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デウス・ウルト   作者: 妖怪はらへった
第二章 天峰学園 一年生編
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幕間2 それぞれの勧誘会・騒

「あー思い出したらムカムカしてきたし」


 自慢のポニーテールを揺らしながら私は颯爽と駆け抜ける。

 本当にあの金髪お坊ちゃんムカつくなぁ。

 癇に障るというか、自分の物差しで人を分けるやつ大っ嫌いなんだよね。


 あっという間にグラウンドまで走り抜けてしまった。

 このまま入部しに行ってもいいけど、モヤモヤしたまま行きたくないな。

 それに入学式で見知った顔がいたのを見つけちゃったんだよね。


「早めに行って絡まれるのもヤだし、学園一周してから行こうかなー」


 誰に言うでもない大きな独り言を呟くと、私は勢いよく駆けだした。


 私は走るのが好きだ。

 流れていく景色が好き、モヤつく頭がすっきりするのが好き、開けた景色に世界に一人きりのような空気が好き。


 群れたりグループっていうのが何となく苦手だ。

 価値観押し付けられるっていうか、同調するのもなんか違うし。

 馴染める奴は楽しいんだろうけど、馴染めない奴は馴染めないことが悪いことのような空気が苦手だ。

 そういう空気は見るのもされるのも気分が悪い。


「昔はどうして人は群れるんだ?とか言ってたなー」


 不意に自分で掘り起こしてしまった黒歴史で恥ずかしくなってきた。

 それを振り切るように加速する。

 徐々に徐々にペースを上げていく。

 耳の横に心臓があるみたい、自分の鼓動しか聞こえない。


「ああ、最ッ高にハイだね」


 能力を使わずにドンドンペースを上げる。

 正直私は自分の能力があまり好きじゃない。

 何でこんな能力にしてしまったんだろうと後悔したことがあるくらいだ。

 どんなレースに出ても勝てたのはこの能力のおかげだと言われる。

 実際に使ったところを見たこともないのに、私の勝利にはこの能力がちらつく。

 こんなことを思い出すのは入学式にあの子を見かけたからかな。


「あの子も入部するだろうなぁ。うーん」


 前ほど私もツンケンしなくなったつもりだけど、あの子の前ではどうだろう?


 もうすぐ学園を1周してしまう。

 このままもう一周に行きたいところだけど、そろそろ行きますか。

 スタート地点のグラウンド前で足を止めて息を整える。


 呼吸を整えていると何やらザワザワしている。

 出発前より騒がしいグラウンド中央に目を向けた。


「何・・・あれ。ボディービルの大会でもやってんの?」


 筋骨隆々な漢たちが思い思いのポーズと笑顔を振りまいている。

 いや、本当にナニコレ。

 誰かに説明してもらいたいんだけど。

 状況が謎すぎるし、陸上部の部室向かえないし、どうするか?



 ――大きな声で高らかに呼ぶように――



 そう言えば困ったら助けてくれるんだっけ?

 こういう事でも呼んでいいのかわかんないけど、本人が呼べって言ってたしいいよね?


「じゅーーーんせんぱーーーい!!」

「ナイスな情熱(パッション)だね!」

「!!!!!」


 ほぼほぼ叫ぶと同時に現れたじゅん先輩。


 来るの早くない?

 マジびっくりしたんだけど。


「君の情熱(パッション)は過去一かもしれないね。ところでどうしたんだい?」

「ありがとうございます?陸上部の部室に行きたいんですけどあれって何してるんですか?」


 私はポーズを取る集団を指さしてじゅん先輩に質問をする。


「ああ、毎年恒例の運動部の魂の戦いさ」

「なにそれ・・・」

「そうだね、簡単に言うなら彼らから迸る情熱(パッション)でどれだけの部員を確保できるかの勝負、と言ったところかな」

「毎年恒例なんですか?」

「毎年恒例さ」


 いや、どんな学園だよ。

 というかあそこでポーズ取ってる人たち1~2歳しか変わらないんだ。

 体育の先生とかかなと思ってしまった。


「ちなみに中央にいる、岩のような頑強さを持っていながらガゼルのようなしなやかさを持つ大腿四頭筋の彼が陸上部の部長だよ」

「太ももパないですね」

「さてさて、確かに人が集まりすぎているきらいがあるね」


 そう言うなりじゅん先輩はシャツの前ボタンを外しながら前へ進む。

 すごいヤバい空気しか感じない。


「君達ィ、私が来ましたよ!」


 ポーズを取りながら澄んだ声でじゅん先輩が中央の集団に声をかける。


「あ、あれは・・・」

「じゅん・・・先輩だ・・・」

「まじか・・・」


「「「じゅんセンパーーイ、待ってましたよー!!!!」」」


 大歓声で迎え入れられるじゅん先輩、何だろう私のセンサーが反応している。

 ワクワクが止まらないんだが。


「待たせてしまっていたようで申し訳ないな」

「涼矢、今年は負けないぜ!」

「今日こそお前を倒す」

「雪辱戦だー!」


 周りの観客だけでなく中央にいるナイスガイたちもじゅん先輩に熱い視線を送る。

 モーゼのように割れた生徒たちの間を悠々と通り抜けると、壇上に上がると同時にシャツを天高く投げる。


「こと目立つことに関して、私を超えるものはいないと改めて刻みたまえ!」


 投げたシャツに一瞬隠れ、再び姿を現した先にはじゅん先輩が沢山いた。


「さあ、ここからが本番さ!」

「あはははははははは、ナニコレ!カオスすぎるんだけど!」


 ステージ、ギャラリー至る所に現れたじゅん先輩。

 ステージでは複数のじゅん先輩がラインダンスを踊っており、ギャラリーでは一人一人の解説をしている。

 いやいやじゅん先輩が増えたせいで余計密集して通れないし。

 本末転倒じゃんよ。


「ダメだ、笑いすぎてお腹痛い」


 こうなってきたら楽しんだもん勝ちだよね。

 こういうどんちゃん騒ぎは好きだよ、みんな笑ってるし。


 裏や表などカテゴリー分けの無い、しがらみも何も考えず楽しいことだけをする、その自由な感覚いいね。

 小難しい顔をいつもしているアイツに思い出させたいな。

 たまには腹の底から笑えって。


 いつもため息をついて頭をかいている幼馴染を思い出しながら私は騒ぎの中心へと駆けていった。

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