第22話 護身魔法
初めての護身魔法の授業。
王立魔法学校の演習場へ、一年生たちが集められていた。
担当教師は整列した生徒たちを見回し、静かに口を開く。
「本日から護身魔法の実技を始める」
「護身魔法は、伝統魔法から発展した魔法体系だ」
教師は一本の木剣を取り出した。
「攻撃するためではない。自分や仲間の命を守るための魔法だ」
生徒たちは真剣な表情で耳を傾ける。
「代表的な対人魔法は四つ」
「武装解除」
教師が軽く杖を振る。
見えない衝撃が木剣を弾き飛ばした。
「足払い」
今度は足元へ魔素が走り、立てかけてあった人形が勢いよく倒れる。
「呪文返し」
教師は助手が放った小さな火球へ魔素をぶつけた。
火球は一瞬で形を崩し、その場で霧散する。
「最後に、対魔魔法の基本となる吹き飛ばし」
教師が掌を前へ向ける。
鈍い衝撃音。
訓練用の藁人形が数メートル先まで吹き飛ばされた。
演習場がざわめく。
「すげぇ……」
「思ったより実戦的だ」
教師は頷いた。
「いずれも、基本は伝統魔法だ」
「魔素へ直接干渉し、相手を押す、逸らす、崩す。その応用が護身魔法である」
「決して威力を競う魔法ではない。状況を制し、生き残るための技術だ」
説明を終えると、生徒たちは二人一組へ分かれ始めた。
ルシエも杖を握り直す。
すると、一人の男子生徒が歩み寄ってきた。
レオン・ヴァルハイト。
理論試験では主席を逃し、実技では学年屈指の実力を持つ少年だった。
「主席様」
皮肉のこもった笑みを浮かべる。
「せっかくだ。相手をしてもらおうか」
周囲の視線が集まる。
教師が開始の合図を出した。
「始め!」
その瞬間。
レオンの杖が閃く。
「足払い」
足元へ魔素が奔る。
ルシエは咄嗟に杖を構えた。
「押圧……!」
前方へ魔素を放つ。
しかし。
威力が足りない。
レオンの魔法を押し返すことはできず、軌道をわずかに逸らしただけだった。
「きゃっ!」
足を払われ、ルシエはその場へ尻もちをつく。
演習場のあちこちから笑い声が漏れた。
「主席でもその程度か」
「やっぱり実技は駄目なんだな」
レオンは余裕の笑みを浮かべたまま、再び杖を向ける。
「もう一発いくぞ」
その一言に、ルシエは唇を強く噛み締めた。
――やっぱり、足りない。
理論だけでは勝てない。
魔素へ干渉する感覚も、出力も、まだ届かない。
レオンは鼻で笑う。
「大したことないな」




