第27話 天秤
1か月ぶりの更新となってしまい、すみません。
今週からもとのペースで投稿できそうです!
「ようやくお前たちを蹂躙する許可が下りたッ!俺たちの力の前に平伏すがいいッ!」
「どれだけ自分に酔いしれているかは知らんがさっさと始めるぞ、小物A・B」
「「誰が小物だッ!」」
的確に煽り倒していくとは、ウィリアム容赦ねぇな。
相手の二人顔真っ赤にしてるじゃねぇか。
こういう煽りとかって先生たち的にはどうなんだろうか。
もっと紳士的にとか思ったりするのかな。
少し離れた位置にいる先生たちを見るが特に変わった様子はない。
こういう煽りも戦術の一つとしてみなしてるってことなのか。
乙女ちゃんに至っては興奮気味に前のめりで見ているな。
何となく不良モノの漫画とか好きそうな気がする。
セト先生はあごに手を当てるような仕草で黙って見つめていた。
「最低でも1回の能力発動か、面倒なルールをつけられたものだ。その一回で終わってしまうではないか」
「そうですね、坊の力は最後にしてもらえると助かりますね」
「俺のはどのみち準備に時間がかかる。その間に披露してやればいいだろうが」
「じゃあ一人ずつ相手しますか。どちらがいいですか?」
ハイドにそう問われるなりウィリアムは相手を交互に見定める。
「小物Aは俺が相手するのがいいだろう、お前はBだ」
「了解しました」
「何をごちゃごちゃと――――」
「静まれ!これより『開廷』する」
突如ウィリアムの前に神々しく輝く金色の杖状の天秤が現れる。
「今からこの場は俺が支配する。これはお前たちの罪を測る天秤だ。この場での罪は俺に対する敵対行動だ」
そう言い終えると天秤は宙を舞い、戦闘領域の中心から見下ろす場所で止まる。
あっけにとられていた小物Aは我に返り、手をウィリアムへと向ける。
「いいのか?言ったぞ、俺への敵対行為は罪だと」
「何を訳のわからないことを!『エアーボム』」
小物Aがかざす手が一瞬歪むと、その歪みはウィリアムの方へと勢いよく飛んでいく。
名前から察するに空気そのものか風に類するものを操る力か。
「爆ぜろッ!」
ウィリアムの目の前で歪みが凝縮され、ボンっと領域外の俺達にまで伝わる音の衝撃が飛んでくる。
それを合図と言わんばかりに睨みあっていたハイドと小物Bが同時に駆けだした。
「いいのか?お友達が吹き飛んでるぜ」
「お友達ではありませんよ、主です。それに吹き飛んでもいませんし」
ハイドの言う通りウィリアムは涼しい顔したまま立っていた。
戦闘領域外に設置されている大型ウィンドウに目を向けるが、ウィリアムのHPにも変動がない。
あれだけの衝撃波を前にダメージがないってどういうことだ。
突如カタンと上空で音がする。
ついさっきまでは平衡を保っていた天秤が左に傾いていた。
「ちッ、外したのか。まあいい『紫電』」
小物Bの体が一瞬紫に輝くと、気づいたときにはハイドの後ろを取っていた。
そのまま右手を振り上げて淡く紫に瞬かせる。
「お前をさっさと外に出して加勢に行くまでだ」
「そう言わずに少し遊びましょう『隠者の影』」
小物Bの拳は空を切り、戦闘領域内からハイドの姿が消えた。
「くそッ、ドコに消えやがった」
「後ろ、ですよ」
ぬるりと影から現れたハイドが手刀を振り下ろす。
「くらうかよッ!」
バチチッと足を紫電に瞬かせると高速でその場を離れる小物B。
空を切った手刀を構え直すハイド。
「貴方の能力は大体わかりました。動くたびに瞬く紫電、全身ではなく部分的な発動、筋肉や神経に対する電気信号の加速及び活性ですか」
ハイドが冷静に分析をしていく。
小物Bが急に消えたように見えたのは反射神経を超えた緩急に目が追い付かなかったのか。
「わかったところでお前が俺に触れないのは変わらないぜ」
「そうでもないですよ。ただ目で追いづらいだけですから」
ハイドがゆっくりと影に沈んでいく。
『それに、その能力デメリットも大きそうですね。そのデメリットまで待ってあげる気もないですが』
どこからかハイドの声が響く。
小物Bも警戒しながら辺りを見回す。
静まり返るハイドたちとは対照的にウィリアムたちの所では怒声と爆音が鳴り響く。
「くそがッ俺の攻撃はこんなもんじゃねぇッ!」
同時にいくつもの圧縮された空気を生み出しては射出する。
避けるそぶりもなく、ウィリアムは涼しい顔でハイドの様子を窺っていた。
「まだそのそよ風を俺に飛ばすのか?小物Bの加勢に行ってもいいんだぞ」
「くそッ、どうなってやがる。当たる直前でかき消えてやがる」
攻撃の手を緩めずに小物Aはずっと『エアーボム』を打ち続けているが、ウィリアムにダメージを与えることはできていなかった。
天秤の様子を見ると完全に左側に傾ききっている。
「ハイド、手に余るか?」
『いえいえ、お待たせしてしまい申し訳ありません。すぐに終わらせます』
ハイドの返事にフンと鼻を鳴らすと、ウィリアムは手を掲げる。
「罪人よ覚悟はいいか?審判の時は近いぞ」
「誰が罪人だッ!」
「この場においてお前以外におらぬだろうが。ハイド、10秒だけ待ってやる」
ウィリアムの掲げた手に向かって天秤がゆっくりと降りてくる。
「何でダメージが通らないんだッ!」
「短慮で傲慢で想像力すら欠けている。情状酌量の余地もないな。せめて華々しく散らしてやろう」
ウィリアムは天秤をしっかりとつかむと小物Bの方に目を向ける。
『そろそろ終わらせないと怒られちゃいますね』
小物Bの影が波を打つと、ハイドがゆっくりと姿を現した。
それと同時に小物Bの手足が紫電に瞬く。
「そう来ると思ったぜッ!」
超高速のカウンター、裏拳がハイドの顔を打つ――――はずだった。
その拳はハイドの顔を貫通して通り抜ける。
「なッ、手応えがないだと――――」
「終わりですよ」
「ぐがッ」
小物Bが戦闘領域から弾き飛ばされてきた。
「なになに?どゆこと?ハイドが2人・・・3人?」
「うわぁ、えげつな」
小物Bが驚いている間に死角からハイドが二人現れ、脇や鳩尾などの急所を攻撃。
最後に顔を貫かれていたハイドが貫手で首を突いていた。
模擬戦じゃなかったら死んでるぞ。
「貴方がいかに弱いか理解できましたか?坊、時間稼ぎありがとうございました」
「フン、遊び過ぎだ馬鹿者め」
ニヤリと笑うとウィリアムの持っていた天秤が出てきた時よりも光を放つ。
「懺悔の時間は終わりだ。判決を下す」
杖状の天秤の先端からから光が剣のように鋭く立ち昇る。
傾いた左の皿から光の玉が溢れ出し、幻想的な光の中でウィリアムは天秤を振り下ろした。
「『裁きの剣』」
溢れ出した光の玉が剣に変わるとともに小物Aに降り注ぐ。
「なっ――――」
声を上げることすら許されずに小物Aは白い光と共に戦闘領域から姿を消した。




