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無能と呼ばれた私が、世界の魔法理論を書き換えます  作者: Atelier Lotus


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第5話 第二の魔素循環

 不死となったニコラスは。


 魔王領の中心へ。


 巨大な城を築いた。


 後に。


 人々から魔王城と呼ばれるその城は。


 ナルシス王国と。


 アウローラ魔導国の国境付近に。


 静かに建てられた。


 彼は。


 世界征服を望まなかった。


 他国へ侵攻することもない。


 人々へ服従を求めることもない。


 ただ。


 城へ籠もり。


 永遠に続く研究へ没頭していた。


 だが。


 彼が何もしなくても。


 世界は。


 ゆっくりと壊れ始める。



 本来。


 世界の魔素は。


 星の地核を起点として循環している。


 地核から放出された莫大な魔素は。


 星の自転による影響を受け。


 大地を巡り。


 海洋を巡り。


 大気を巡る。


 そして。


 植物や動物。


 人間をはじめとする。


 あらゆる生命へ取り込まれる。


 生物の体内へ入った魔素は。


 魔力回路によって。


 その生命固有の魔力へ変換される。


 魔法として使用された魔力は。


 やがて再び魔素へ還元され。


 自然界へ戻っていく。


 魔素には。


 互いに引き合う性質がある。


 だが。


 地核から放出された魔素は。


 星の自転によって。


 常に流動し続けている。


 そのため。


 一か所へ集まっても。


 その場へ留まり続けることはない。


 周囲の魔素を流れへ取り込みながら。


 世界を巡り。


 長い年月をかけて。


 再び地核へ帰っていく。


 地核から放たれ。


 世界を巡り。


 地核へ戻る。


 世界そのものが。


 一つの巨大な循環機構だった。


 しかし。


 魔王因子は。


 その流れへ割って入った。


 妖精誘導法によって。


 周囲の魔粒子を。


 絶え間なく引き寄せる。


 集めた異なる属性の魔粒子を。


 闇魔法によって強制的に融合させ。


 新たな魔素を生み出す。


 そして。


 生成された魔素を。


 再び周囲へ放出する。


 放出された魔素は。


 自然界の中で。


 再び四属性の魔粒子へ分かれていく。


 だが。


 それらの魔粒子は。


 妖精誘導法によって。


 再び魔王因子へ引き寄せられる。


 魔粒子を集める。


 融合させる。


 魔素を作る。


 周囲へ放出する。


 放出した魔素を。


 再び魔粒子として回収する。


 その循環が。


 昼も夜も。


 止まることなく繰り返される。


 こうして。


 世界には。


 本来の地核を起点とする魔素循環とは別に。


 魔王因子を起点とする。


 人工的な第二の魔素循環が誕生した。


 その影響は。


 誰にも止められなかった。


 本来。


 世界中の魔素は。


 地核を起点とする大きな流れに乗り。


 星を巡るはずだった。


 しかし。


 魔王因子は。


 その途中に存在する魔粒子を。


 強制的に奪い取る。


 さらに。


 新たに作り出した魔素を。


 周囲へ放出し続ける。


 その結果。


 魔王因子の周辺では。


 魔素濃度が。


 異常なほど上昇していった。


 魔素同士が引き合う性質によって。


 さらに周囲の魔素が流れ込む。


 だが。


 本来の循環へ戻るより早く。


 魔王因子が。


 再び魔粒子を回収する。


 本来は地核へ帰るはずだった魔素が。


 魔王因子の周囲だけを。


 何度も巡り始める。


 世界の魔素循環は。


 少しずつ歪んでいった。



 魔素の流れは乱れ。


 川は濁り。


 大地は侵される。


 森は。


 異常な速度で成長し。


 巨大な樹木が空を覆った。


 花は。


 季節を無視して咲き乱れ。


 草木は。


 魔素を蓄え続ける。


 やがて。


 その変化は。


 生き物にも及んだ。


 過剰な魔素を浴び続けた動物たちは。


 肉体を変質させ。


 理性を失っていく。


 狼は。


 巨大な牙を持つ魔獣となり。


 豚は。


 怪力を持つオークへ。


 霊長類は。


 ゴブリンやオーガへと姿を変えた。


 人々は。


 その異形の生命を。


 魔物と呼んだ。


 さらに。


 高濃度の魔素が。


 長い年月をかけて蓄積した土地では。


 周囲の地形や生態系までもが。


 魔法的に変質し始める。


 岩肌には。


 魔鉱石が生まれ。


 魔石が結晶化する。


 高濃度の魔素へ引き寄せられ。


 魔物が集まる。


 やがて。


 土地そのものが。


 巨大な迷宮へと変わっていった。


 後に。


 ダンジョンと呼ばれる場所の誕生だった。


 一方。


 人間も例外ではない。


 過剰な魔素を。


 短時間に取り込み続けた者は。


 体内の魔力回路が。


 処理しきれなくなる。


 魔力へ変換されなかった魔素は。


 魔力回路の内部へ残留する。


 残留した魔素同士は。


 互いに引き合い。


 次第に大きな塊となる。


 やがて。


 魔力回路の内壁へ沈着し。


 正常な魔素の流れを塞いでいく。


 流れが滞れば。


 新たに取り込まれた魔素も。


 その場所へ集まる。


 魔素が魔素を引き寄せ。


 閉塞が。


 さらに閉塞を生む。


 発熱。


 倦怠感。


 魔力回路の激痛。


 魔法を使用した際の。


 全身を引き裂くような苦痛。


 そして。


 やがて命を奪う病。


 後世。


 人々はそれを。


 魔素汚染と呼ぶことになる。


 ニコラスは。


 自らの手で。


 誰かを殺したわけではない。


 戦争も起こしていない。


 都市を焼き払うこともなかった。


 それでも。


 彼が生き続ける限り。


 魔王因子は。


 世界中の魔素を引き寄せ。


 本来の循環を歪め続ける。


 その存在そのものが。


 世界最大の災厄だった。


 静まり返った魔王城。


 書物へ目を落とすニコラスは。


 今日も研究を続けている。


 その背後で。


 誰にも気付かれぬまま。


 世界は。


 ゆっくりと。


 滅びへの道を歩み始めていた。

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