第9話 面談
測定が終わったあと、俺はそのまま保健室へと向かい健康診断を済ませた。
ここまでは人数が多いことや敷地の広さ以外は、普通の学校とそう変わらないな。
「面談ねぇ。何を聞かれるのやら」
入試の時にも筆記の後に個人面談があったが、あれとは違うことを聞くのだろうか?
志望動機とか当たり障りない内容だったし、もう少し踏み込んでくるのか?
そんな事を考えながら向かっていると、丁度面談が終わったであろう生徒が出てきた。
「あっ、お前!」
「さっきぶりだな」
ブロンドくんの登場である。
しかし先生がいる手前か怒鳴ることはなく、キッと睨み付けて去っていった。
何がそんなに気に入らないのか?
ふぅと軽くため息をつき、ドアの前にいる先生に視線を向ける。
「このプレートに手をかざし名前を言いなさい」
「――――御影真白」
教室のドアの横にある白いプレートに手をかざし、自分の名前を言うとプレートが淡く輝きだした。
輝きが収まるとスライドドアがひとりでに動き出す。
「どうぞ、入りなさい」
中から入学式で司会をしていた、教頭先生の声が聞こえてきた。
「失礼します」
教室の中には間仕切りがあり、それを避けると教室の奥に3人が椅子に掛けていた。
明らかに場違いなアイマスクが目に入る。
アイマスクヘドバン幼女はやはり先生だったらしい。
「どうぞ、そこに掛けてください。えーと、君の名前は御影真白君で間違いないかな」
「はい、間違いありません」
「では今から質問をしていくので、簡潔に答えていってください」
ここでも進行役の、正面に座る教頭が俺を見据える。
「さて君は『思創の卵』をどこまで理解しているかな」
「理解・・・ですか。えーと、意思あるものならば誰しもが一つは持っている特異能力で、他者に下される評価により力が増減される、くらいですかね」
「・・・なるほど、因みに君の『思創の卵』は何かな」
「俺の『思創の卵』ですか。・・・俺のは『リフレクトミラー』です。鉄やガラス等の鏡にできる素材を鏡へと変質させ、そこに写るものを反射する能力です」
俺が『思創の卵』の説明をすると、教頭の手元にあるプレートが淡く輝く。
恐らく制御装具の登録作業的なものか。
まったく原理はわからないが、教室のドアの所にあったものと同じものなのだろう。
嘘の判定とかもできるのか?
皆が皆正直に答えるとは考えにくいんだが。
「では、次に。君は神を信じますか?」
「は?」
唐突な質問に思わず固まる。
なんだこの道端でいきなり勧誘されたかのような質問は。
「言葉通りの意味です。神の存在を信じますか?」
「・・・いるとは思います」
「それはなぜですか?」
「まだ人類が理解できていないことがあるからです」
俺から見て教頭の右側に座っている、明らかに聖職者みたいな格好の男が初めてピクリと反応した。
何なんだろうか、スゴく睨まれている気がする。
「これで最後です。君は『思創の卵』で何か成したいことはありますか?」
俺が成したいことか・・・。
「真実を・・・、ねじ曲げられていないまっすぐな真実を見たいです」
教頭は俺の目をじっと見つめたあと、左右に目を向ける。
それぞれが小さく頷くとまた俺のほうに目を向けた。
「面談は以上となります。この後は最初の教室で待機していてください。お疲れさまでした」
「・・・失礼します」
軽く会釈をし俺は教室を出る。
この面談は一体なんだったんだろうか。
『思創の卵』などの登録はわかるが、神云々や最後の質問はよくわからなかったな。
引っかかる質問に疑問を抱きながら、俺は最初の教室に向かった。
「メイ先生、ぺテロ神父、お二人ともお疲れ様でした。あの子が『御影の鏡』ですか。どうでしたか?」
メイと呼ばれたアイマスクの少女はフフッと笑みをこぼし、ぺテロと呼ばれた壮年の男は髪と同じ色のアッシュグレーの瞳をただドアの方へと向けている。
「んー、とりあえず嘘は言ってはないかなぁ。ただ、本当の事も言ってない感じかなぁ」
「同意、嘘や誤魔化しの色は感じられなかった」
「・・・そうですか。とりあえずの所はよいでしょう。あの男が命を賭してまで守った子供、これから何かしら動きがあるでしょう」
顎に手を当てながら教頭は天井を見上げる。
これから起こるであろう事に苦難の色を浮かべながら。
「しかし、御影真白とは大層な名前だ。おこがましいにも程がある。しかも神の存在を認めているなどと・・・」
ぺテロは憎々しそうに頭を揺らす。
その様子にメイはカラカラと笑いながら机に頬杖をつく。
「まぁまぁ、落ち着きなよ。名前の通りなら使い道は幾らでもあるさ。僕は無限の可能性に心が踊るねぇ」
満面の笑みを浮かべながらメイは指揮をするかのように指を振る。
「ようやく役者が揃ったんだ、まずは楽しまないと。『御影の鏡』に『月のお姫様』、『紛い物の王』と『天秤の御子』他にも粒揃いだねぇ。そう言えば早速『十二宮』が動いていたよ。狙いはお姫様かな」
「・・・相変わらず手が早い」
「あそこは万年人不足なところがありますからね」
教頭は目を手で覆いため息をつく。
「明日からはお互い悔いの無いように手を尽くしていきましょう」
「りょーかーい☆」
「ようやくこのふざけた停戦協定も終わりか」
それぞれが瞳に炎を灯す。
決して譲ることができない己が信念を確かめるように。




