第21話 研究棟
ようやく6月初投稿。精進します。
ほとんどの部活と研究会が広場で勧誘していたから、俺の予想通り研究棟は静まり返っていた。
校長室などがない分教室が多く、結構な数の活動が行われているようだ。
「まだ外は騒がしいし、こっちも探索してみるか」
一階から四階まで俺はゆっくり見て回ることにした。
大きな講堂や研究室は神智研や超常研などが入っている。
所属人数が最も多い思創の卵研究会は講堂を二つ押さえているようだ。
講義は聞いてみたいけど敷居が高く感じるんだよな、研究会って。
「そういやハイドはこっちだけどウィリアムはどうするんだろうな?護衛込みって言ってなかったけか」
まあ学びたいものが一緒とは限らないし、防犯用の補助装具を持ってるのかもな。
ウィリアムはどう考えても戦うタイプには見えないからな。
見ていていて何となく研究棟の序列みたいなのが解ってきた。
人数の多い有名な研究会等は一階や二階にあり、中小になっていく毎に階が上がっているみたいだ。
三階からは一教室に一つの活動かつ、教室の大きさも本校舎に比べたら半分くらいの大きさのものが並んでいた。
「結構上下というかはっきりしてるんだな」
広場で勧誘せず、教室の中に生徒が残っているところもあったが活動をしている感じではなく、何か諦めているような感じを受ける。
四階に上がってからはその空気が顕著だった。
教室に人はいるが寝ていたり、明らかに雑談をしている生徒がいる。
こういう所に入れば自由に行動できそうだが、輝夜や嵐から何か言われそうだな。
棟内マップを見ながら進んでいると四階の一番奥の廊下に異様な気配を感じる。
いや気配というか異様なものが並んでいた。
「なんだ・・・これ」
顔のない俺と同じくらいの大きさの精巧な人形が、廊下に等間隔で配置されている。
メイド服、執事のようなスーツ、白衣などそれぞれ違う服を着ているようだ。
異常な光景に足がすくむが、それ以上にこの奥に何があるのか気になるな。
人形の奥へと足を延ばそうとした瞬間――――
「好奇心は猫も殺すという言葉を知らんのか」
不意に横からかけられた言葉に慌てて振り返る。
「ん?お前は確か測定の時の・・・」
そこには測定の時に声をかけてきた銀髪褐色の先輩が立っていた。
「そうかやはりそうなるのか。その瞳、その血が・・・。やはりあの方は見間違えないか」
何かブツブツ言い始めた銀髪の先輩。
この奥は立ち入り禁止なんだろうか?
マップ見る限りでは問題はないんだけどな。
「あの・・・ここは立ち入り禁止だったりするんですか?」
「ん?いやそういう訳ではいないが・・・普通に気持ち悪くないかコレ」
親指で人形をさしながら銀髪先輩が俺を見る。
いや、まあ、普通に気持ち悪いというか怖くはあるな。
この奥には所属する部活や研究会の表示はないから、その恐怖よりも何があるのかという好奇心の方が勝っただけだ。
「単純に奥が気になっただけですけど」
「・・・なるほどな」
銀髪先輩は何かに納得して頷くと手招きをする。
「とりあえずこっちに来い。そっちからは俺でも行かない」
銀髪先輩は人形が配置されているすぐ隣の教室に入っていく。
俺は言われるがまま先輩の後について行くことにした。
「まずは自己紹介だ。俺の名前はフォルトだ。よろしくな御影の鏡」
そう言いながら銀髪先輩ことフォルト先輩が俺の方にに手を伸ばす。
最初の時のような丁寧な感じではなく結構フランクな感じでくるな。
こっちが素なんだろうか?
差し伸べられた手を握り返しながら俺も頭を下げる。
「これはどうも。俺は御影真白です。その・・・御影の鏡って何ですか?」
「この学園でのお前の肩書・・・あだ名みたいなものだな。その様子だと家の奴らとは関わらずに過ごしてきたのか」
俺に肩書なんてものがあったのか。
というか御影の名前ってそんなに珍しいって名前ではなくないか?
頻繁にって程ではないが中学の時にも数人いたしな。
「腑に落ちないって顔だな。まぁ御影の名前自体は珍しくはないが、お前の父親の血筋とお前の能力が鏡ってのがな」
フォルト先輩は腕を組みながら机に寄りかかる。
俺の父さんの血筋と言われてもただのしがないプログラマーなんだが。
両親の実家にも行ったことがないしピンとこないな。
「御影の名前を冠して能力が鏡であることが特別なんだよ。これの意味に関しては部外者である俺の口から言えることじゃないからこれ以上は何も聞くなよ」
俺の様子にフォルト先輩が付け足してくれるが結局よくわからない。
御影の名前で鏡と言われてもな。
鏡の能力にしたのも何となくだったし特に強い思いもなかった気がするが。
「俺の鏡に特別なモノは何もないですけどね。反射とかしかできないですし」
「特別かどうかを決めるのはお前じゃないってことだ。それにお前の父親が有名すぎるってのも注目の理由だろうが」
理事長も何かそんな感じのことを言ってたな、大層な問題児だったと。
「そんなに有名なんですか、父さんって」
「この学園の教師で知らないものはまずいないし、各研究会とかで語り継がれるくらいにはな」
俺の知っている父さんとはイメージがだいぶ違う。
結構ぼんやりとしてて優しかったけどな。
仕事中はキリッとしててカッコよかったし。
父さん実は二重人格だったのだろうか。
「そんなことより、お前はここで何をしていたんだ?新入生は勧誘会の真っ最中だろう」
「ああ、それは――――」
俺は研究棟に来るまでの一部始終をフォルト先輩に話した。
本校舎を見て回り、仮面幼女先輩に促され、研究棟の広場で言い争いが始まり、じゅん先輩から逃げてきたと。
「なるほどな、あいつ余計なことを・・・」
フォルト先輩は俺の話を聞くなり頭に手をやりうなだれる。
「ところで、この奥には何があるんですか?マップ上じゃ部活も研究会も特に表示はされていないんですが」
「ん?・・・まぁこっちから誘導したわけじゃないから大丈夫か。この奥は自由研究会があるんだよ」
「自由研究会?何ですかそのふわっとした研究会」
「お前に言われるとは皮肉だろうな」
フォルト先輩はフッと鼻で笑うと口元を隠す。
何がそんなに面白いのだろうか。
「活動内容は自由、何をするも何をしないも自由、入るも出るも自由、どこで研究するも自由、すべてが自由な研究会だ」
中身は想像以上にフワフワしていた。
方針も何もない研究会で何を研究するというのだろうか。
「この研究会が名前が載ってないのはいくつか理由があるが、今は人数が足りていなくて研究会名が載らないんだよ。俺を含めて3人しかいないからな」
おっと、誰が入るんだよとか言わなくてよかった。
なるほど研究会は最低4人からだから今は研究会として成立していないのか。
「その、勧誘とかはしないんですか?」
「勧誘はしないというか禁止されているんだよ、初代会長にな。自らの意思でたどり着き、本心で入りたいと思ったやつしか入会させない。勧誘は一種の洗脳だそうだ」
この研究会が何年続いているか知らないが、そんなのでよく今まで存続できたな。
学園の生徒は何かしら信念や学びたいものがあって入学をしている。
そのフワフワした方針では見向きもされないと思うけどな。
「よくそんな研究会に顧問の先生がつきましたね。だいぶ奇特と言うか変わってますね」
よっぽど特殊な先生が顧問なのだろう。
セト先生とかだったら何か納得してしまうかもしれない。
「あの人もある意味ではだいぶ変わっているからな。お前ももう会ってるだろ?見た目は結構普通なんだがついてる異名が凄くてな――――」
「フォルト君、本人を差し置いて語るのは些か失礼ですよ」
背後に突如現れた気配に俺の心臓が跳ねる。
この学園は気配が消せないとやっていけないのだろうか?




