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デモンズ・リベレーション~俺は転生して魔人となり、くそったれな世界に叛逆する~  作者: 宇月ナギ


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06話 魔人覚醒

 視界の端で、世界が歪む。


 空気の中に、見えないはずの“何か”が

 浮かび上がる。


 黒い粒子。


 煙のように揺らめく存在。


「っ……!?」


 同時に。


 左目が、焼けるように熱を帯びた。


「ぐっ……あああ……!」


 思わず声が漏れる。


 視界の左側が、明らかに違う。


 見える。


 魔力の流れ。


 そして、瘴気。


 はっきりと、形を持って。


 ……これは?


 直感で理解する。


 瘴気だ。


 その全てが……


 俺に向かって、集まってくる。


「来るな……!」


 拒絶する。


 だが止まらない。


 吸い込まれるように、体に流れ込んでくる。


「がっ……!!」


 全身が軋む。


 骨が、悲鳴を上げる。


 肉が、引き裂かれる。


「な、なんだ……!?」


 神官の声が遠くで響く。


 もう、どうでもいい。


 痛み。


 熱。


 怒り。


 全部が混ざり合って……


 限界を、超える。


「——ああああああああああああああ!!!!」


 絶叫が、空気を震わせた。


 右肩が、弾ける。


 失われていたはずの部分。


 そこから、何かが溢れ出す。


 黒い瘴気。


 それが、形を作る。


 骨。


 筋肉。


 皮膚。


 ——だが、それは人間の形ではなかった。


 蠢く腕。


 液体のように揺らめきながら——


 刃へと変形する。


 次の瞬間には、槍。


 さらに、異様に歪んだ刃。


 理解する。


 この右腕は、形を持たない。


 どんな武器にも、変わる。


「ひ……ッ」


 誰かが息を呑む。


 そしてもう一つ。


 左腕。


「ぐっ……!」


 筋肉が膨れ上がる。


 骨がきしみをあげる。


 皮膚が裂け。


 そこから現れたのは——


 巨大な鉤爪。


 禍々しく歪んだ、異形の腕。


 指の代わりに生えた、爪。


 握る、ではなく——“引き裂く”ための形。


「……これが」


 息を吐く。


 痛みは、もう感じない。


 代わりに。


 身体が、軽い。


 溢れている。


 力が。


 ……これなら守れる。


 壊せる。


 全部。


「魔人……だと……?」


 神官の声が震える。


 明らかな恐怖。


「そんな……この場で……!」


 遅い。


 全部。


 遅すぎる。


 視線を向ける。


 レイジア教の神官たちへ。


 その瞬間。


 初めて、はっきりと分かった。


 こいつらが、敵だ。


「目障りだ」


 低く、言い放つ。


「え……?」


 誰かが固まる。


「邪魔だ」


 一歩、踏み出す。


 地面が砕ける。


 ただ歩いただけで。


 身体が、違う。


 感覚が違う。


 力の桁が違う。


 こいつらなんか相手にならない。


 そう確信する。


 その刹那…


 カルラは、動いた。


 地面を踏み抜く。


 それだけで、土が砕けた。


 ……強すぎる。


 自分でも分かる。


 今の身体は、さっきまでの自分とは別物だ。


 力が溢れている。


 抑えきれないほどに。


「ば、化け物……!!」


 神官の一人が後ずさる。


「放て!!」


 別の神官が叫ぶ。


 次の瞬間……


 矢が、放たれた。

 数拍遅れて魔術も飛んでくる。


 だが。


 遅い。


 そう思った時には、もう動いていた。


 右腕が巨大な黒い刃へと変わる。


 それを…


 軽く振るう。

 ただ、それだけで。


 ——ガギンッ!!


 矢が、弾け飛んだ。


 魔術も、左腕の掌で叩き落とした。


 すると、初めから魔術などなかったかのように

 霧散する。


「なっ……!?」


 ざわめき。


 止まらない。


 一歩。


 踏み出す。


 次の瞬間には——


 目の前にいた。


「ひっ……!」


 神官の顔が歪む。


 左腕を振るう。


 巨大な鉤爪が、空気を裂く。


 ——ズンッ!!


 遅れて、音が追いついた。


 神官の身体が、横に吹き飛ぶ。



 そのまま、地面に叩きつけられた。


 だが、軽い?


 違和感を覚える。


 今の一撃は確かに直撃した。


 だが、手応えが妙だった。

 魔術のときもそうだったが…


 肉を切り裂いた感触とは別に——


 “何かを削り取った”ような感覚が残る。


 視線を向ける。


 倒れた神官。


 動かない。


 だが、それだけじゃない。


 ……魔力の反応が弱い。


 左目に熱が走る。


 瘴気とともに見えている“それ”。


 体内を巡る魔力の流れ。


 それが明らかに減衰している。


 今の一撃で……削り取ったのか?


 思考が、一瞬だけ冴える。


 もう一度、左腕を見る。


 禍々しく歪んだ鉤爪。


 血に濡れている。


 だが、それだけじゃない。


 爪の表面に、微かに揺らめく“何か”。


 瘴気に似ているが——


 もっと濃い。


 凝縮されたエネルギー。


 ……喰ってるのか。


 直感で理解する。


 この腕は、ただ引き裂くためのものじゃない。


 触れた対象の“魔力を喰う”。


 自分でも理解が追いつかない。


 だが、妙に納得している。


 この力は異常だ。


 ただの“魔人”の域を越えている。


「ひっ……!」


 別の神官が後ずさる。


 その様子を見ながら。


 カルラは、無意識に左腕を持ち上げた。


 触れれば……削れる。


 生命力ではない。


 魂でもない。


 より直接的なもの。


 戦うための力。


 ——魔力。


 それを奪われれば。


 戦えない。


 結論は、単純だった。


「終わりだ」


 踏み込む。


 神官の悲鳴。


 やはり遅い。


 鉤爪が振るわれる。


 一撃。


 二撃。


 三撃。


 触れるたびに。


 確かに感じる。


 流れ込む感覚。


 奪った力が、こちらに“馴染む”。


 喰った分の力が……増えてる。


 ただの狩りのようだ。


 これは戦いにすらなっていない。


「やめろ!!」


 別の声。


 だが、止まらない。


 次々と襲いかかってくる兵。


 一人は剣を携えて。


 一人は槍を突き出して。


 俺の右腕が、槍へと変わる。


 薙ぎ払う。


 それだけで兵が、宙に浮いた。


 宙に浮いた兵へ跳躍して左腕で

 地面に向けて叩きつける。


 地面が砕ける。


 動かない。


 次。


 また次。


 止まらない。


「嫌だ!!嫌だああああ!」


 神官の叫び。


 だが——


 もう止められない。


 自分でも、分かっている。


 力が、行き過ぎている。


 でも、止める理由がない。


 こいつらは、全部奪った!

 何もかも、俺から!


 怒りが、静かに燃え続ける。


 視線を巡らせる。


 逃げる者。


 崩れる者。


 腰を抜かす者。


 その中で。


 一瞬だけ引っかかった。


 ……いない?


 違和感。


 一瞬だけ背筋が冷えた。


 一人、足りない。


 さっきまでいたはずの…

 一人、他より強そうな奴が…


 捕らえるときに剣を俺の喉元に添えていた兵が。


 見当たらない。


「……逃げたか」


 低く呟く。


 視線を遠くへ向ける。


 森の向こう。


 すでに気配が遠い。


 間違いなく普通の兵じゃない。


 撤退の判断も早い。


 動きも無駄がない。


 一瞬だけ考える。


 ……追いかけるか?

 今の俺なら追いつけない速さじゃない。


 しかし、その思考を叩き潰すように…


「カルラ!!」


 カイルの声が響く。


 はっとする。


 炎の中。


 まだ燃えている。


 ネリアが、咳き込んでいる。


 レイカも。


 ……違うだろ、何してるんだ俺は!


 敵を倒すのが先じゃない。


 守るのが先に決まってるだろう!


 右腕が変形する。


 大きな扇のような形状に変わる。


 そして、力いっぱい扇ぐ。


 一閃。


 ——ゴウッ!!


 風圧だけで、炎が吹き飛んだ。


「けほっ……!」


 ネリアが空気を取り戻す。


「お兄ちゃん……」


 弱々しい声。


「動くな!」


 叫ぶ。


「今、助ける!!」


 縄へと鉤爪を突き立てる。


 力を込める。


 ——バキッ!!


 簡単に、断ち切れた。


「……っ」


 ネリアが、小さく息をつく。


 レイカの縄も断つ。


 次に——


 カイル。


「すまん……」


 苦しそうな声。


「いいから動くな」


 短く言う。


 そのまま縄を引き裂く。


 全員、自由になる。


 ……よかった。


 胸の奥で、一度だけ安堵が広がる。


 息はあるが、重傷だ。


 今やるべきことは終わった。


 視線を戻す。


 残っている神官たちへ。


「……お前らは、逃がさない」


 低く、言い放つ。


「ひっ……!」


 完全に、戦意を失っている。


 だが——


 関係ない。


 踏み込む。


 地面が砕ける。


 距離が消える。


 右腕が刃へと変形する。


 振るう。


 それだけで。


 終わる。


 ひとり。


 またひとり。


 音もなく、倒れていく。


 最後に、残った神官が膝をつく。


「や、やめ——」


 言い終える前に。


 左腕が振り下ろされた。


 沈黙。


 炎の音だけが、残る。


 動くものは——


 もういない。


「……はぁ……」


 息を吐く。


 ようやく、止まる。


 静寂。


 戦いは、終わった。


 だが——


 終わっていない。


 すぐに振り返る。


「ネリア!」


 駆け寄る。


「…お兄、ちゃん……」


 か細い声。


 まだ、生きている。


「もう大丈夫だ」


 そう言いながら、自分でも分かっている。


 全然大丈夫じゃない。


 村は、壊された。


 家族は、傷ついた。


 そして——


「……逃げたな」


 遠くを見る。


 森の奥。


 確信する。


 こいつらは終わらない。


 もっと強い存在を連れて。


「……なら」


 小さく呟く。


「次は、絶対に」


 潰す。


 その言葉には、もう迷いはなかった。

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― 新着の感想 ―
なかなかの展開でどうなることかと思いましたが、なんだかすごいものが生まれましたなぁw 読みやすいです。 また読みにきます(^^)
ダークファンタジーと聞いてやってきました。 今後も追わせて頂きます。 ご健康にはお気をつけて・w・v
宇月ナギ先生、連続のご投稿お疲れ様です。八神慶が転生した経緯が愛情の欠落であったならば、今生はネメシス家の家族愛に、守るべきだと信じられる温もりに包まれていてカルラは幸福でしたね。野生動物が魔獣化して…
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