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デウス・ウルト   作者: 妖怪はらへった
第二章 天峰学園 一年生編
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第24話 喧騒

「くそッ、結局半分以上八つ当たりだったし」


 悪態をつきながら俺は職員室から出る。

 窓の外を見るとすっかり日が暮れていた。


「輝夜達まだいる・・・だろうな」


 散々謂れのない説教を受けた後だが、この後も恐らく同じような展開だろうな。


「そういう所は親子なんだよな、はぁ」


 しょうがない、腹をくくっていきますか。

 気乗りしない足を動かして俺は校門を目指す。

 願わくばみんな帰ってるといいんだが。


「遅いッ!輝夜様がどれ程待ったと思っているんだ貴様はッ!」


 そういえば規束もいたな。

 当然俺が一番最後でみんな待っていてくれたらしい。

 輝夜と嵐は奥で楽しそうに話し込んでいた。


「遅くなって悪かったよ。誰かさんのおかげで話がだいぶ長くなったんだよ」

「誰のことを言っている!そもそも貴様は――――」


 規束の長ったらしい嫌味は右から左に受け流す。

 コイツのおかげか長話を聞き流すスキルが磨かれているなと思う。

 さっきも娘を過剰に心配する親の気持ちとかどうでもいい話聞かされてたしな。


「しげーその辺にして帰ろうよ。私おなか空いたんだけどー」

「そうね、そろそろ移動しましょ。真白遅れた言い訳は後でたっぷり聞かせてもらいますから」


 いや、半分以上お前のせいだからな。

 かといって正直に言うと、鷲司さんに輝夜からクレームが入って、また俺の方に3倍・・・いや10倍返しで来るな。

 何か上手い言い訳考えておこう。


「そうそう真白っち、部活何にするか決めたの?グラウンドの方来てなかったみたいだけど?」

「あーグラウンドは策略というかなんというか、まあ研究会には入ったぞ」

「どこにしたのよ、真白にしては決断早いじゃない」

「いつもギリギリまでグダってるイメージあるよね」


 嵐が茶化すようにニシシと笑う。

 くそ、こいつら好き勝手言いやがって。


「自由研究会ってとこだよ」

「なんだその胡散臭そうな研究会は」


 胡散臭いか、間違いないな。

 あの廊下の人形からヤバい空気かもしてるうえに入り口が秘密基地だもんな。


「何を研究するも自由、みたいなとこだよ。とりあえず何していいかもわからないから先輩の手伝いからだけどな」

「惰性で時間を無駄に過ごしそうだな」

「教頭先生みたいなことを。まあ無駄にはしねえよ。俺にもこの学園でやりたいことくらいはあるからな」

「ふん、精進することだな」


 こいつ基本的には真面目君だからウィリアムと気が合いそうだよな。

 いや、規束とウィリアムが一緒とかめんどくさいな。


「そうそう真白っち、じゅん先輩やっばいよ!」


 嵐が俺の背中に飛びつきながら興奮気味に話しかけてくる。

 背中に当たる女らしい部分はスルーだ。

 輝夜がすごい勢いでこっち見てるからな。


「めっちゃ増えるの!あれどんな能力なんだろう」

「ああ、じゅん先輩のあれは確かにヤバいよな」

「あれ?真白っちグラウンドいなかったよね?」

「研究棟の方でも増えてたんだよ、あの先輩」


 俺と嵐はそれぞれが見たじゅん先輩について語る。

 研究棟とグラウンド、分身した時間帯的には多分大体同じくらい。

 それを考えるとあの人の効果範囲ヤバいな。

 最初の説明で学園内で声を上げればと言ってたが、そういう事なんだろうか。


「運動部の先輩たちも面白い人ばっかでさ、私もじゅん先輩と踊ってたよ」


 嵐のコミュ力の高さは相変わらずだな。

 ほぼ初対面の相手と踊るとかコミュ力の高さだけは見習うべきなんだろうか。


「私は弓道場にいたから見れなかったんだよね。外に出ようとしたらお父さんに止められたし」


 輝夜が少し残念そうにつぶやく。


「お笑いとか結構好きだもんな、輝夜」

「お父さんはあんまり好きじゃないからね、こうバカ騒ぎみたいなの」

「ここは私がネタを提供を、いやしかし掛け合いのようなものをお求めなら漫才を、そうなると・・・クッ、背に腹は代えられんか。真白――――」

「やらねえよッ!」

「あはははは、いやいつもしっかりやってるよ」

「そうだよね。だいたい漫才してるよね」


 規束と漫才とか失敬な。

 俺は普通に返してるだけだっての。


 バカ話しながら俺たちは寮へと帰る。

 いい感じに寮へと別れたが、部屋に戻った後しっかり輝夜から長電話がかかってきた。





 ――――

「ふぁああ、なんだかんだ早起きしちまうな」


 深夜にまで及ぶ長電話だったから、今日はゆっくり寝てようと思ったが目が覚めてしまった。

 やはり枕が違うと寝つきが違うのか、大量に持ってきた目覚まし時計が活躍するのはまだ先らしい。


 俺は昨日と同じようにランニングに出る。


「やっぱ朝のこの空気はいいな。余計なことを考えずにいられる」


 朝の澄んだ空気を味わいつつぼんやりと走る。

 何も考えなくていいって、結構幸せな事なんじゃないか?


 しばらく走っていると後ろから追いかけてくる影があった。


「おはようございます、真白」

「おうハイド、おはよ。今日も会える気はしてたぜ」

「私もです。ゆっくりお話しできるのはこの時間くらいでしょうから」

「確かになー」


 あいつ他に友達いなさそうだもんな。

 ウィリアムの事だから普通に嫉妬しそうだ。


「ハイドは研究会には入れたのか?大きな研究会はテストがあったりするって聞いたからさ」

「ええ、問題なく。昨日は入会テストだけだったので本格的な活動は来週からですかね」

「そうなのか?」

「今週いっぱいは勧誘会ですので活動はないそうです。とりあえず坊が決まるまでお付き合いしようかと」


 ウィリアムは決まってないのか。

 お供っていうのもあるが、ハイドめちゃくちゃいいやつだよな。

 嫌な顔一つせずにあいつに付き合ってやるって。


「なんでハイドは従者やってるんだ?普通に学者としてもやっていけそうなのに」


 踏み込みすぎなのはわかってるんだが、どうしても気なってしまった。

 俺の質問にハイドは少し難しい顔をしながら考える。


「そうですね・・・、坊の隣が私の全てだからですかね。こればっかりは細かくお伝えすることはできませんけど」


 誰かの隣に立つことが自分の全てか、そう言い切れるのが凄いな。

 当たり前だけど俺の知らないハイドたちの歴史があって今があるんだよな。


「悪いな、変なこと聞いて」

「いえ、大丈夫ですよ。それに真白も似たようなものでしょ?主席の上代輝夜さんと幼馴染なんですよね。いろいろと噂になっていますよ」

「聞きたくないし想像できるな、その噂」

「実際に見聞きすると、大体の噂は当てになりませんね」


 クスクスと笑いながらハイドは俺を見る。

 どうせ金魚の糞とか分不相応とかおこぼれを狙ってるとかそういうのだろう。

 変わってくれる奴がいるなら変わってほしいね。

 お前らの思っている100倍は面倒くさいからな、多分。


「それでは、私はここらへんで」

「おう、またあとでな」


 寮が近づくとハイドは駆け足で先に行く。

 俺は気持ちペースを落として、ハイドが寮に戻るのを見届ける。

 空気をちゃんと読む、これ大事。

 これ以上人間関係でもめたくはないからな。


「さて、今日の授業はどんな感じかな」


 緊張感があるのはいいが殺意こもった授業は勘弁願いたいね。





 ――――

「はぁあああ、うざかった」

「お疲れ、真白っち。何かすごかったね」


 大量の人込みを抜け、自分たちの教室のある廊下まで抜けると、ようやく一息をつく。

 嵐も背伸びをしながら一息をつく。

 俺たちは互いに見合わせるとため息をついて先ほどのやり取りを思い出す。



 今日もいつも通り寮門の前で待ち合わせ、4人で学園に向かっていたが、学園の門を超えた先には人だかりができていた。

 そいつらの目を見た瞬間に誰を待っていたのかはすぐに分かったけどな。

 あのうっとりとしたような羨望の眼差し、その後に飛んでくる侮蔑の視線、昔からよく感じていたやつだ。

 完全実力主義の学園だからな、力をもってそうなやつと仲良くなりたいのはわかるが、なんだこの人数。


「おい輝夜、多分これお前待ちだろ?入学して二日しかたってないがお前何した」

「いつも私が何かをしてるみたいな言い方やめてよね。・・・多分正式な通達があったんじゃないかな」

「通達?」

「この学園、年度初めに成績優秀者を勧誘するシステムがあって、新入生である一年生は首席が勧誘されるんだけど・・・」

「勧誘って・・・お前まさか生徒会か!」


 なるほど、そりゃこうもなるな。

 実質生徒の中ではトップクラスのエリート集団、場合によっては先生よりも影響力のある生徒が多数在籍しているらしい。

 しかも今代の生徒会長はあの人だからな。


「勧誘を受けたのか」

「まあ、お父さんとも話したけど勉強になることも多いだろうって」


 輝夜もこんなに早く影響が出るとは思っていなかったらしく、申し訳なさそうな顔をしている。


「道を開けよ貴様らッ!往来の邪魔だッ!」


 輝夜の顔を見て規束が怒鳴り声をあげる。

 コイツのこういう所は素直に感心してしまう。


 規束の声にビックリして前を塞いでいた生徒たちが左右に分かれた。

 俺たちはそれに合わせて前へと進むが、生徒たちは横にぴったりとついてきて挨拶や自己紹介を始める。

 誰もが輝夜に取り入ろうと必死な感じがする。

 念のため俺と規束で輝夜を挟み、後ろを嵐がイヤホンをして歩いている。

 輝夜のファンに囲まれることはよくあるから、自然とこのフォーメーションが身についてしまった。


「あれが腰巾着か」

「何我が物顔で隣歩いてんだよ」

「名前呼び捨てとか何様だよ」


 ちょいちょい俺に熱い視線が注がれてるな。

 まあ、いつものことだから無視するが。

 どうせしばらくしたら魔王が来るだろうからそれまでの辛抱だ。


 つくづく思うが人間って群れているところに群がる習性あるよな。

 騒ぎが気になってどんどん集まってくる。


「ん?あいつは」

「あ、真白も気が付いた?あのおかっぱの子、円君だよね」


 木の陰からひっそりと見ているおかっぱ君を見つけた。

 輝夜と目が合ってビクッとしているな。

 おかっぱ君に向かって手を振ろうとする輝夜の手をつかんで止める。


「今はやめとけ、おかっぱ君に群がるぞ」

「そっか、そうだよね。ありがとう真白」


 おかっぱ君を巻き込まないために掴んだことを、手を繋いだと周りが騒ぎ始める。

 いよいよ収集つかなくなってきたぞ。


「何をしている」


 地の底から這いあがってきたかのような声に周りの空気が一瞬で凍り付いた。

 ようやく魔王様の降臨か。


「他の生徒や職員の邪魔だ。特に用のないものは去れ。異論があるものは?」


 一瞥するだけで生徒が散っていく。

 流石は魔王だな、目力がやばい。


「御影真白、放課後話がある」

「今回俺関係なくないですか」

「問題あるか」

「いえ、伺わせていただきます上代先生」


 くそ、どうしてこうなった。

 この学園に入ってから理不尽な呼び出し多くないか。


「輝夜様、私たちは上代先生について行きましょう。それでもよろしいでしょうか先生」

「問題ない。むしろ今日は私がつかねばまた群がるだろう」

「そうだね、じゃあ先に行くね真白、嵐」


 軽く手を振って輝夜達は先に校舎へと向かう。

 この時俺たちもついて行けばよかったと後で後悔した。



「まさかあの後やっかみで追いかけまわされるとは思わなかったよねー」

「付き合わせて悪かったな、嵐」

「別にいいよ、いつものことだし」

「本当にお前がいてくれてよかったよ。いつも助かってる」

「もっと私に感謝して、貢物をもってきてもいいんだよ」


 気さくにいつものように笑う嵐。

 面倒くさい後処理をいつも嫌な顔せずに付き合ってくれる。

 ハイドや嵐みたいないいやつであふれてたらなぁと心底思うな。


「さてと、今日の授業は何かなー。乙女ちゃんは授業しないのかなー」

「どうだろうな」


 授業を想像しながら俺たちは教室の中へと向かった。

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