第17話 乙女
ようやく今月初投稿です。
ここから2章となります!
教室には既に半数以上の生徒が集まっていた。
何となしに教室にいる生徒を見ていたら真ん中の方で目が留まった。
「まじかよ・・・」
「ん?どうしたの真白っち」
俺は首を横に振って嵐に「何でもない」と言うと足早に雛壇状の教室の奥を目指した。
首をかしげながらも嵐は俺の後をついてくる。
「ぬ、そこのお前待て!」
「ダメだったか・・・」
俺は目を手で覆い天を仰ぎ、平穏な学園生活は無理そうだとため息をつく。
「おいっ!この俺が声をかけているのだ!無視をするなっ!」
最早見慣れてきた仁王立ちでウィリアムが俺たちの前に立ちふさがる。
こいつは何でこう逐一偉そうなんだろうか。
「真白っちこのちっちゃい子知り合い?」
俺らより一つ上の段に立つウィリアムは嵐と目線が同じだ。
多分同い年の女の子に小さいと言われるのは男して・・・。
恐る恐る嵐から視線を移すと、ウィリアムは顔を赤くして小刻みに震えていた。
「何だこの失礼な女はッ!」
「えー、あんたにだけは言われたくないなぁ」
珍しく嵐がイライラしながら腕を組み、指でトントン音を鳴らす。
いつも飄々としているこいつが凄むと迫力あるな。
「坊ダメですよ。レディーにそのような対応は」
まあまあと言いながらハイドがウィリアムの後ろから声をかける。
早朝ぶりのハイドは申し訳なさそうに頭を下げる。
「初めましてレディー、それと君とは三度目だね。私の名前はハイド・T・トーマス、こちらはウィリアム・T・トーマスと申します。以後お見知りおきを」
慣れた感じでウィンクしながら簡単に自己紹介をするハイド。
そうか、朝遭遇したことは内緒なのか。
「丁寧にどうも。俺の名前は御影真白、呼び方は真白でいい。こっちは狗上嵐だ」
ハイドに軽く会釈しながら俺は改めて自己紹介をする。
「どうもー。あんたは名前でいいよ」
ハイドに手をひらひらと振りながら軽く挨拶をするが、嵐はウィリアムを睨みつけたままだ。
ウィリアムも嵐を睨みつけたまま動かない。
身長結構気にしてるのか?
「立ち話もなんですし、良ければ私たちの隣の席にどうですか?」
ハイドは笑顔で隣を進めてくる。
俺は教室のど真ん中の席を見て少し悩む。
ここに座るともし眠くなった時大変そうだが・・・。
チラリとハイドを見るとウィリアムにバレないよう小刻みに頷いていた。
正直肩がこりそうだがしょうがないか。
「嵐、ここでもいいか?」
「真白っちがいいなら別にいいけどー、そいつとは隣にしないでね」
嵐は指をそいつことウィリアムに指しながら承諾してくれた。
「それはこっちのセリフだッ!」
そう怒鳴るとウィリアムはズカズカと座っていた席に戻っていった。
その隣にハイド→俺→嵐の順番で座る。
「で、何か用なのか?言ったら何だが初対面の印象最悪なんだが」
ウィリアムの方を見ながら俺は声をかけられた理由を聞く。
「ふん、この俺と同じクラスだから思っていたより優秀だと労ってやろうとしたまでだ」
「うっわ、偉そうに何こいつ」
トレードマークのポニーテルの毛先で遊びながら嵐はウィリアムを見据える。
嵐とウィリアムが再びバチバチと睨みあう。
俺も思ったけど口にするのはやめような。
「失礼かもしれませんが、真白君が私たちが思っていたよりもクラスが上で坊も驚いたんですよ。坊が予想を外すのは本当に珍しくて、私も驚きました」
詳細を話しながらハイドは俺の方を真っ直ぐに見据える。
その瞳には好奇の色が滲んでいるように見えた。
「予想が外れた事がそんな興味を持つようなことなのか?」
俺は頬杖をつきながらハイドとウィリアムを交互に見る。
「ええ・・・、それはとても」
「フンッ!」
いい笑顔で返すハイドと、じっくり観察するような目で見るウィリアム。
何となくウィリアムの能力がそういう系の能力なんだろうな。
俗にいう鑑定系やサーチ系の能力か、危機察知系か?
多分聞いても教えてくれないだろうから聞かないけどな。
「あっ、先生きたっぽい・・・よ」
我関せずとドアの方を見ていた嵐が教室に入ってきた人物に注目する。
そこには入学式に見た全身黒ローブの人物がいた。
『立ッテイルモノハ席ニツケ。HRノアト講義ヲ始メル』
機械音声のような半端な高音に淡々とした口調、人間じゃないのか?
異様な登場人物に教室は静まり返り、生徒はみなおとなしく着席する。
黒ローブの先生は反応に満足したようにうなずくと、教壇に立つ。
『初メマシテB+諸君。私ノ名前ハ「セト」トイウ。コノクラスノ担任デアリ、主ニ「思創の卵」研究講義ヲシテイル』
綺麗な所作で恭しくお辞儀をして自己紹介をするセト先生。
自己紹介内容よりもあのローブが気になってしまう。
闇が貼りついているんじゃないかと思うほどに顔が見えない。
「認識阻害系ですかねあのローブ」
「原理は理解できないが何も見えないな」
ハイドたちも声を潜めて先生を分析しているようだ。
まあ、あんな露骨に怪しい人物を警戒しないわけないよな。
ただあのローブ見ていると世界樹であった悪意を思い出すな。
『ソレデハ講義ヲ開始スル前に簡単ナ設定をシヨウカ。ダガ、コノママデハ君タチモ聞キ難イダロウ』
そう言うなり先生は足を二回タンタンと踏み鳴らす。
それを合図に教室のドアが勢いよく開かれた。
「はいどーもー!呼ばれて飛び出て来るは学園教師陣のアイドル『主館乙女』ちゃんだよー☆」
ステップを踏み軽く回りながら教壇の前まで来ると、キャピっと小指と人差し指を立ててポーズ。
恐らく生徒からの反応を待っているのか、ナチュラルボブの女性が腰と耳に手を当てて静止する。
物音一つしない教室で一人うんうんと頷くと、主館先生は演劇のようなポーズで天井を仰ぐ。
「ああ、思い出すわこの空気。ブレイクする前のアイドルが地方遠征した時のアウェー感・・・。大丈夫、負けないで、あなたは一人なんかじゃない」
祈るように手を前で組み、目を閉じる主館先生。
それを後ろから黙って見つめているであろうセト先生、何だこれ。
「なんかスゴイ人きたねー。私好きかも、乙女ちゃん」
おお、早くもファンを獲得したみたいだ。
「いいわ、貴方見込みあるわよ。みんなも気軽に乙女ちゃんって呼んでね☆」
嵐にウインクを飛ばしながら主館・・・いや乙女ちゃんはようやく教壇に立った。
この学園今のところ普通な感じの教師は校長と教頭くらいしか見てないな。
「でわでわ、みなさんステータス画面を開いてもらっていいですか?」
俺たちは言われるがままにステータス画面を開く。
「もらってから自分で操作した人はわかっているでしょうが一応説明しておきますね。この制御装具メール機能なんかもあるので当然手で触れて操作ができます。まずは自分の『思創の卵』の欄をタッチしてくださいな」
俺は『リフレクトミラー』と書かれている部分をタッチした。
すると『戦闘型・支援型・生産型・特殊型』の4項目が表示される。
「みなさんの学園生活や成績次第で変更されていきますが、まずは皆さんの主観でいいのでその4種類から自分の能力が何型か選んでください、って言ってもどれを?となるでしょう」
乙女ちゃんはうんうんと頷くと自分の制御装具のウインドウを大きくして生徒に見えやすいようにする。
そんなこともできるのかと驚いていると、期待通りの反応だったのか乙女ちゃんはドヤ顔でフフンと微笑んでいた。
何だろう、何かくやしいな。
「まずは戦闘型。まあこれは読んで字のごとくですね。戦闘に特化した能力がこれにあたります。そうですねぇ例を挙げるなら、火を生み出して飛ばす、投げたナイフが必ず的に当たるとか、身体能力向上系などがここに当てはまりますね」
なるほど昨日会った山野や嵐は戦闘系に分類されるんだな。
「次に支援型。これは自分や相手に補助もしくは妨害をする能力が当てはまります。霧を発生させて視界を悪くする、草木を操って掴む、存在感を消して周りに溶け込むなどが支援型ですね」
補助と妨害か、それなら俺は支援型だな。
直接的にではなく環境などに作用する能力が支援系ってことだな。
「お次は生産型ですね。これも読んだままですね。道具を生み出したり改造したりする能力がこれにあたりますが、空想の生物を生み出したりなどは能力によっては戦闘型に分類されます」
俺たちが今使ってる制御装具などを作っている人たちだな。
「最後は特殊型ですね。これは今説明した中に当てはまらないものとなります。独創的で唯一無二な能力はここに当てはまりますね。例としてはそうですね、過去視や無機物でも食べてしまうなどが当てはまりましたね」
珍しい能力がここに当てはまるのか。
さてさて能力タイプを選び終わったが次は何をするんだ?
「この能力分けは選択授業などを選ぶ際の指標となります。自分の能力を伸ばしたい、相手の能力をもっと知りたいってなった時の参考にでもしてください。でわでわ皆さんが選び終わったところで出番ですよセト先生☆」
バチンとウインクを飛ばされたセト先生はうなずく様にゆっくりと動き始めた。
はたしてどんな講義が始まるのか楽しみだな。




