第25話 知識だけの無能
王立魔法学校へ入学して数日。
本格的な授業が始まった。
最初の実技訓練。
「では、初歩属性魔法を発動してみなさい」
教師の指示に従い、生徒たちは次々と魔法を放つ。
「ファイア」
小さな火球が浮かぶ。
「ウォーター」
透明な水球が宙に現れる。
風。
土。
威力に差こそあれ、全員が問題なく魔法を発動させていた。
そして――。
「ルシエ・フローレンス」
名前を呼ばれ、ルシエは一歩前へ出る。
深く息を吸い、魔力を練る。
頭の中で魔法式を組み上げる。
「……ファイア」
静かな声が響く。
しかし。
何も起こらない。
もう一度、魔法式を組み直す。
「ファイア」
結果は同じだった。
火花一つ生まれない。
教師は表情一つ変えずに告げる。
「次」
それだけだった。
◇
午後。
今度は魔法理論学。
授業の終わりに、小テストの結果が発表される。
「今回の最高得点は、ルシエ・フローレンス」
教室がざわつく。
「またあいつか」
「全教科満点らしいぞ」
教師から返された答案には、一切の減点がない。
記述問題まで完璧だった。
だが、その成績が称賛されることはなかった。
「あいつさ」
「知識だけの無能だよな」
「はいはい、知識自慢ね」
「頭でっかちなだけだろ」
「お勉強なら、よそでやってくれよ」
「ここは魔法学校だぞ」
「魔法も使えないのに満点とか、笑える」
教室に笑い声が広がる。
ルシエは何も言い返さなかった。
ただ静かに、次の授業で使う魔法理論の教本を開く。
彼女の視線は、周囲の嘲笑ではなく、その先にある”真理”だけを見つめていた。




