第14話 課題
「――――ッ!」
勢いよく体を起こし周囲を確認する。
周りには巨大な木と草原が広がっていた。
「戻って・・・きたのか」
手を握っては開き、体の感覚を確かめる。
さっきまでのは夢だったのだろうか?
そう考えていると手元からピコンと音がした。
「CSの方か。ミッションが追加されました?」
ゲームの画面には恐らく父からの課題が表示されていた。
『第一関門突破オメデトウ。君ハ世界ヲ正シク見ツメル権利ヲ獲得シマシタ。
己ヲ見ツメ、世界ニ干渉セヨ。君ハヨウヤク世界ノ入リ口ニ立ッタニ過ギナイ。
干渉ガデキレバ自ズト視野ガ広ガルダロウ。後ハ死神ニ聞クトイイ』
テキストを読み上げボタンを押すと、二等親のキャラが大きな木の根元にいるシーンに戻る。
「己を見つめ、世界に干渉する?死神ってなんだよ。こういうゲームって何でこう回りくどい言い回しをするんだよ」
不意に黒ローブの女との会話が過ぎる。
「『思創の卵』の理解を深めよ、か」
俺はまだ『思創の卵』の表層しかなぞれていない、ってことなのか。
『思創の卵』個が望み他が認めた時、それは力として発現する。
この力自体がすでに世界に干渉している感がすごいんだが、そういう事ではないんだろうな。
「今考えてもわからんな、いい時間だし校門行くか」
俺はCSをズボンになおすともと来た道を戻っていった。
――――
「おっっっそーい!」
俺が校門につくとそこには仁王立ちした幼馴染が待っていた。
どうやら鷲司さんはいないみたいだな。
あの人がいると無駄にややこしくなるからな。
「悪い、待たせたか?」
「いや、そこまでは。10分くらいかなぁ」
嵐があくびをしながら答える。
「連絡してくれればもう少し急いだんだけどな」
「いや、姫の前でできるわけないでしょ」
「私をスルーして何二人で話してるのかなッ!」
輝夜はズイッと俺と嵐の間に入り腕を組む。
わかったからそうジト目で睨んでくるなよ。
「待たせて悪かったよ、今度埋め合わせするから」
「じゃあ次の休みの日買い物に行こう!」
こいつ、最初から決めてたな。
「はぁ、わかったよ。仰せのままにお姫様」
「姫って呼ばないでッ!」
「いやぁ、これでいちゃついてないって嘘でしょ真白っち」
嵐が茶化しながら俺たちの背中を押す。
「みんな寮だし、あとは歩きながらね~」
「もう嵐、わかってるから押さないでよ」
中学から変わらないこのやり取りに何となく落ち着くな、まぁ一人足りないが。
――――
「え、あのゲーム進んだの?」
「ああ、世界樹見つかった」
帰り道がてら輝夜にゲームが進んだ報告をした。
あの地図を最初に解いてくれたしな。
「やっぱり学園都市の地図だったんだ。で、何か進展あったの?」
「あったような、なかったような」
「何その曖昧な感じ。もやっとするんだけど」
「正直進展はほぼなかったよ。着いたら課題が表示されただけ」
そう言いながら俺は二人にあの画面を見せる。
「私にはさっぱりだねぇ。でも死神ってのはなんかカッコよす」
「己を見つめ直して世界に干渉・・・、これって『思創の卵』のこと?」
輝夜は顎に手を当て、いつもの考えるポーズをとる。
「・・・何でそう思ったんだ」
「干渉ってのが何となくさ、二人ともこの力を手にする前に見た夢を覚えてる?」
「あぁ、あのピエロっぽい名前のお兄さんの夢ね。言われてみたらそれっぽいことを言ってた気がしなくもないけど、何年前の話よ」
おぼろげだが眼鏡だった気がするな、たしかクラウンだったか?
「クラウン、この力を手にする前に必ず見ると言われている存在よ。あの存在が私たちという存在に干渉することにより力を得る、っていうのが『思創の卵』の研究で語られてるわね」
「詳しいね、姫」
「まあさらっとしか知らないけどね。何かそれに似ているなって思っただけだけど」
「そっち方面も含めて調べてみるよ。どのみち『思創の卵』については調べるつもりだったしな」
俺はゲーム機をしまうと軽く伸びをする。
「そういやお前たちはクラス何になったんだよ」
「あっ、それ私も気になってたんだよねぇ」
「じゃみんなで見せ合いっこしましょ」
そう言うと輝夜はリストバンドを付けた手を前に出す。
「「「ステータス」」」
――――
上代 輝夜 15歳 女
所属:無し
思想の卵「聖弓」
独創性:A
学力:S
体力:S
理解力:A
適応力:B
総合ランク:Aクラス
クラス序列:S>A>B>C
学年内Aクラスランキング:1/400
――――
さすが輝夜だな、文句なしのAクラス1位か。
何ならSランクでもよくないかこれ。
――――
狗上 嵐 15歳 女
所属:無し
思想の卵「韋駄天」
独創性:C
学力:B
体力:S
理解力:C
適応力:B
総合ランク:Bクラス
クラス序列:S>A>B>C
学年内Bクラスランキング:254/1000
――――
嵐は俺と同じBクラスか。
体力だけ堂々のSランクにはうなづけるな。
「ちょっと、なんで真白Bクラスなのよ!」
「俺の実力なんてそんなもんさ」
「あんた絶対手抜いたでしょ!学力はともかく、体力と『思創の卵』は――――」
「輝夜、それは鷲司さんとの取り決めだ」
「何でお父さんの名前がそこで出てくるのよ」
「まぁまぁ、お二人さん道端で騒ぐもんじゃないよ」
少し注目を集めてしまったらしく、周りの人がチラチラこちらを見てる。
「あ、ごめん」
「いや、こっちこそ先に言っておくべきだった。悪かったな」
俺たちは軽く謝りあうと止めていた足を動かす。
「私としては知ってる顔が同じクラスで安心だけどね」
嵐はニシシと歯を見せて笑う。
「むー、私も真白たちといっしょがよかったなぁ」
「まぁクラスアップもあるみたいだし、いつか同じクラスになるかもな」
「いつかじゃ困るんですけど・・・」
輝夜はさらに頬をむーと膨らます。
ジト目を避けようと視線を奥にずらすと、嵐が何とかしなよと目配せをしてくる。
「あ~そういや、今日みたいなことがないように連絡先交換しないか?」
こんな事しか話題を提供できない自分が情けない。
世の男はどうやって話題を振っているんだろうか。
「むー、しょうがないな。ぼっちの真白に私が最初に登録してあげましょう」
「あー最初は――――」
「真白っち!最初が、姫なんて、幸運だねッ!」
言ったら殺す、そんな副音声が聞こえる。
「わあ、光栄だなあ」
「なにその白々しい反応。本当に光栄に思いなさいよ、お父さんにだってまだ教えてないんだから」
「は?」
輝夜さん、今なんと?
「お父さんにも聞かれたけど、真白と交換してからねってさっき断ったの」
輝夜はドヤ顔でフンと鼻を鳴らす。
いや輝夜さん、何てことをしてくれたんだよお前。
「うわぁ~、それは・・・どんまい真白っち」
もう早くも不登校一歩手前なんだが、そうか、明日、会いたくないな。
このあとも何か話をしていたが、何を話したか全く記憶に残らないまま俺たちは学生寮にたどり着いた。




