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無能と呼ばれた私が、世界の魔法理論を書き換えます  作者: Atelier Lotus


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第129話 患者自身の魔力

 ルシエの家。


 寝台では。


 エレーヌが静かに横になっていた。


 以前よりも。


 眠っている時間が長くなっている。


 呼吸も浅い。


 大聖女ミュゲの治療によって。


 一時は落ち着いていた症状が。


 少しずつ戻り始めていた。


「お母さん」


「ごく少量だけ」


「魔力を採取させてください」


 エレーヌは。


 ゆっくりと目を開く。


「ええ」


「好きに使ってちょうだい」


「無理はさせません」


「本当に少しだけです」


 ルシエは。


 エレーヌの手へ。


 小さな採取術式を重ねた。


 淡い光が灯る。


 魔力回路から。


 ごく僅かな魔力が抽出され。


 観測器へ送られていく。



 実験室。


 観測器には。


 エレーヌの魔力波が表示されていた。


 弱い。


 そして。


 不規則に乱れている。


 一定の周期を保てず。


 何度も大きく揺らいでいた。


 魔力回路の閉塞。


 長年の魔素汚染。


 衰弱した身体。


 その全てが。


 魔力波へ表れている。


 ルシエは。


 以前の観測記録と見比べた。


「前に測定した時より」


「さらに弱くなっています」


 ノエルも。


 観測器を見つめる。


「これほど乱れた魔力を」


「基準にできるのか?」


「確かめます」


 ルシエは。


 採取した魔力を。


 中間領域へ流した。


 周囲から。


 ごく少量の自然魔素を集める。


 エレーヌの魔力と。


 自然魔素が感応する。


 だが。


 基準となる魔力波が乱れるたび。


 生成魔素も。


 同じように形を変えていった。


 弱くなれば。


 生成魔素も弱くなる。


 周期が乱れれば。


 生成魔素も同時に乱れる。


 遅れはない。


 ずれもない。


 固定された波を。


 無理に維持しようとしているのではない。


 エレーヌの魔力と。


 同じ変化を続けている。


 ノエルの表情が変わった。


「乱れていても」


「同期は崩れていない」


「はい」


「私たちが作るのは」


「正常な魔力ではありません」


「お母さんの今の魔力と」


「同じように変化する魔素です」


「でも」


 ノエルは。


 観測器に表示された。


 小さな波を指差す。


「基準となる魔力そのものが」


「これほど弱い」


「弱くても構いません」


 必要なのは。


 強い魔力ではない。


 乱れのない。


 整った魔力でもない。


 患者本人の身体が。


 自分のものだと認識できる。


 その人固有の変化。


「必要なのは」


「強さではありません」


「お母さん自身の魔力であることです」


 観測器の中で。


 二つの魔力波が。


 同じように揺れている。


 弱く。


 不安定で。


 それでも。


 確かに。


 エレーヌだけが持つ魔力だった。


 治療に必要な基準は。


 手に入った。

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