表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能と呼ばれた私が、世界の魔法理論を書き換えます  作者: Atelier Lotus


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
52/161

第50話 ジョルジュ・デュラン

 マリゴーの講義が終わると、一人の男性が教壇へ上がった。


 白衣を羽織ったその男は、鍛えられた体つきとは裏腹に、どこか親しみやすい雰囲気をまとっていた。


 手には一本の短杖。


 教壇へ立つと、軽く頭を下げる。


「初めまして」


「錬金学を専門としております、ジョルジュ・デュランです」


 穏やかな声が講堂へ響く。


「今日は、錬金学についてお話しします」


 黒板へ大きく文字を書く。


 『錬金学』


 続けて、その横へ四つの文字を書き並べた。


 火。


 風。


 水。


 土。


 ジョルジュは生徒たちを見回す。


「皆さんは、四大属性魔法について、どのような印象を持っていますか」


 一人の生徒が手を挙げた。


「火魔法が一番難しいです」


「風魔法も結構難しいですね」


「水は普通くらい」


「土は一番簡単です」


「そうですね」


 ジョルジュは頷く。


「一般的には、その認識で間違っていません」


 黒板へ矢印を書き加えた。


 火


 ↓


 風


 ↓


 水


 ↓


 土


「現在の魔術界では、火魔法が最も難しく、土魔法が最も習得しやすいと考えられています」


 生徒たちは当然のように頷く。


 誰も疑問を抱かない。


 それが世界の常識だからだ。


 ジョルジュは苦笑した。


「ちなみに」


「私は土魔法しか使えません」


 その一言で、講堂がざわついた。


「えっ?」


「土だけ?」


「それで魔導師なの?」


 驚きの声があちこちから上がる。


 さらに後方では、小さな囁きが聞こえてきた。


「土って一番簡単な属性だろ」


「地味だし」


「岩飛ばすくらいしか思いつかない」


 ジョルジュは、その声を咎めることなく、どこか懐かしそうに笑った。


「ええ」


「学生時代は、私もよくそう言われました」


 少し肩をすくめる。


「土魔法は最弱」


「地味」


「才能がない者の属性」


「散々でしたよ」


 講堂から笑いが起こる。


 ジョルジュもつられて笑った。


「でもね」


 穏やかな笑みを浮かべたまま、生徒たちを見渡す。


「私には、その考えが間違っていると証明してくれた先生がいました」


 一拍置く。


「だから今日は、私が皆さんに証明しましょう」


 講堂が静まり返る。


 ジョルジュは白衣のポケットへ手を入れた。


「鉛筆は持っていますか?」


 生徒たちは顔を見合わせる。


「持ってますけど……」


「何に使うんですか?」


 ジョルジュは口元を緩めた。


「まあまあ」


「とりあえず見ていてください」


 そう言って一本の鉛筆を取り出し、教壇の上へそっと置く。


「土魔法が最弱だと思うのなら――」


 短杖を静かに構えた。


「見せましょう」


 その瞬間。


 講堂中の視線が、一斉に一本の鉛筆へ集まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ