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デウス・ウルト   作者: 妖怪はらへった
第二章 天峰学園 一年生編
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第25話 ペア

 昨日と同じく俺たちはウィリアムとハイドの隣に座っている。

 当然嵐とウィリアムが端っこだ。

 ハイドと目で会話をしながら待っているとセト先生たちが入ってきた。


「本日の授業を開始すル」


 おお、大分発音がよくなっている。

 昨日までの機械っぽさが全然ないな。


「まずはお前たちの視野を広げル所かラ始めよう。世界とは多面体であル、この言葉の意味が解ルか?」


 何が来るのかと思ったら、まさかの思想の卵(プロキシー)概論の基礎からか。

『世界とは多面体である』それは様々な意思が織り成し合うこの世界は、いろんな視点で構成されていることを意味する。

 例えるなら俺が見ている世界と輝夜が見ている世界は違う。

 今日までの生き方、人生観、価値観などで同じモノを見ていても感じかたは違う。

 当たり前の話だが、自分だけの価値観では世界は構成されていない。

 誰かにとってすごく価値のあるお宝も、誰かにとってはガラクタでしかない。

 世界とは様々な視線や思いが交錯しているため、多面体であると言われている。


「何を今更、と言った顔をしていルな。お前達が多面体であルと理解できていないのは昨日のことで理解できル」


 セト先生は首をゆっくり横に振りながら俺たち全員を見る。


「あの場で立ち上がったものは誰一人として自分たちの敗北を疑わなかった、違うか?見ていたものは私の心配をしていた、違うか?相手が自分たちよりも格上であルと微塵も思わなかったのだロう?」


 返す言葉がなさ過ぎて俺を含めてみんな俯いてしまう。

 確かにあの時あんな結果になるとは、なりうるとは微塵も考えていなかった。


「そレこそが己の主観のみ、一面でしか世界を見レていない証左だ。こレはお前たちの年齢なラそレも仕方がない事ではあルが国や育ってきた環境にも大きく関わル」


 セト先生は人差し指を立てるとそれをゆっくり下に向ける。


「何故この学園、この国が最も思創の卵(プロキシー)の研究機関として最高峰と言わレていルか解ルか?」


 この国が最高峰と言われる理由か、確かに深く考えたことは無かったな。

 言われてみれば、こういう専門機関みたいなのは勝手にアメリカとか大きな国が一番スゴイってイメージがあるな。

 何でこの学園で、何故日本何だろうか。


「簡単に言ってしまえばこの国がどの国よリも異常で異質だかラだ」


 おお、いきなりの日本ディスとは。


「すべての宗教、思想、戦略、人種を反発すルことなく受け入レ、混ぜ合わせ、新しいものを創リ出す独創性の異質さがどこよリも優れているからだ」


 確かに、日本人の受け入れ態勢はハンパないな。

 どの国の神話も宗教も歴史も独自解釈で受け入れて、元々の意味すら変えてしまったりするもんな。

 なんなら人や神様関係なく物なんかも擬人化して女の子にしちゃうしまつ。

 他所の国からしたらヤバい国だな。


「宗教に傾倒すルことや選民性が悪いとは言わない。時にはそういった矜持も必要となル。しかし研究や分析といった分類ではそれが仇となル。一つのことに傾倒していルとそれだけ視野が狭くなル。自分の知っていル世界だけで世界を構成し、知ラない世界はないものとし見ないふリをすル。その結果が昨日だ」


 セト先生はゆっくりと俺たち一人ひとりを見る。


「お前たちに足リないのは想像力と多様性だ。自分の殻に閉じこもリ、自分の持っている物差しで測リ、あまつさえ自分の力は測リきレない。他者を理解すル為の確固たル己が足リない。世界を想像し創造すルためにもっと自分を知リ、他を知リ、考え抜け。何を知った気でいルかはわかラないが世界は広く大きく理解できないことを理解しロ」

「ということで~、今からペアを組んでもらいます♪」


 今まで黙って話を聞いていた乙女ちゃんが手を叩きながら注目を集める。

 こころなしかセト先生を睨んでいる気がしなくもないな。


「自分を知れ、何てお堅く言われてもわからないよね?自分一人だとわからないよね?そこでパートナーを決めてもらいます!昔馴染みでもいいですし、思い切って全く知らない人でもいい♪男女のペアなんて青春だよね♪」


 真面目な話から一気に俗っぽくなったな。

 乙女ちゃんが一人楽しそうにペアについて身振り手振り力強く説明してくれている。

 青春やペアについてやたら熱く語っているが、学生時代に何かあったんだろうか。


「ということでちゃちゃっとペアを組んじゃいましょう!別に一度組んだら解消できないわけじゃないし、どうしても折り合いがつかなければ別の人と組んでもいいから♪まずはペアになってお互いを見て、違う考え方ってやつを肌で感じてみましょ♪」


 なるほど、他人に自分を見てもらい客観的にお互いを判断してもらうってことか。

 そういうことなら、気兼ねなく文句言い合える奴がいいな。


「嵐――――」

「真白っち――――」


 俺と嵐は同時にお互いを見合う。

 考えることは一緒か。


「組もうぜ、嵐」

「モチのロンっしょ!」


 二ッと笑うと熱く握手をする俺たち。

 新しい視点を入れるべきかもしれないが、一緒に行動するなら楽しくなれるやつがいいよな。


「フンッ、やはりお前たちで組むのか。遊びじゃないんだぞ」


 ウィリアムが身を乗り出しながら圧を飛ばしてくる。


「はぁ?あんたたちもどうせ組むんでしょ?ハイドはともかくあんたは他の子と仲良くできそうもないもんね」

「なんだとッ!」

「なによ!」

「まあまあ坊も嵐さんも落ち着いて、あんまり騒ぐとセト先生がこちらを見ていますよ」


 顔の見えないローブの奥からウィリアムの比ではない圧が飛んでくる。

 ペアを決めるために雑談が増えているが、まだ授業中だもんな。


 流石に二人も感じ取れたようでおとなしく席に座り直す。


「はいはいは~い、大体決まったかな?決めきれないシャイな子は先生たちが決めちゃうから、とりあえず行こっか」

「え?行くってどこへ」

「体育館だよ♪頭でわからないことは体に聞けって言うじゃない?自分の力がどの程度でどれぐらいの強さか知りたいじゃない?」


 まさか、この展開は・・・。


「これからB+クラスの格付けを行います!あくまで戦闘面のね、生産型(クリエイター)でペア組んだ子たちは別でやってもらうからとりあえず体育館へレッツらGO☆」


 やっぱりそうなるよなぁ。

 こういうのがあるなら教えてくれよ、鷲司さん。


「何かワクワクしてきたね、真白っち!」

「貴様たちは俺たちがわからせてやる!」


 何でそんなに張り切ってるの君達。

 ていうかウィリアムはどう見ても戦闘タイプじゃ無く見えるんだが。


 ぎこちない笑顔のハイドと目が合い頷かれる。

 まぁ、お互い頑張ろうぜ。

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