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デウス・ウルト   作者: 妖怪はらへった
第二章 天峰学園 一年生編
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第29話 韋駄天

仕事がようやく落ち着いてきました。週一での投稿安定を目指して頑張っていきます!

「ここでいくのか・・・いけるのか?いったーッ!!そのまま試合終了ぉぉぉぉッ!!」


 乙女ちゃんの熱い実況と大歓声が上がる。


「これ、確か授業だよな?」


 その疑問を確かめるために反対側で行われているセト先生の戦闘領域(コロッセウム)の様子を見る。

 こちらとの温度差が明確な沈黙。

 ていうか多分睨んでるよなあれ、顔見えないけど。


 身振り手振りの乙女ちゃんの講評が終わり、次の生徒が戦闘領域(コロッセウム)に入っていく。

 模擬戦もいよいよ大詰めとなり、この試合が終われば俺たちの出番だ。

 ここまでの試合を見てて、大まかに二つの戦闘スタイルに分かれているのが分かった。


 第一試合の流れと学園の評価システムを知って、『できる限り必要最低限で動き、とどめの時にだけ能力を使う』か『最初から何もさせない勢いでの力押し』というスタイルだ。

 前者の場合はよほどのことがないと、ちまちまとしたHPの削り合いで最終的にはタイムアップ。

 後者の場合は相性が良ければ数分と経たずに決着、もしくはお互い全力を出し過ぎてのドローなど。


 俺たちの対戦相手がこちらをチラ見しながら相談をしているのが見える。

 一方俺たちは・・・というか嵐はテンションMAXで試合に熱中していた。

 ウインドウを出しているところを見ると、俺たちの登録情報を見ながら作戦をたててるんだろうな。


「なあ、嵐さんや」

「どうしたんだい、白さんや」

「嵐さん随分と楽しそうだが、作戦とかはたてないのかい」

「う~ん・・・そういうのは白さんの領分じゃないかい」


 こいつ、丸投げかよ。

 キョトンとした顔しやがって、一緒に頑張るんじゃなかったのか。


「まぁ、いいや。嵐は能力どれくらい制御できるんだ?」

「制御ねぇ~。私この能力あんまり好きじゃないからそんなに使わないんだよなぁ。せいぜい三段階ってとこじゃないかな?コンロの弱・中・強みたいな」


 随分とざっくりとした説明だな。

 三段階ってことは強が100%で中が50%で弱が25%ってとこか。

 ただ俺が嵐の能力を最後に見たのがは中二の時だから、今の全力がどれくらいかは想像つかないな。

 まあ作戦って呼べるものでもないが、方向性は最初から決まってるからいいか。


「時に嵐さんや、聞きたいことがあるんだが」

「改まってなんだい、白さんや」


 俺の聞き方に違和感を感じたのか、模擬戦を見るのをやめて嵐は俺の方に身体ごと振り返る。


「女の後ろに隠れる男ってどう思う?」

「えぇ、何その質問。普通にカッコ悪い」

「さらにその後ろでドヤっていたら?」

「ダサいし何なら会話もしたくないかな」


 なるほどな、嵐をあまり基準にし過ぎるのもあれだが俺よりは周りを気にするタイプだから間違いないだろう。


「仮にそんな奴と戦って勝っても自慢できないよな」

「まあ自慢にはならないと思うけど・・・まさか真白っち」


 俺は嵐に満面の笑みを浮かべる。


「いや、それは絶対にやめた方がいいと思うけど。真白っちに関しては姫とかしげとかいろいろあるじゃん」

「だからこそやるんだよ」

「どうだろうなぁ、私は絶対やらない方がいいと思うとだけいっとくよ。ちゃんと止めたからね。後のことはどうなっても知らないからね」


 そうこうしているうちに模擬戦が終わり、いよいよ俺たちの出番がやってきた。





 ――――

「ほんで、作戦は?私は何すればいいの?」

「作戦って程ではないぞ。俺が合図したら『韋駄天』発動させて中くらいで蹴る、以上」

「なるほどね、シンプルでいいね」


 正直中くらいでも過剰かなと思うけどな。

 シールド貫通とかしないよな。


「どれくらいで仕掛けるの?」

「そりゃもちろん・・・」


 乙女ちゃんが手を上げて開始の準備をする。


「それでは最終戦、開始ッ!!」

「スタートからだよ!リフレクトミラー展開!」


 乙女ちゃんが手を振り下ろすと同時に顔程の鏡を俺の頭上に等間隔で5枚出現させる。


「悪いけど何もさせねぇよ。『反射(リフレクト)』光を対象A地点に」


 考える暇を与えない眩い閃光が対戦相手に降り注ぐ。


「ぐッ、何だこの光はッ!」

「何も見えないッ!」


 顔を覆うように腕で光をかばうのを確認する。


「よし、今だ嵐!」

「はいは~い、(はし)れ『韋駄天』」


 クラウチングスタートの体制で待っていた嵐の足元が一瞬光ると、いつもの運動靴ではなく羽の生えたブーツに変わっていく。


 その後はまさに一瞬の出来事だった。

 地面を蹴った時の衝撃波に瞬きをした瞬間、100メートルは離れていたであろう相手の所に潜り込み、蹴りの構えで止まっていた。


「ごめんね」


 そのまま振り切ると相手二人は白い光に包まれた。


「いや、強すぎだろ。直接蹴られた方はわかるが後ろの奴は衝撃波でやられたのか?」


 思っていた以上にヤバいな。

 そういやあんまり加減は得意じゃないって言ってたし、予想よりオーバーしてしまったのかもな。

 観戦していた生徒どころか乙女ちゃんも固まってしまっている。


「俺たちの勝ちだな。どうだ俺たちの実力は!!」


 渾身のドヤ顔でガッツポーズを天高く掲げる。

 予想に反してリアクションが全く返ってこない。


「俺たちの実力差に声も出ないか、仕方ないな」


 やれやれと首を振りながら生徒たちの方を見る。


「ふざけんなッ!お前は目くらまししてただけだろ!」


 ようやく帰ってきた反応は対戦相手からだった。


「いいや、間違ってないね。チームの司令塔は俺だ。つまりチームの勝利を導いたのは俺。まあ、戦う前からこうなることは目に見えてたけどな」


 この一言に黙っていた周りの生徒も野次を飛ばし始めた。

 何か思っていた反応と少し違うがまあいいか。

 これでただのイキった雑魚に・・・ん?なんだ制御装具(インペリウム)からすごい音が鳴ってるんだが。


「早く出てこいクソ野郎!俺たちが次は相手してやるよ!」

「女子を前に出すなんてサイテーですわ!私たちが何たるかを教えて差し上げましてよ!」

「そういえばアイツ、上代さんの後ろにもよく隠れているよな?」


 なぜだ、対戦申し込みが殺到してるんだが。

 こんな雑魚モブを倒してもただの弱い者いじめだろ。


「だからいったじゃん真白っち~。ただでさえすでに悪目立ちしてたのに。普通に戦った方がよかったんじゃない?」

「くッ、こんなはずでは・・・」

「これから多分大変だよ~。とりあえず姫としげと姫パパには怒られるだろうね。謀略的なのは真白っち向いてないから、次からはやめとこうね」


 なぜだ、俺の快適学園生活の予定が・・・。





 ――――

「おいハイド、あれお前なら対処できたか?」


 先の試合を思い返しながらウィリアムはハイドに問う。

 太ももを人差し指で叩きながら一点を見つめているウィリアムを見て、従僕は主の意図を組む。

 何度シミュレートしても恐らく明確な勝利の姿が描けなかったのだろう。


「嵐さんの方はスピードこそ脅威ですが対処としては先ほどの方とそう変わらないでしょう。ただ真白のあれは怖いですね」

「怖い?」

「みなさん嵐さんの方に目が行きがちですが、あのデタラメな鏡は何をしてくるのかわかりませんね。向きも変えずに光だけを100%一方向に反射なんて聞いたことも見たこともないですよ」


 懸念箇所はどうやらあっていたようだ。

 ウィリアムの指が止まり、ある程度の結論にたどり着けたのだろう。

 御影真白は・・・いや、狗上嵐もか。あの二人は次のステップへと行っているのかもしれないな。


「要注意だな。まぁ手を抜いていたことはわかるが、やはり奴は測りかねる」


 力の一端を目にしてもウィリアムが測れない、その事実がより不気味さを際立たせる。

 ハイドとしてはどういう人物なのかさらに興味がわいて仕方がない。


「仲良くしておいた方がいいでしょうね」

「奴の力は正確に知っておくべきだな。さすがは『御影の鏡』といったところか」

「確か全てを映し出し返す鏡でしたか。まだそんな伝承的な力は発揮してないと思いますが」


 伝承自体が日本由来なのであまり詳しくはないが、確かそんな話だったはずだ。

 光を物理法則無視での反射は驚いたが、まだそれだけだ。


「俺が測れない、この事実だけで十分化け物だよ」

「ああ、確かに」


 皮肉めいて笑うウィリアムの言葉にハイドは納得する。

 すっかり慣れてしまったが、ウィリアムも十分化け物だった。


「楽しい学園生活になりそうですね」

「少なくとも退屈はしなくてすみそうだ」


 ウィリアムがこんなに楽しそうに笑うのはいつぶりだろうか。

 それだけでこの学園に来たかいがあったなと、ウィリアムに見えないようハイドは優しく微笑んだ。

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