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第68話 魔導冷房機
魔道具専門店の一角。
そこには最新式の魔導冷房機が展示されていた。
ルシエは足を止める。
説明書きを読み、ゆっくりと本体へ視線を移した。
「水魔法で冷却……」
「風魔法で送風……」
魔石。
魔法陣。
魔力回路。
内部構造を想像しながら、一つひとつを頭の中で組み立てていく。
(効率が悪い)
(冷却と送風を分ける必要があるのでしょうか)
(もっと簡略化できるのでは……?)
考え込む。
より少ない魔力で。
より単純な魔法式で。
もっと効率よく動かせるはずだ。
その時、ふと我に返る。
(……違う)
(今はこんなことを考えている場合じゃない)
今日は研究に必要な道具を探しに来たのだ。
ルシエは隣の棚へ移ろうと、一歩横へ動く。
同じタイミングでノエルも歩き出した。
肩が、そっと触れる。
「……っ」
ノエルだけが小さく息を飲んだ。
ルシエは不思議そうに首を傾げる。
「どうしました?」
「……何でもない」
ノエルは慌てて視線を逸らした。
(違う)
(今はそんなことを考える時じゃない)
ルシエのお母さんを救う。
そのために、自分はここへ来た。
頭では分かっている。
それでも。
心臓だけは、言うことを聞かなかった。




