表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能と呼ばれた私が、世界の魔法理論を書き換えます  作者: Atelier Lotus


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/161

第20話 無能

 属性適性検査が終わった翌日。


 王立魔法学校では、一人の新入生の話題で持ちきりだった。


「聞いたか?」


「主席なのに属性適性ゼロらしいぞ」


「四属性全部反応しなかったって」


 廊下。


 食堂。


 図書館。


 噂は瞬く間に校内へ広がっていく。


「本当に主席なのか?」


「親が賢者だから優遇されたんじゃないか?」


「アルフォンス先生の娘だからな」


「七光りってやつだろ」


「実力じゃなくて、コネ入学じゃないのか?」


 誰も真実など知らない。


 それでも、人は都合の良い答えを見つける。


 主席だった少女は、一夜にして『無能』となっていた。



 朝の講義。


 一人の男性教師が教室へ入ってくる。


 四十代半ば。


 乱れのない黒髪。


 眼鏡の奥には、冷静な眼差しが宿っていた。


「今日から諸君らの担任を務める」


「ギデオン・クラウゼだ」


 短い自己紹介だけで教室は静まり返る。


 厳格。


 その一言がよく似合う人物だった。


 ギデオンは教壇へ立つと、生徒たちを見回した。


「私は研究者だ」


「故に、結果を重んじる」


 教室には誰一人として私語をする者はいない。


「理論は重要だ」


「だが、理論だけでは魔術師とは呼べない」


 ルシエは静かに顔を上げた。


「どれほど美しい理論であろうと、自ら証明できなければ意味はない」


「実験し、再現し、証明する」


「それが研究者だ」


 ギデオンの視線が、一瞬だけルシエへ向く。


「証明できない理論に、価値はない」


 教室が静まり返る。


 ルシエは何も言い返せなかった。


 その言葉は間違っていない。


 研究とは、仮説を立てるだけでは終わらない。


 証明して初めて価値を持つ。


 父も、いつもそう言っていた。



 その日の午後。


 最初の実技授業が始まった。


「まずは基本となる属性魔法だ」


 教師は火球魔法の魔法式を黒板へ描く。


「各自、一度発動してみなさい」


 生徒たちは順番に前へ出る。


 火花が散る者。


 小さな炎を生み出す者。


 失敗する者もいたが、それでも火属性適性を持つ者は、何らかの反応を見せていた。


「次」


「ルシエ・フローレンス」


 ルシエは杖を握り、前へ出る。


 魔法式を頭の中で組み立てる。


 魔力を流す。


 だが。


 何も起こらない。


 もう一度。


 もう一度。


 結果は同じだった。


 炎は生まれない。


 火花すら散らない。


 教室の後ろから、小さな笑い声が聞こえた。


「やっぱり使えないんだ」


「主席なのに?」


「座学だけかよ」


 ギデオンは表情一つ変えず、名簿へ記録を書き込む。


「発動失敗」


「次」


 それだけだった。


 励ましもない。


 慰めもない。


 ただ結果だけが記録される。


 火属性。


 水属性。


 風属性。


 土属性。


 すべて試した。


 しかし、ルシエの前では一度も魔法は発動しなかった。


 その日の実技評価は、当然ながら最下位だった。



 授業を終え、ルシエは一人で廊下を歩いていた。


 すれ違う生徒たちが、小声で囁く。


「見ろよ」


「あれが主席」


「無能なのに?」


「なんであんな奴が主席なんだ」


 誰も面と向かっては言わない。


 けれど、その言葉は確かに耳へ届いていた。


「無能」


 たった二文字が、胸へ深く突き刺さる。


 ルシエは立ち止まることなく歩き続けた。


 ぎゅっと拳を握り締めながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ