表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能と呼ばれた私が、世界の魔法理論を書き換えます  作者: Atelier Lotus


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
53/161

第51話 錬金学

 講堂は静まり返っていた。


 すべての視線が、教壇の上に置かれた一本の鉛筆へ注がれている。


 ジョルジュは短杖をゆっくりと構えた。


「まずは、こちらからです」


 淡い土色の魔法陣が足元へ浮かび上がる。


 杖先が鉛筆を指した。


 静かに魔力が流れ始める。


 鉛筆の芯が、わずかに光を帯びた。


 誰も息をしない。


 やがて黒い芯は、透き通る結晶へと姿を変えていく。


 光を受け、七色に輝いた。


「なっ……」


「嘘だろ……」


「ダイヤモンドだ……!」


 講堂が一気にざわめく。


 ジョルジュは鉛筆を持ち上げ、生徒たちへ見せた。


「鉛筆の芯は炭素でできています」


「そして、ダイヤモンドも同じ炭素です」


「錬金学では、物質の構造へ干渉することで、別の物質へ変換できます」


 ルシエは息を呑んだ。


(物質そのものを変えた……)


 ジョルジュは鉛筆を置く。


「では、もう一つ」


 今度は、小さな鉛の塊を取り出した。


「これは鉛です」


 再び土色の魔法陣が輝く。


 鉛を包み込む光。


 数秒後。


 灰色だった金属は、美しい黄金色へ変わっていた。


 一瞬の静寂。


 そして――。


「うおおおおおっ!!」


 講堂が大歓声に包まれる。


「金になった!」


「どうやったんだ!?」


「どんな術式なんだよ!」


「全然分からない!」


 しかし、その歓声とは別に、前列の上級生たちの表情は驚愕へ変わっていた。


「いや……待て」


「そんなはずがない」


 一人の生徒が立ち上がる。


「錬金学で出来るのは、せいぜい近い性質を持つ物質への変換までだ!」


「ここまで根本から物質を変えるなんて、不可能なはずだ!」


 別の生徒も続く。


「学院の教科書にも載ってないぞ……」


「こんなの、聞いたこともない」


「本当に土魔法だけでやったのか?」


 ざわめきはさらに大きくなっていく。


 ジョルジュは困ったように笑いながら、黄金の塊を机へ置いた。


「……と、その前に一つだけ」


 講堂が静かになる。


「先に言っておきます」


「金の人工錬成は違法です」


 一瞬の沈黙。


「真似しないでくださいね」


 講堂は爆笑に包まれた。


「先に言えよ!」


「危うくやるところだった!」


「できるわけないだろ!」


 ジョルジュも声を上げて笑う。


「安心してください」


「皆さんが今すぐ真似できるほど、錬金学は簡単ではありません」


 そう言って黄金へ視線を落とした。


「……もっとも」


「これを”不可能”だと言われ続けたからこそ、私は研究を続けたんですけどね」


 その一言に、講堂は再び静まり返った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ