第128話 治療への転用
翌日。
実験室。
ルシエとノエルは。
母の治療法を描いた図を。
机の上へ広げていた。
「無属性魔法の術式を」
「そのまま使うわけではありません」
ルシエは。
図の中央へ。
患者の身体を表す円を描く。
「基準となる魔力は」
「魔法を使う術者ではなく」
「治療を受ける患者本人から抽出します」
患者本人の魔力を。
ごく少量だけ取り出す。
その魔力を使い。
中間領域へ集めた自然魔素を感応させる。
必要量の生成魔素が完成した時点で。
自然界との接続を遮断する。
そこまでは。
無属性魔法と同じ。
だが。
その先が違う。
「生成魔素を」
「魔法式へ供給するのではなく」
「患者の自律神経へ同期させます」
ノエルは。
ルシエが描いた図を目で追った。
「患者の状態が変われば」
「生成魔素も同時に変わる」
「はい」
「完全に同じ魔力ではありません」
「ですが」
「患者本人の魔力と」
「常に同じ変化を続けます」
その生成魔素を。
患者の魔力回路へ。
少量ずつ流していく。
自然魔素を。
そのまま傷ついた回路へ入れるのではない。
患者の身体に合わせて変化する。
新しい流れとして送り込む。
ノエルは。
完成した図を見つめた。
「外で作った魔素を」
「患者自身の魔力に同調した流れとして」
「身体へ通すのか」
「はい」
「それなら」
「身体から完全な異物とは」
「判断されにくいはずです」
ノエルは。
患者の魔力回路を表した線を指でなぞる。
「でも」
「身体が受け入れられるだけでは」
「治療にはならない」
「はい」
ルシエは頷いた。
「次に確かめるべきなのは」
「この流れが」
「沈着した魔素へ作用するかどうかです」
患者の身体へ。
安全に魔素を通す方法は見えた。
だが。
長年。
魔力回路へ沈着した魔素が。
その流れによって動くかは。
まだ分からない。
無属性魔法を。
治療へ転用するための。
最初の設計図が完成した。
しかし。
それはまだ。
母を救う魔法の。
入口に立っただけだった。




