第127話 最後の欠けた技術
無属性魔法の実験に成功したあと。
ルシエは。
以前にまとめていた、母の治療に関する研究ノートを開いた。
大聖女ミュゲの治療によって。
一時は落ち着いていたエレーヌの症状も。
少しずつ。
元の状態へ戻り始めている。
眠っている時間は長くなり。
起きている間も。
苦しそうに呼吸を乱すことが増えていた。
残された時間は。
決して長くない。
ルシエは。
何度も読み返した頁を開く。
『患者本人の魔力を基準とする』
『魔力回路へ沈着した魔素を、患者が受け入れられる状態へ変える』
『処理しきれない余剰魔素は、魔水晶へ回収する』
母の治療法について。
そこまでは考えられていた。
だが。
どうしても。
一つだけ解決できない問題が残っていた。
外部に存在する自然魔素を。
どうすれば。
患者本人の魔力に近い状態へ変えられるのか。
完全に複製しようとすれば。
完成まで数十年かかる。
だから。
この治療法は。
仮説のまま止まっていた。
だが。
今は違う。
完全に同じ魔力を作る必要はない。
患者本人の魔力と。
外部で作り出した生成魔素を。
同じ変化へ同期させればよい。
患者の身体が変化すれば。
生成魔素も。
同時に変化する。
それなら。
傷ついた魔力回路へ流しても。
患者の身体に。
完全な異物とは判断されにくい。
ルシエは。
研究ノートに残されていた空白へ。
完成したばかりの同期術式を書き加えた。
止まっていた治療理論が。
再び動き始める。
「最後に足りなかった技術が」
「完成したんです」




