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無能と呼ばれた私が、世界の魔法理論を書き換えます  作者: Atelier Lotus


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133/161

第131話 魔素は魔素を引き寄せる

 ノエルは。


 過去の研究記録を読み返していた。


 同期生成魔素を。


 模擬魔力回路へ安全に流すことはできた。


 だが。


 沈着した魔素は。


 まったく動かない。


 流量を強引に上げれば。


 閉塞を押し流せる可能性はある。


 しかし。


 それでは。


 傷ついた魔力回路まで。


 一緒に壊してしまう。


「力を加えずに」


「沈着した魔素を動かす方法……」


 何冊もの記録をめくる中で。


 ノエルは。


 一つの記述へ目を留めた。


『魔素は、互いに引き合う性質を持つ』


 魔素は。


 完全に独立して存在しているわけではない。


 近くに別の魔素が存在すれば。


 互いに感応し。


 引き寄せ合う。


 しかし。


 自然界の魔素が。


 一か所へ集まったまま。


 動かなくなることはない。


 世界の魔素は。


 星の地核を起点として。


 大地。


 海洋。


 大気。


 生物。


 あらゆる場所を巡っている。


 地核から放出された魔素は。


 星の自転による影響を受け。


 常に流動し続ける。


 そのため。


 一か所へ魔素が集まっても。


 星を巡る大きな流れへ取り込まれ。


 周囲の魔素を引き寄せながら。


 再び地核へ帰っていく。


 魔素同士が引き合う性質と。


 止まることのない循環。


 その二つによって。


 世界の魔素は流れ続けている。


 ノエルは。


 模擬魔力回路へ視線を向けた。


「沈着した魔素も」


「完全に動かなくなったわけじゃない」


「近くに安定した流れを作れば」


「その流れへ引き寄せられるかもしれない」


 ルシエも。


 研究記録を覗き込む。


「同期生成魔素を」


「ただ通過させるのではなく」


「沈着した魔素が感応できる流れにするんですね」


「ああ」


「押し出すんじゃない」


「流れへ引き寄せる」


 二人は。


 実験条件を組み直す。


 同期生成魔素の濃度。


 流速。


 閉塞部分へ触れる時間。


 そして。


 エレーヌの魔力との同期率。


 濃度を上げすぎれば。


 患者の魔力回路へ負担を与える。


 流速を上げすぎれば。


 閉塞部分へ十分に感応しない。


 反対に。


 遅すぎれば。


 生成魔素そのものが。


 回路内へ滞留する危険がある。


 一度目。


 濃度を上げる。


 変化なし。


 二度目。


 流速を下げ。


 閉塞部分へ触れる時間を延ばす。


 それでも。


 変化はなかった。


 三度目。


 流速は変えず。


 閉塞部分へ入る直前だけ。


 同期生成魔素の密度を。


 僅かに高める。


 淡い白色の魔素が。


 模擬回路の中を流れていく。


 閉塞部分へ到達する。


 しばらく。


 何も起きなかった。


 だが。


 観測器に表示された数値が。


 僅かに揺れる。


「今のは……」


 ノエルが。


 観測器へ顔を近づけた。


 沈着した魔素の表面が。


 ほんの僅かに。


 同期生成魔素の流れへ向かって動いていた。


 ルシエも。


 すぐに測定結果を確認する。


「動きました」


「閉塞していた魔素が」


「同期生成魔素の流れへ」


「反応しています」


 力で剥がしたのではない。


 外側から押したのでもない。


 止まっていた魔素へ。


 新しい循環を示した。


 沈着していた魔素が。


 自ら。


 その流れへ戻ろうとしていた。

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