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デウス・ウルト   作者: 妖怪はらへった
第一章 天峰学園入学編
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第11話 呼び出し

 入れ替わりで入ってきた先生に、制御装具(インペリウム)の取扱説明書を渡されたのでざっくりと目を通す。


「なるほど各種機能は音声入力でも表示可能なのか」


 説明書によると、先程の『接続(アクセス・オン)』は制御装具(インペリウム)を起動させるため音声キーだそうだ。

 初起動時に装着者の生体電気を読み取り使用者を固定化させるため、他人の制御装具(インペリウム)は操作することが出来ない。

 ちなみに『切断(アクセス・オフ)』と口にするか、制御装具(インペリウム)を手で覆うように隠すと機能を終了させることが出来るらしい。


「さっきのランクとかを出すなら『ステータス』とかでいいのか」


 似通った意味であればそれに近しい機能が起動する。

『ウィンドウ』や『ステータス』で自分の現状確認ができ、『マップ』で学園や都市の地図、『校則』や『ルール』で注意事項や学園都市の独自ルールを確認できる。


 内容は結構沢山あるので寮についてから確認するか。


「説明書は行き渡ったな。今後はクラス別での行動となるのでよく確認しておくように。現時点をもってHR(ホームルーム)は終了となる、寮生となるものは寮の場所と門限を確認しておくように、以上」


 いい終えるなり先生は退出し、教室はまた賑やかさを増していく。


「寮の門限は・・・夜の8時か、結構遅くまでいいんだな。ただ、食堂が使えるのが8時までだからそれまでに帰らないと飯抜きか」


 今が昼過ぎだから結構時間あるな。

 この教室に輝夜や嵐はいないから、どっか適当にぶらぶらするか。




 ――――

 俺は賑やかな教室をあとにし、敷地内マップを開く。

 一人で行動できるうちに行きたい所があるんだけど、場所がわからないな。


「校舎はさっきある程度見たしな、どこにいくか――――」


 目的地を決めているとリストバンドからピコンっと音がなり、ウィンドウの右下に赤い手紙のマークが表示された。


「何だこれ?」


 マークに指を合わせると緊急連絡と表示された。

 中を開いてみると、



『緊急連絡:発信者 呼桜焔

 御影真白、至急学園長室に来られたし』



 簡潔に一言そう書かれていた。


「呼桜焔って、学園長だよな?何で呼び出されるんだ?」


 俺は校舎内マップに切り替えて場所を確認する。

 学園長室はたしか一階にある職員室の隣だったな。

 さっき探索したお陰で大体の場所はわかる。


 しかし、呼び出された理由に全く心当たりがないんだが。




 ――――

「ここか・・・」


 職員室より一回り大きな漆黒の扉の前で立ち止まり、軽く深呼吸する。


 入学式でのイメージのせいか怖いんだよな。

 怒られること本当にしてないよな、俺。


 このまま考えても埒が明かない、そう思い扉をノックする。


「新入生の御影真白です。連絡がありお伺いしました」

『開いてる、気にせず入れ』

「失礼します」


 中では学園長が忙しそうに書類を捌いていた。

 俺が入るのを確認すると、学園長は手を止め鋭い視線でこちらを真っ直ぐ射ぬいた。


「わざわざ呼び立ててすまないな、そこにかけるといい」


 学園長のデスクの前にある、革張りの高級そうなソファーに俺は座った。

 学園長もデスクから俺の正面のソファーへと座り直す。


「そんなに怯えるな、怒っているわけではない。お前の顔が見たかっただけだ」

「顔・・・ですか」

「ああ、糞生意気な後輩の子供はどんな顔をしているのか、とな」


 学園長はフっと鼻で笑い俺の顔をまじまじと見る。


「全体的には母親似だな」

「そう・・・なんですかね?」

「ああ、鼻筋や柔らかな口元などそっくりだ」


 そうなのか、俺は母さん似なのか。

 あんまり言われたことないから何て反応したらいいか困るな。


「ただ、眼だけは父親似だな。憎たらしいほどにそっくりだ」


 キリッとした瞳にいすくめられ、背筋がゾクッとする。

 なるほど生意気な後輩とは父さんのことか。


「あの二人の代わりに見ておきたかった。あの事故の日私もあの場にいたからな」


 一瞬寂しそうに瞳が揺れた気がした。

 あの事故の日・・・か。


「学園長はあの事故の詳細を知ってるのですか?」

「いや、詳しくは知らないな。私が駆けつけた時には全てが終わったあとだった」

「そう・・・ですか」


 うつ向く俺を見かねてか、学園長は俺の頭をグシャグシャとなで回す。


「お前の父親は大層な問題児だった。常に誰かを巻き込んで騒動を起こし、騒ぎが起これば必ず中心にいた」


 学園長は忌々しげに遠くを見ながら椅子に深く座る。


「毎度お前の母親と尻を拭っていたよ。この学園の校則の半分は奴のせいで出来たようなものだ」

「そんなに、ですか」

「そんなに、だ」


 フンと鼻をならし学園長は腕を組む。


「お前は問題を起こしてくれるなよ?」

「・・・善処します」


 俺は元気な幼馴染みたちを思い出しながら頷く。


「今日はすまなかったな、手間賃にこれをやろう」


 そう言うなり学園長は襟元についている校章に指を当て、何かを飛ばすようにその指を俺の方に向ける。

 直後ピコンと俺のリストバンドが音を鳴らす。


「今送ったのは私への面会の権利だ。本来ならいろんな手続きが必要だかそれを総無視して私への面会にこぎ着ける。一度しか使えないから慎重に使えよ。使うようなことがなければそれはそれでいいし、お前がそれを使って何を聞きに来るかを楽しみに待つのもいい」


 俺はウインドウを開き中を確認する。

 黄色の文字で最優先面会権と書かれたファイルが送られていた。


「改めて入学おめでとう、御影真白。この学園でお前の真理が見つかることを祈る」


 学園長はフッと笑うとデスクに戻り書類作業を再開した。

 どうやらこれで話は終わりらしい、何とも自由な人だ。


「それじゃあ、失礼します」


 俺は一礼したあと学園長室を出る。

 さて、学園探索を再開しますか。





「――――行ったか」


 呼桜焔は先程まで真白が座っていた場所を見つめてため息をつく。


(あきら)お前は何がしたいんだ、息子にあんなもの押し付けおって。馬鹿者が」


 焔は悪態をつきながら、デスクに倒しておいてあった写真立てを起こす。

写真には3人の男女が写っていた。


(つむぎ)、どうかあいつを守ってやってくれ」


 焔は写真を見ながら憎たらしい目の少年の未来をただ祈った。





 ――――

 まさかこんなところで父さん達の話を聞くことになるとは。

 父さん達の話は今まで、輝夜の父親である鷲司さんくらいからしか聞かないからな。


「事故に関しては相変わらず何もわからねえな」


 校舎から出て、空を見上げながら一人ごちる。

 どうにも出来ないし、どうにもならない。

 こればっかりは俺が頑張るしかないんだか、俺の知らない父さん達の話を聞き期待してしまった。


 俺には『空白の記憶』がある。

 父さん達が事故にあった12歳のときの記憶がすっぽり抜け落ちているのだ。


 事故当時俺は輝夜と現場にいたらしいが何も思い出せない。

 輝夜も当時の事は思い出したくないのか教えてはくれない。

 ただただ両親は死んでしまったと人伝に聞くだけで、現実感があまりなかった。

 今もどこかで生きているような気がしてしまう。


「さてと、教室からそれっぽいのが見えてた気がするんだが・・・あれか」


 俺は視界の端に見えた大きな木に視線を合わせる。


「ようやく冒険の始まりか、見つけたぞ『世界樹』を」


 俺は一目散に木の方へと駆けていった。

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