通に考えておかしいでしょ。

 実力差ありすぎなんですけど。


 乙女は一瞬で終わった試合を振り返る。

 どう考えてもBクラスではない実力者が複数見受けられた。

 幸い生徒には今の異常が解ってないみたいだけど、このままじゃパワーバランス的にも大問題だ。

 Aクラスに空きがないわけでもないのに何故Bクラスに。


『セト先生どういうことですか!明らかにレベル2でしょ、最初と最後!』

『わざわざ教師用の秘匿回線を使うな』

『いやいや、どうするんです?こんなの扱いずらいんですけど!』

『全ては学園の総意だロ。奴ラは無意味なことはしない』

『それはそうですけど・・・』

『このクラスにおロしてまで席を開けなけレばいけない理由があったのだロう。とリあえずお前は講評をして授業を終わラせロ。話はその後だ』


 確かにここで問答していても埒があかないと頷くと、乙女は回線を切る。


「はいは~い、じゃあ皆さん講評しますよー♪」


 努めて明るく穏便に乙女は怒号を収めるのだった。





 ――――

「酷い目にあった・・・」

「いや、どう考えても真白っちが悪いでしょ」


 乙女ちゃんだけでは結局抑えきれず、セト先生の殺気を全身に浴び、軽くお説教までされてしまった。


「ウィリアムの煽りはよくて俺のはダメとかさぁ」

「いやハイドたちのは作戦だったじゃん。真白っちは試合終わった後だったし」

「嵐に正論を言われた。何か凹む」


 こんなやり取りをしながらも、廊下で俺には刺すような視線が常に降り注ぐ。

 どうやら今日の模擬戦のことが生徒間で流されているようだ。

 みんな友達多いのな。


「一気に有名人じゃん」

「勘弁してくれ。影で細々と生きていくはずだったのに」


 本当なら無言で無視とかそういうのを期待してたんだけどな。


「そういえば何であんなことしたの?」

「ん?何ていうんだろうな、端的に言えば一人の時間が欲しかったんだよな。学園でやりたいことあるし」


 ポケットからCSを見せると嵐がなるほどと頷く。


「前もさ輝夜と仲がいいからやっかみとか取り入り方を教えてくれ、みたいのが多かったから先手を打とうとしたんだよ」

「それにしてもやり方へたくそすぎでしょ」


 理由に納得したのか嵐はいつも通りケラケラと笑う。

 まあしてしまったものはしょうがない、とりあえずは俺に輝夜のことを聞きに来る奴はいないだろう。


「このあとの授業ってなんだっけか」

思創の卵(プロキシー)基礎学と選択授業選ぶんじゃなかったっけ」

「選択授業なー、嵐は何にするんだ?確か二つ選ぶんだったよな」

「私は身体強化系の研究と空力系の研究かな。結構負荷かかるからさ私の能力、対策とかいろいろ知っときたくて」

「俺は思創の卵(プロキシー)研究しか決まってないんだよな」


 父さん関連を調べたいんだよな、鷲司さんか学園長にでも相談してみるかなぁ。


「目標発見、確保ォォォォッ!」


 急な大声に振り返ると、鬼のような形相の規束が走ってきていた。

 そのまま規束は俺を羽交い絞めにしてきた。


「なッ!お前何してんだよ!Aクラスも授業あんだろうが」

「輝夜様と上代先生から連れてこいとのお達しだッ!神妙に縄につけッ!」

「何だとッ!離せッ!」


 くそ、行動が早すぎるだろ。

 授業があったのついさっきじゃねぇか。


「真白っち、嫌なことは先に終わらせるにかぎるよ」


 ぷぷぷと笑いを堪えながら嵐が手を振ってくる。


「離せ―ッ!」

「セト先生には私から言っとくねー」





 ――――

「頭も耳も足も痛い・・・」


 上代親子に1時間正座で説教された。

 規束のように頭ごなしに怒鳴るのではなく、圧をかけながら静かに怒るから尚たちが悪い。

 鷲司さん今回はガチギレだったな。

 あの人本当に怒ると笑うから余計に怖いんだよな。

 輝夜に至っては小言が姑の域を超えている。

 やれ悪目立ちをするな、やれ言動に気をつけろ、やれまじめにしろと。

 軽率だったのは俺も認めるがあそこまでくどくど言わなくてもよくないか。


 ふと廊下の時計に目をやると12時をまわっていた。


「今からは授業を受ける気分じゃないな、腹も減ったし食堂に行こう」


 いい匂いの漂ってきている食堂に俺は吸い込まれていく。


 食堂の席には学生はおろか先生たちもいなかった。

 まぁ、まだ授業中だもんな。


「あれ、あの銀髪は・・・」


 メニューを探して周りを見ていると、厨房で料理をしているコックに見覚えのある銀髪が見えた。

 向こうもこっちに気づいたらしくいそいそとこっちにやってきた。


「こら悪ガキ。今はまだ授業中だろうが」

「そういうフォルト先輩こそ授業中ですよ」

「俺は選択授業中だよ。料理研の奴らと古のレシピを復活中だ」


 なんだその授業は、古のレシピって。

 魔女が混ぜているような大きな鍋というか瓶を数人がかりで混ぜているのが見える。


「納得してないって顔だな。まぁどっちでもいいが、何してんだ?」


 俺は模擬戦からの今までの話を簡単にフォルト先輩にする。


「さすがは学園一の問題児の息子だな。普通は授業でそこまで問題起こせないだろ」

「俺もこんなことになるとは思わなかったんですよ。自由時間が欲しかっただけなのに」

「自由時間?なにするんだよ」

「俺が学園に来た理由はこのゲームを進めるためなんですよ」


 俺はフォルト先輩にCSを見せるとゲームを起動させる。


「何だこれ?『デウス・ウルト』?また胡散臭いタイトルだな」

「これ俺の父さんが作ったゲームなんですよ。現実世界とリンクしたゲームになっててこの学園に謎のカギがあるみたいで」

「へぇ、御影晶の」


 一瞬フォルト先輩の目が鋭くなる。


「ちょっと見ても?」

「いいですよって言いたいとこですが、序盤で積んでるんですよね」


 俺は世界樹で手に入れた課題を表示する。


「なるほどねぇ。回りくどいが確かに序盤も序盤だな」

「理解できるんですか!」

「これは誰かに教えてもらうもんじゃなくて自分で気づくものだよ。俺から教えることは何もないな。それに死神って」


 フォルト先輩は最後の死神の部分で軽く噴き出す。

 どうやら死神の正体にも気づいているようだ。


「そうだなぁ、死神くらいは教えてやってもいいか」

「本当ですか!」

「ただし、世の中ギブアンドテイクだ。そうだな、お前がももの研究を進めることができたらヒントをやろう」

「もも先輩の・・・ですか?」

「先に一つだけ教えてやるよ。それで正解にたどり着くならそれでもいいし。死神はこの学園の先生のあだ名だよ」


 死神って先生のあだ名なのか。

 これはいいことを教えてもらったぞ。


「フォルト先輩ありがとうございます!」

「ただし、あんまり大っぴらに聞いて回るなよ。本人このあだ名好きじゃないから何も教えてもらえないかもしれないからな」

「わかりました、気を付けます」

「話はこのへんにして、お前も古の料理を食って行けよ」


 フォルト先輩は親指をビッと厨房の方へ向けると俺の肩をしっかりつかむ。

 なんだこの力強さは、俺もそれなりに鍛えているはずなのにびくともしない。

 ふと厨房にいた料理研の人と目が合うと満面の笑みで手招きをしている。

 本能で解った、これはヤバい。


「いや、あの、やっぱり今からでも授業にいこうか――――」


 俺の意識はそこで途切れてしまっており、気づいたら食堂の外で立ち尽くしていた。

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