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美馬精神病学科のオンラインクリニック  作者: 端山 冷
第二消霊 『イマジナリーフレンド』
38/62

姉弟

「それで、コレどうするの?」


 宮田は、どこか居心地の悪くなってきたこの空間から一刻も早く立ち去りたくなって、そっと視線を黒衣の上司から外す。


 そして、彼女が見上げた先には御神木――そこに囚われている捕虜の姿が目に映った。


「ああ。それなんだが……」


 上司の命令が飛び出る前に、牽制するよう慌てて宮田は言葉を列ねた。


「言っとくけど、こんなもの長くは続かないわよ。『イマジナリーフレンド』よりこっちの力のほうが強いの。だから、あたしではこの娘を抑えきれない」


「……随分とあっさり負けを認めるんだな。らしくない」


 美馬は不満げに、いや、不思議そうに言った。

 たしかに、いつもの彼女ならば決して言わないセリフだ。


「仕方ないでしょう?」


 宮田は肩を竦めてからそう言って、視線を下に落とした。


 事実、初日からこの娘には『IF』の三割が喰われた。その夜、捕まえたこの娘を拘束するため、また二割……。たった一晩で、計半分の『IF』が消えうせたのだ。


 今までにこんな事は有り得なかった。


「……本当に信じられないほどの力だわ。こうして二晩目からはあたし自らが『丑の刻参り』をして、直で留めてるから何とかなってるけれど」


 それも何時までもつものか……。

 自信の全く見えない様子の宮田を見て、美馬は密かに眉根を寄せた。




『丑の刻参り』

 

 本来の作法であるならば、それは呪いたい相手に見立てた依り代――有名なのは藁人形だろう――それに五寸釘を打ち込むことで、相手を呪い殺すという(まじな)いの儀式だ。そして元来、この儀式は誰にも見つかってはならない。そうでなければ、呪いが術者本人にはね返ってくると言われている。


 だがその点を宮田は守れていない。最初の晩、烏水美禮と彼女と争っていた男性、その他大勢の前に姿を晒している。だが、特に何もないということは、姿を見られても問題ないという事だろう。伝承が全て真実のはずもない。


 だいたい、この儀式における作法とやらも、多岐にわたっている。


 頭に蝋燭を立てるだとか、白塗りにするとか様々あるが、神社の中で最も大きな木の幹に依り代と釘を丑三つ時に打ち付ける。ここは鉄板だ。これと、あらかじめ依り代には呪いたい相手の髪や爪、もしくは写真などを仕込んでおく。その二点さえ守れば、だいたい形になる。


 ちなみに丑三つ時とは現代では午前三時のことだ。

 つまり今、俺とアマネがいるこの時、この瞬間である。


 聞いてみれば、宮田自身も丑の刻参りなど初めてやったし、効果もまったく期待していなかったらしいが、『IF』の助力もあったのか、はたまた愛用の『五寸釘』が良かったのか、それとも元より『宮田アマネ』にそいういう霊的な素養が備わっていたのか、こうして効果はあった。


 だがそれも不完全なもので、いつの日かこの幽霊に押し負ける時が来ると感じているらしい。


 そもそも、依り代も使用せずに幽霊(本体)を五寸釘で打ち付けるなど前代未聞。この時点で、本来の丑の刻参りとは全く別モノに変わっているのだろう。なんらかの作用にて、目的の『幽霊の少女』の封じ込めには成功しているようだが……。





「そんなに力があるのか? たかだか死人ごときが?」


 怪訝そうな表情で美馬が訊ねる。

 彼にはどうしても信じられなかった。死者ごときが、生者を上回る力を持つという事が。


「……それなんだけれど、恐らく普通の人間にはあまり脅威ではないと思うの」


 宮田は神妙な顔つきでこの一週間で調べた記録――、古今東西のゴーストバスターたちの胡散臭い資料を思い出しながら、自らが立てた仮説を話し出す。


「古今東西、幽霊が生きている人間に害を及ぼすのは、決まってある特定の人間にだけ。それは自らより弱いモノたちだけよ。幼い子供や弱った女性、彼らの被害が圧倒的に多いわ。しかも、殺す力を持つ幽霊なんてほとんどいない。間接的なものに過ぎない。いいえ、それってもしかしたら幽霊の仕業ですらないのかも……」


 口元に手を当てた宮田が、一度ハッとした表情で言葉を濁した。自らの考えに訝しむような表情で思考を巡らせていた彼女は、その先は言わなかったが、やがて再び口を開く。


「ともかく、せいぜいが憑りつくとか、病気にするだとかその程度だわ。だから、本来はこの娘も大した力はないのかも」


 幽霊がこの女のようにちゃんと存在しているのなら、もっと呪い殺される事象があってしかるべきだ。だって、もっと沢山いるはずなのだ。この世を死ぬほど、誰かを死ぬほど恨み、憎んで死んでいった者たちが。それが出来ないと言うのならば、やはり幽霊というものには単に人を殺すという能力が圧倒的に足りていないのだ。恐れるほどの存在ではない……、弱い存在なのだ。


 宮田の言わんとすることに心当たりがあった美馬は、わずかに納得したように頷いた。


()()()()()()()()()()()()。お前の『イマジナリーフレンド』は、いわばお前の分身。『生霊』に近い、とも言えるな」




 宮田の『神能(シンノウ)』である『イマジナリーフレンド』、通称『IF』。

 それは創られた友。宮田が想像した姿を与えられる形無き幻。

 望めば彼らはいついかなる場所にも現れる、宮田の生涯で唯一無二の友達。群体で呼ぶこともあれば、一まとまりの大きな個体にすることも出来る。想像力の限り、どんな姿にでも創りかえることが可能だ。


 宮田が最近よく与える姿は、妖精のような容であった。羽をつけ飛ぶこともできる。行動範囲が広く、都内全域ならば宮田は彼らの目を通じて全てを見通すことが出来た。非常に強力な能力であり、もっぱら諜報活動が主な任務だ。


 宮田の場合、必ずしも『イマジナリーフレンド』と彼女の持つ精神病が直結していない。それは本来なら有り得ない話なのだが、彼女がこの神能を授かった経緯には色々と複雑な事情があった。元を正せば、彼女本来の神能を失ったことがきっかけである。

 だが、まったくの無関係というわけでもない。彼女のもつ病とは、『多重人格障害』――英語の頭文字を取り『MPD』と呼称されるものだ。


 しかし、それもすでに過去の話。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()


 そこまで考えて、美馬が眉を寄せたまま息をついた。

『犬桜隼』に『IF』を付けさせたのはある意味失策だった。傍にいるのが『死霊』では、相性的に『IF』では勝てまい。





「ええ、あたしの『イマジナリーフレンド』でも人を完全に殺しきることは出来ない。でも、大怪我をさせる事は可能だから、幽霊よりは与える影響力は強いと言えるわね。けれど、それであっても単独で殺しきる力は持ってないのだし――」


 生霊……、有名どころでは源氏物語の六条御息所がある。あれは創作された物語だが、平安時代より生霊という存在は認識されていたのだ。


(なるほど……、常日頃、IFという生霊を操っているアマネが、丑の刻参り擬きを成功させたのも当然と言ったところか)


 美馬は頷き、言葉を引き継いで言った。


「ある意味、生霊とも言えるIFは強力な神能だ。だが、それは厳密に言えば細かくちぎった分身に等しい。だから、まるごと一人分の死霊には押し負けるのか。……面白いな。死霊は生霊に強く、生霊は生きている人間に強い。だが、生きている人間は死霊に強い」

 

 三すくみだ。だが、結局のところ、一番強いのは生きている人間。いや、『完全なる一』である生きている人間だ。宮田は生きてはいるが不完全に過ぎない。


「だから、私はこの娘に負ける。これはどうあっても変わらない」


 宮田は静かに負けを認めた。






「しかし、今さらだが本当にコレは、『犬桜(イヌザクラ)芹奈(セリナ)』の幽霊で間違いないんだろうな?」


 美馬の疑念は最もだ。

 彼は大木に緩く絡みついている赤い縄を見つめたが、そこに『犬桜隼』の姉たる女性の姿など、視認できてはいない。


「長い黒髪に白い肌の美少女か。最近、物騒な騒ぎを起こしている殺人鬼もそんな風ではなかったか?」


 美馬は言外に『烏水(ウスイ)美禮(ミノリ)』ではないのか、と言いたいのだろう。


 確かに彼女は『黒屍病』患者であり、なんらかの能力を持っているのは間違いない。彼女の神能……、いや『呪祝(ギフト)』は未だに不明。だが、それを殺人に使っているのは容易に想像がつく。宮田の証言からも時期的に見ても、美馬が怪しがるのは当然のことだ。

 しかし、自分の患者を真っ先に疑う美馬の姿勢に対し、宮田が嫌悪を抱くのもそれまた当然のことだった。


 けれども、ここで一々突っかかっていてはお話にならない。宮田は、自らの気持ちに蓋をし、職務を優先するよう努めていた。


「間違いないと思うわ。写真で確かめたけれど、確かに美禮に似ている。けれど、この顔は『犬桜芹奈』のもので間違いない。少しばかり、年齢が若返っているような気がするけれどね」


 同僚に送ってもらった資料の中に含まれていた写真は一通りチェック済みだ。やはり、この幽霊に最も近しいのは、高校に入学したての時期に撮った写真の中の芹奈だった。


 同僚がニセ関西弁を駆使して説明するには、芹奈という女が死んだのはたしか二十歳を過ぎてのこと。精神を患い自宅の浴槽で自殺した。しかし、幽霊となって現れたセーラー服姿の彼女はやっぱり高校生にしか見えない。


 ……女がいつまでも美しくありたい、一番輝いた時期のままでいたい、という若作り願望は、ひょっとしたら死後も共通であるのかもしれない。女の業は深いな~と、宮田は他人事のように思った。


「私のほうこそ聞きたいのだけれど、本当にコレが『犬桜隼』の『神能』ではないの?」


「違う。ハイトの能力がこんな(ごみ)みたいな女の訳がない。もっと面白いはずだ」 


 見てもいない女をゴミ呼ばわりした男は、酷くつまらなさそうな表情を見せた。

 ――幽霊という存在は面白くても、芹奈という少女自体は俄然、気に食わないらしい。


「なにそれ? 根拠はあるの」


「ない。だがハイトはまだ覚醒していないし、これは違う。彼のものではない。俺には分かる。……そうだな、男の勘ってやつだ」


 即答だ。しかも、根拠が意味不明。随分と感情的になっている上司に対し、宮田は訝し気な視線を送った。


 なんだか、この男らしくない。


 それに気づいたのかは分からないが、美馬隆二は両手を黒のロングコートのポケットに突っ込み、やや不機嫌そうな表情のまま木の幹へと近づいていく。その美しい顔が瑞々しさを失った茶色の樹木に触れるほど近く寄せたところで、男は歩みを止めニヤリと邪悪に笑った。


 そして、蝶のようにピン止めされた見えざる女によく言い聞かせるかのように口を開く。

 ――その姿は、教師が生徒に授業をしているようにも見えた。


「ハイトは『うつ病』のなかでも『スチューデントアパシー』と呼ばれる症例だ。姉への罪悪感から発症しているが、うつ病は元来逃げの病。痛みや苦しみの元となる源泉から、なんとか逃げようとするはずだ。例え、それが最終的に自分の命を絶つという形になったとしてもな。彼の神能であるならば、きっと原因を遠ざけることはあっても自らに近づけるようなマネはしない」


「……そう言えば、そうね」


 それなりに納得できる医師としての観点だ。だが、そう言った男の目は爛々としており、いつもの気怠い雰囲気がまったくない。どこか私情……、私怨が入っているように見えた。


 ――まただ、と宮田は思った。

 こういう目をした奴を最近、私はどこかすぐ間近で見たことがある。


 疑問の答えはすぐそばにあった。宮田の瞳にだけ知覚ができる睨み合い。相手を殺したい、目障りだという殺意を宿した瞳。それはこの幽霊少女、『犬桜芹奈』が最初に宮田に向けた視線に他ならない。

 

 そして今、それは『犬桜芹奈』と『美馬隆二』という決して交わることのない両者の間で火花を散らしている。その殺意に濡れた両者の横顔には、姿形は似ておらずとも、どこか双子のように相通じるものがある。


 

 死してなお付きまとっていた愛しの弟より、このイカレた悪魔と根っこの部分が似ているなど、この幽霊少女に対して少しばかり同情の念が湧いてきた。


 それとも、美馬が生きながらにして幽霊のような忌まわしい存在なのだから、彼の方が似ていると言うべきか……。


 なんにせよ、あの少年のような男にこんな顔は出来ない。ならば、きっとコレと彼との間に明確な関係などないのだろう。ただ、彼にしてみれば、本当に家族運がなかったとしか言いようがない。


 しかし、本当にそれだけだろうかと宮田の胸に疑念が残る。


「ねえ、……」


 宮田はそこまで言ってから口を噤む。美馬は宮田のことも冷めた目で見据えていた。それに観念したように続きをのべる。その質問が、さらにこの男の機嫌を損ねるだろうことは分かっていたが。


「アンタ、犬桜隼の能力に影響受けているわけじゃないでしょうね?」


「……何?」


「とぼけないでよ。アンタ、その男に会ってからどう考えてもおかしいわよ。自分でも分かっているのでしょう?」


「……」


 美馬のうすい唇が歪み、男は考えるように俯いた。


 元はと言えば、『犬桜隼』にこの男が興味を持ったのは、彼に何らかの『神能』の兆しが見えたからではないのか? 男は、まだ隼に能力の発現を認めていない。だが、それは真実だろうか?


 本人も美馬ですらも気づかないほど弱い、無意識のような力で美馬の精神に影響を与えたという可能性はないだろうか。もっとも可能性は低いだろうが、元来『神能』は個々人によってまったく異なる能力が発現する。しかも精神の病が発現条件ということからか、多くの能力者は他者、もしくは自己の精神に何らかの影響を及ぼす力を持つことが多い。


 と、しばらくしてから、目の前の男の肩が不自然に揺れた。彼は、威嚇するかのように低い声で嗤いだす。


「ハハハハッ、やはり分かるか。確かに俺は可笑しいな」


 顔をあげた男はあっさりそう肯定し、次いで心底楽しそうな声を上げる。

 世の全てに憎しみを込めるような声。聞いた者全ての背筋を凍らせるような呪詛。それらが含まれた笑い声だけが闇夜に吸い込まれるようにして消えていく。そうして辺りに静寂が戻った頃、宮田の目をはっきりと見据えて彼は首を横に振った。


「だが、可笑しいのは主に俺のせいだ。……ハイトは関係ない」


「随分、庇うのね。お気に入りなの、アレが? アンタって本当はそっち系なの?」


「妬くなよ。実際に可愛いだろう。お前の数倍は可愛いし、俺もそっちの方面を考えてみる頃合いか」


 からかうように言った言葉は、嘘か誠か、逆におちょくるような返答で返された。本当に珍しい。彼がここまで個人に肩入れすると言うのは。だが、気に食わない。仮にも、今まで不倫をしてきたその相手にそんなことを言うだろうか? つくづくデリカシーの欠けた男だ。


 ニヤニヤした男の笑みに、さすがにカチンと頭にきた宮田は、苛立ちと共に同意を示すことにする。


「確かに可愛いかもね、チェリーっぽくて。でも、いいの? あんなのすぐに食われちゃうわよ。というか、お姉さん食っちゃおうかな? どうせ能力が発現したらアンタのお気に入りは手元に、『神捜研』に入れるつもりでしょう? あたしが手取り足取りじ~っくり、仕込んであげるわよ」


 もちろん、冗談だ。宮田とてこれ以上、あの娘から嫌われるようなことはしたくはない。

 が、彼女がその意を示すその前に、


「駄目だ。お前はアレに近づくな」

 

と、目の前の男が間髪いれずに拒絶をする。


「うわっ、ウザ。もう保護者気取りなわけ? アンタ、やっぱ本当にそっち……」


「黙れ。いいからお前はもうアイツには近づくな。分かったな?」


「……」


 思いのほか真剣な声音の男に驚き、反応が遅れる。無言の宮田に痺れをきらしたのか、美馬が大木から離れてこちらに戻ってくる。そして肩を強く掴まれる。ミシリと音が聞こえないのが不思議なほどだ。


「アマネ、返事は?」


 男は笑っていないし、歪んでいない。その表情は静かなものだった。しかし、同時に恐ろしい。


「……ええ、分かった。犬桜隼には近づかないわ」


「ああ、そうしてくれ」


 半ば言わされたその言葉に、表情は変わらないが美馬が確かに安堵したかのように宮田の目には映った。


 それは、やはりこの男らしくはなかった。




 けれども、これがもし仮に犬桜隼の『神能(シンノウ)』、もしくは『呪祝(ギフト)』であったとしても、やはり美馬隆二の神能が抑え込むのだろうから問題ない。


 宮田は夜空を見上げて星を眺める。一応、都内ではあるのだが、此処は暗闇に包まれていた。その中で、美しい光は確かに宮田の瞳に届いていた。宮田は惚れぼれとその瞬きを眺めながら、地上で蠢く人間の愚かさを思う。


(……その最たるものが、これか)


 幽霊。

 死して尚、願いを捨てられないモノ。


(しかし、これが幽霊というものなのか……)


 もっと、醜く。もっと、恐ろしいものだと思っていた。

 しかし、実際にこうして目にすると、自分の持つIFと何ら変わるところはない。



 それにしても、それなりにある『神捜研』の歴史の中でも、幽霊など出てきたのはこれが初めてのことだ。いつもは人間という名の化物たちを相手にしているが、その化物たちはどんなに人間離れした呪われた能力を持っていようとも切れば赤い血が流れるし、なにより殺せる相手だ。


 宮田はそれらを恐れた事は無い。それらを逃がすこともない。


 しかし、今回は相手がすでに死んでいる。


「面倒だな。なんで出てきたんだコイツは」


 最初は面白がっていた男も、すでに冷えきった視線を女がいる辺りに送っている。その隣で、同意するように宮田が腕組みをしていた。


「そうね、勝手に先に死んでいるのでは、私たちにはもうどうすることも出来ないものね」


「気に入らないな。自ら命を絶ったのならば、さっさとあの世とやらに逝けば良いものを。それをいつまでも未練がましく、弟の尻を追っ掛けまわすとは気色の悪い女だ」


「……アンタのその表現も、十分に気色悪いわ」


 げんなりとした表情で麗しの上司の横顔を見やって、宮田はその思考回路を疑った。


 やっぱりそっちに目覚めたのだろうか? あんなにも美形の愛人やらセフレやら、年下のパツ金美女を侍らせといてコレか。なんか皆、哀れすぎる。もちろん、この隣の悪魔あらため変態上司は除く。


 近づくなと先程言われて頷いたのだが、もし新人君が貞操の危機を訴えてきたらそっと逃がしてやろう。宮田は心に誓う。きっと他のメンバーに助けを差し伸べるような輩など、いはしないだろうから。 

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