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デウス・ウルト   作者: 妖怪はらへった
第一章 天峰学園入学編
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第15話 同士

 はぁはぁと荒い息づかいが聞こえる。

 揺れる視界には何処かの路地裏が映る。


 何かに追いかけられている焦燥感。

 酷い後悔に苛まれているような嫌悪感。


 俺は誰かに手を引かれて走っていた。

 手を引く少女は幼馴染に似ている気がする。


 懐かしい思いを抱きながら、奥に走り抜けていく度に胸がざわつく。

 そっちに行ってはいけない、そんな思いがだんだんと確信に変わっていく。


 その先は――――




 眩い光に刺激されまぶたを開く。


「・・・ん、そうか・・・昨日あのまま寝落ちたのか」


 軽く伸びながら部屋の備え付けの椅子から立ち上がる。

 あまりいい夢見ではなかった気がする。


「いてて、体がバキバキだな」


 体から軽快な音を鳴らしながらストレッチをして時計を見る。

 時刻は朝6時、俺にしては早起きしすぎだな。

 ただこのまま二度寝すると確実に遅刻する、その自信だけはある。


「しょうがない、早朝ランニングに行きますか」


 俺は学園指定のジャージに着替え部屋を後にした。





 ――――

 四月とはいえまだ肌寒さの残る朝の気温が心地いいな。

 眠たい頭をスッキリさせてくれる。


 男子学生寮の外に出て外壁に沿ってランニングを開始する。

 鷲司さんにどうせいろいろ聞かれそうだし、走りながら昨日のことを頭の中でまとめるか。



 俺たちは寮門にたどり着いた後、それぞれ男子寮・女子寮に向かった。

 届いていた荷物を受け取り、寮母さんに寮内を案内されて、自分の部屋でようやく一息。


「そのあとは風呂と飯か」


 風呂は自分の部屋にあるシャワールームか寮内にある大浴場をとのことだった。

 案内の時点で金かかってんなと思っていたが、中はある意味で予想通りで思わず旅館かよと突っ込んでしまった。

 当然、大浴場に入りましたとも。


 ご飯も大変美味しくいただいたが、やはり巴さんのご飯は格別だと再認識したな。


 部屋に戻ってからは学園のルールやクラスアップなんかの項目を確認していた。


「そこで輝夜からクレームが入ったんだっけか」


 この万能リストバンドは通話機能も備えており、学園都市内であればどこでも連絡が取れる。


 軽快な着信音と共にウインドウに輝夜の名前が表示される。

 名前をタッチをすると通話が始まる仕組みらしい。


『さぁ聞かせてもらいましょうか!何でBランクなのかを!』

『開口一番それかよ、わかってたけど』


 俺は頭を掻きながら鷲司さんとの入学前のやり取りを思い出す。


『最初は目立つな、そう言われたんだよ』

『最初は?どういうこと?』

『何でも俺の父さんは学園ではとても有名だそうで、目立たないにこしたことはないらしい』

『・・・その言い方だといい方で有名じゃなさそうね』


 俺はウインドウを操作してステータスの項目を開く。


『とりあえず学力は低いだろうから、体力テストは控えめで行けと言われてたんだよ』

『なるほどね、じゃあ思創の卵(プロキシー)の能力名が違うのは?真白の鏡って反射だけじゃないよね』

『鷲司さんの言い方が気になったから、能力も控えめに伝えたんだよ。て言っても反射がメインの能力だから嘘じゃないだろ』


 俺の能力自体はいたって普通だ。

 鏡を作り、鏡に映る任意のモノを反射する。

 ステータスの独創性は『思創の卵(プロキシー)』のユニークさを表しているらしい。

 反射して返すだけ、納得のCランクだ。


『いや、真白のは普通じゃないでしょ。あの時だって・・・』

『あの時ってどの時だよ』

『それは・・・ほら、だって炎とかも返せるし私の矢だって防げるじゃん』


 ああ、おかっぱ君の時のか。

 確かに普通の鏡じゃできないだろうけど、あれは鏡の性質を応用しただけだしな。


『ああいう使い方はお前が無理しなきゃ使うことないからいいんだよ』

『どういう意味よ』

『そのまんまの意味だよ、だからクラスアップもすぐにはできないってのは言っておくな』

『まあ、お父さん次第ってこと?』

『て言うより俺の父さんの悪名がどんなもんかってとこだな』


 学園長にすら言われるレベルだからな。

 この学園に長くいる先生ほど気を付けていこう。


『それならしょうがないけど、同じクラスになれると思ってたからさぁ』

『登下校くらいは一緒に・・・ってそれもわかんないか。部活か研究会に所属は絶対だったな』

『そうだね、真白はまだ決めてないんだっけ?』

『正直他のやつらには悪いが、俺の目的は父さんの痕跡を追うことだからな』

『何か・・・他に夢中になれることがあるといいね』


 輝夜らしくない何か引っかかる言い方だな。

 昔から輝夜は父さんの話は好きじゃない感じがするもんな。

 俺の知らない事故の記憶がそうさせるのだろうか。


『今日はもう疲れたから寝よっか。明日の朝は一緒に行くよ!』

『はいはい、わかってるよ。それじゃあな』

『うん、おやすみ』



 こんな感じで通話を切って、機能の確認に戻ったんだっけか。

 椅子に座っていじってる途中で寝落ちたってわけだ。


「鷲司さんには輝夜にランクをわざと落としたって言ったことを報告しとくか」


 正直仮に体力測定をしっかりしたところでA末席かB上位がいいところだろう。

 俺としては学力をどうにかしないと上がれないと思うけどな。


 ようやく外壁を半周したところで、どこからか声が聞こえてきた。


「俺以外にも早起きなやつがいるのか、空き地の方か?」


 特に戻ってもやることないし、寄り道でもしてみますか。


 俺は体を反転させ、声のする空き地の方へと向かう。





 ――――

「ハッ!ヤッ!・・・セイッ!」


 空き地ではブロンド君ことウィリアムを止めていたメガネ君が素振りをしていた。

 フェンシングのような動きだが、右手に細剣、左手に短剣と妙な組み合わせだ。


 流麗な淀みない動きに思わず、ほぉと感嘆の声を漏らす。

 一朝一夕でできる動きじゃない、欠かさず鍛錬しているんだろうな。


 これは邪魔したら悪いな、ランニングに戻るか。


「あの・・・どちら様ですか?」


 ランニング戻ろうとしたところで気づかれてしまった。


「邪魔したみたいで・・・悪いな」


 頭を掻きながらばつが悪そうに俺は空き地に足を踏み入れる。


「貴方は・・・坊がちょっかいをかけていた」

「御影真白だ、よろしく」


 俺は軽く手を挙げて自己紹介をする。


「これは丁寧に、私の名前はハイド・T・トーマスです。よろしくお願いします」


 メガネ君ことハイドは丁寧にお辞儀で答えてくれた。


「ブロンド・・・じゃなくて、ウィリアム君とは兄弟なのか?」

「いえ、坊とは家名が一緒ですが兄弟ではないですよ。護衛のようなものです」


 ハイドは微笑みながら俺の質問に答えてくれる。

 外人さんって何でこう美形が多いんだろうな。

 朝焼けのバックがめちゃくちゃ似合うな。


 濡れた黒髪と吸い込まれそうなディープブルーの瞳が朝焼けでさらに輝きを増していた。


 ハイドは用意していたタオルで汗を拭き、訓練用の剣を片付けていく。


「御影さんも寮だったんですね」

「あー、名字で呼ばれるのなれないんで、よかったら真白って呼び捨てで」

「では真白、こちらもハイドと呼び捨てでいいですよ」

「ああ、よろしくなハイド」


 何となく気恥ずかしくなり頬をかく。

 こんな普通のやり取りいつぶりだろうか。

 大体輝夜と一緒にいるから男とは罵倒しあいしかしてこなかったからな。


「ハイドがここにいるってことは・・・」

「そうですね、坊も寮ですよ」

「だよな、あんまり鉢合わせないように気を付けるか」

「フフッ、何だか貴方を見ていると落ち着きますね。私と同じ空気を感じます」


 同じ空気は間違いないだろうな。

 お互いトラブルメーカーといれば空気も似てくるもんだ。


「そろそろ戻らないと朝食の時間ですね」

「そうだな、また機会があったら話そうぜ」

「喜んで。とりあえず寮まではお話しませんか?」


 俺はハイドの提案にのっかり、気持ちゆっくり目に歩く。

 寮につくまで俺たちは他愛のない話で花を咲かせた。



 こういう学生っぽいテンションいいな!

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