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第61話 母の容体
夜。
帰宅したルシエを迎えたのは、激しく咳き込む母・エレーヌの姿だった。
以前よりも顔色は悪い。
熱は何日も下がらず、食事もほとんど喉を通らない。
立ち上がるだけで息を切らし、起き上がっていられる時間も日に日に短くなっていた。
「ごめんね……心配かけちゃって」
そう言って微笑む母の笑顔は、痛々しいほど弱々しかった。
ルシエは笑い返そうとしても、言葉が出ない。
病状は、確実に進行している。
このままでは――。
そんな不安が胸を締め付ける。
自分一人で考えていても、答えは出ない。
ふと、一人の人物が頭に浮かんだ。
王立魔法学校で特別講義を行った、魔法医学の権威。
大魔導師にして、青色号。
ホルトン・ラヴォワジエ。
未分化魔素や魔力回路の研究では、世界最高峰と称される研究者だ。
あの人なら。
もしかしたら、母の病状を少しでも改善する方法を知っているかもしれない。
ルシエは静かに拳を握る。
「……お願いしてみよう」
藁にもすがる思いだった。
母を救える可能性があるのなら、どんなに小さな希望でも諦めたくない。
ルシエはホルトン・ラヴォワジエへの診察を依頼することを決意した。




