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無能と呼ばれた私が、世界の魔法理論を書き換えます  作者: Atelier Lotus


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第34話 複合魔法式

 実技試験が終わった翌日。


 王立魔法学校。


 朝のホームルーム。


 担任のギデオン・クラウゼは教壇へ立つと、生徒たちを冷ややかな目で見渡した。


「理論試験と実技試験の結果を見ていて思ったことがある」


 教室が静まり返る。


「どうやら、この中には少し成績が良かった程度で、自分に才能があると勘違いしている者がいるようだ」


 生徒たちが顔を見合わせる。


 レオンは鼻で笑った。


(主席の無能に言ってるんだろ)


 ギデオンは淡々と続ける。


「試験で高得点を取ることと、魔法理論を理解することは別物だ」


「知識を暗記しただけでは、魔法研究者にはなれん」


 そう言うと、黒板へ歩み寄る。


 白いチョークを手に取り、一つの魔法式を書き始めた。


 一本。


 二本。


 三本。


 複数の魔法式が重なり合い、一つの巨大な術式を形成していく。


 教室がざわめいた。


「何だ、あれ……」


「見たことないぞ」


「全然読めない」


 十分ほどで書き終えたギデオンは、静かに振り返る。


「複合魔法式」


「複数の魔法式を組み合わせ、一つの高度な術式として構成する理論だ」


 教室がさらにざわつく。


「本来は大学院で研究される内容だ」


 その一言で、生徒たちは言葉を失った。


 大学院。


 それは魔法学校卒業後、ごく一部の優秀な者だけが進学を許される研究機関である。


 一年生が扱う内容ではない。


 ギデオンは腕を組んだ。


「もちろん、解ける必要はない」


 一拍置く。


 口元だけがわずかに歪む。


「だが」


「自分に才能があると思う者は」


「解けるものなら解いてみろ」


 教室は静まり返った。


 誰一人、ペンを動かせない。


 ノエルでさえ眉をひそめる。


(大学院レベルか……)


(さすがに一年生へ出す問題じゃない)


 レオンは数式を眺めるだけで頭を抱えた。


「意味が分からねえ……」


「これ、本当に人が解くのか?」


 他の生徒たちも同じだった。


 複雑に絡み合った魔法式を前に、完全に思考が止まっている。


 そんな中。


 ルシエだけは黒板をじっと見つめていた。


(なるほど……)


(複合魔法式ですか)


 驚きはなかった。


 複雑に見える魔法式も、一つひとつ分解していけば、基本術式の組み合わせに過ぎない。


(制御術式)


(変換術式)


(安定術式)


(ここで魔力回路を接続して……)


 頭の中で、一つずつ整理していく。


 やがて、小さく頷いた。


(解けそうですね)


 静かにペンを手に取る。


 教室中が立ち尽くす中。


 紙へ文字を書く音だけが、小さく響き始めた。


 ギデオンは、その音へゆっくり視線を向ける。


 そして、その席がルシエのものだと気付くと、わずかに眉をひそめた。


(……また、お前か)


 その表情には、苛立ちが滲んでいた。

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