第10話 再会
面談を受けた教室のドアをくぐり、入り口の先生に会釈をしてから最初の教室を目指す。
「あ、最初の教室と言うことは・・・」
十中八九あのブロンドくんがいるな。
あいつなんであんなに突っかかって来るんだろうな。
すぐに戻ると絡まれそうだしゆっくり帰るとしよう。
俺は朝イチにできなかった校舎探索をすることにした。
――――
一階は主に教職員関連のフロアみたいだな。
職員室、校長室、保健室、会議室、資料室、食堂など授業では使わない系のものばかりのようだ。
二階は特殊教室か。
音楽室、美術室、技術室、科学室などよく学校で見るものだが、一際異彩を放っている教室があった。
「・・・なんだよ、錬金室って。隣の加工室も気になるけど」
まぁ、間違いなく生徒会長専用の教室なんだろうな。
「現代のパラケルススねぇ」
「呼んだかい?」
不意に背後から声がかかり心臓が跳ねる。
「な・・・、え?」
振り返るとそこにはパラケルススことカール生徒会長が立っていた。
「驚かせたみたいでごめんね。僕としては教室に集まっているはずの新入生がいることに驚いているんだけど?」
「道に迷った・・・ってことで」
「そんなに怯えなくても取って食べたりはしないよ」
クスクスと笑いながらカール会長は俺の目を真っ直ぐ見つめる。
「で?何をしていたのかな?」
「いやぁ、少し学校探索を・・・」
「なるほどね、知らないところに来ると好奇心が掻き立てられるよね」
整いすぎている容姿、柔らかく笑う仕草、確かにこれは女子がキャーキャー騒ぐな。
男の俺が見ても見とれてしまう。
有名な絵画などの美術品を見ているみたいだ。
「個人的には君ともう少しお話したいところだが、そろそろ教室に戻った方がいいよ」
「そうですね、怒られる前に帰ります」
決して容赦などしない、厳格な一人の男を思い出しながら肩を震わせる。
「それでは、失礼します生徒会長」
「うん、またね」
俺は軽く会釈をして足早に教室を目指す。
「またね、御影真白」
――――
「あー、ビックリした」
四階にあるもとの教室まで一気に駆け上がり、息を整える。
まさか生徒会長と出くわすとは。
今から実験でもするのだろうか?
先程のカール会長とのやり取りを思い返しながら改めて思う。
とてつもなく綺麗だったと。
同じ人間とは思えないほどの完成された容姿、所作、あれ以上のお手本はないと思える程だった。
「天は二物を与えんと言うが、三物くらい与えてそうだな」
あれで運動音痴ならそれはそれでギャップ萌えしそうだな。
そんな事を思いながら俺は嫌々教室のドアを開ける。
教室のドアが開くと雑談がピタッと止まり視線が俺の方へと集中する。
幾つになってもこの注目される感じは慣れないな。
入学式の輝夜を思い出し、改めてあいつはスゴい奴だなと再認識した。
入ってきたのが先生じゃないとわかると、生徒たちはわいわいと雑談に戻る。
・・・一人を除いて。
「ようやく戻ってきたか!」
予想通り、ブロンドくんが仁王立ちでお出迎えしてくれた。
改めて見るとブロンドくんもなかなか整った顔をしている。
長い睫毛、スーッと通った高い鼻、威圧的で切れ長なアイスブルーの瞳。
黙っていれば知性溢れる顔つきだな。
「・・・何か用か?」
「何だその目は?この俺がわざわざ声をかけてやっていると言うのに」
見た目どおりの俺様系か。
正直相手したくないな。
「何でそんなに突っかかってくるんだよ」
「お前が学園にふさわしくない行動を取っているからだ!交流の場で寝こけ、活躍の場で手を抜き、集合の場でわざと遅くやって来る、怠惰と言わず何と言う?」
ブロンドくんはやれやれと首を振りながら捲し立て、わかったかと睨み付けてくる。
「どうすごそうと個人の自由だと思うが?」
「選ばれたものにはそれにふさわしい姿というものがあるだろうが。我々は数多の人間の中から学園に選ばれた。故に、常に最大限に前へと進む義務がある。それが力あるものの宿命だろう」
なるほどね、貴族の義務ってことか。
力あるもの模範たれ、力あるものこそ道を示せと言いたいのか。
言い方はムッと来るが言いたいことはわかる。
「わかったら今後はちゃんと学園にふさわしく過ごせ。この俺ウィリアム・T・トーマスに恥をかかせるなよ」
フンッと鼻をならすと、ウィリアムは元々座っていたであろう席に戻っていった。
ウィリアムの隣にはあのメガネくんが座っており、こちらに何度も頭を下げている。
あのめがねくん、何となく親近感がわくな。
ウィリアムたちからそれなりに距離のある席を探していると、ガラッという音ともに体育館へと引率していた先生が入ってきた。
「お前らちゃっちゃか席に着けー。お待ちかねのブツをお届けだ」
パンパンと生徒名簿であろうファイルを叩くと、台車で大きな箱が搬入された。
「今からお前ら専用の制御装具を配る。名前を呼ばれた奴から取りに来い」
おお、ようやく素敵に便利な生徒手帳がもらえるのか。
どんな機能があるのやら。
――――
「次、御影真白」
「はい」
先生から黄色のリストバンドを渡される。
これが俺専用の制御装具か。
自分専用ってなんか心が踊るよな。
色はどうやらみんな同じらしく、黄色のリストバンドをそれぞれ思い思いに見ている。
「よし、行き届いたな。それはこの学園や各種施設に入るの必要なパスだ。絶対になくすなよ」
先生は腰に手を当て、凄むように端から端まで見渡していく。
「まずは手にはめて登録を済ませろ。起動認証は『接続』だ」
俺はおもむろに左手に通す。
シリコンバンドのような伸縮性のある素材だな。
「接続」
起動認証を唱えると制御装具から眩い光が溢れだした。
光が収まるとリストバンドから青いウィンドウが表示されていた。
「よし、全員登録できたな。ウィンドウの中に名前、能力名、ランクなどが書いてあるはずだから確認しておけ」
どれどれ、俺のはどんな感じかなと
――――
御影 真白 15歳 男
所属:無し
思想の卵「リフレクトミラー」
独創性:C
学力:C
体力:B
理解力:B
適応力:A
総合ランク:Bクラス
クラス序列:S>A>B>C
学年内Bクラスランキング:468/1000
――――
「おお、THE真ん中だな」
ランクとかは限りなく理想値だな。
独創性はまぁ、こんなもんだろうな。
学力、体力もこんなもんだろ。
理解力は何を指してるかわからんな。
ただ、適応力何でこんなに高いんだ?
「今後学園からの連絡は制御装具に送られる。学園指定の基礎授業以外は選択授業となるが、優先順位はランクの高いものからとなる」
優先順位は高ランクから、この発言に周囲がざわめきだす。
取りたい授業があっても、規定人数を越える場合受けられない。
しかもランク順に選ばれる、か。
「不公平と言いたげだな。才能ってのはそれだけ尊い。だが努力を否定するつもりもない、当然救済措置もある」
先生はニヤッと口の端を上げる。
「詳しくはあとで渡す冊子や、制御装具内にある校則とかをよく読んどくように、以上!」
質問は受け付けないと言わんばかりに、先生はそのまま教室をあとにした。
「・・・この学園教師も生徒もクセ強すぎろ」
俺は苦笑しながらウィンドウをそっと閉じた。




