71話 狼の群れ
アニキと呼ばれていた男を拘束し、地下室から一階に戻ると、スズカとオルガが既に気絶した奴らを縛り上げ、床に転がしていた。
ほう、もう尋問の準備を進めてくれているとは…
優秀な仲間で助かるね。
アイズも既に目を覚ましていた。
酷い怪我もなさそうでよかった。
「おう、カルラ。手間をかけさせてすまん。っていうか、こいつに勝ったのか?やっぱすげえなお前は」
「いや、めっちゃ手強かったよ…次戦ったら勝てる保証はないな」
いやマジでこいつめっちゃ強かった。
俺がわずかでも出し惜しみしてたら、間違いなく殺されていたのは俺の方だった。
そして、男の部下と思われる連中が、次々と目を覚まし始めた。
「っ!!アニキ!おいてめえら!アニキに何しやがった!」
「ここまで好き勝手やりやがって!後で落とし前つけさせてもらうからな!」
目覚めた男の部下たちは、縛られながらも、鋭い視線と怒声でこちらを威圧していた。
ていうか言葉遣い…ヤクザかよ…
よくもまあ縛られた状態で言えたもんだ…
「よせ、俺たちは負けたんだ。潔くしろや!」
「っ!アニキ!起きたんですね!」
「っしゃあ!アニキ!こいつらぶちのめして俺たちにケンカ売ったことを後悔させてやりましょうよ!」
えええ…
こいつら縛られた状態で何言ってんの?
さっきのアニキとやらの言ったこと聞いてなかったの?
そのアニキは俺にタイマンで負けたんだが?
だが実際、この男に抵抗されたら困るんだよな。
このアニキと呼ばれてる男も縄で拘束してはいるが、気休め程度にしかならないだろう。
奴の影転移なら、抜け出すのは造作もないだろう。
アイズの光属性魔術もあるし、俺の火属性魔術もある。
影転移を使えばダメージを与えることはできるだろうが、転移自体を止めることはできないだろう。
そうなると面倒なことになる。
「そこの…カルラっつったか?俺はてめえに負けた。今さら抵抗なんかしない。それで、拷問でもする気か?」
「あ、ああ。拷問をする気はないが、それはあんたら次第だな。大人しく答えてくれたら、無駄に傷つけるつもりはない」
抵抗の意思はないようで一安心だ。
「そうか。俺たちに不利益になるようなことは答えるつもりはない。たとえ拷問してもな。それ以外なら答えてもいい」
おお、それは助かる。
だが、質問には気を付けないとな。
「じゃあ、まず聞きたいのは…そうだな…お前の名前は?」
「…なんだ?今更自己紹介か?」
俺の質問に、男は面食らったような表情をしながら返した。
「いや、何て呼べばいいかわかんないし」
「…ファングだ」
「そうか、ファング。一応聞くが、この薬の出所は知っているか?」
俺は薬が入った包み紙を懐から取り出しながら問いかけた。
「知らねえ。それは俺たちも調べていたところでな。俺がそこの二人を捕縛したのも、この薬について聞くためだったんだ」
俺がクロウを見ると、俺に向けて頷いた。
どうやら本当らしい。
「じゃあ次の質問だ。お前らは何て組織なんだ?」
「俺たちはこの辺の貧民街をシマにしているギャング、シャドーウルフだ」
「影の狼ね。あんたにピッタリだな。じゃあ、何でお前たちは薬の出所を調べていたんだ?」
「俺たちの組織じゃ、麻薬はご法度だ。短期的には金になるが、それは長続きしないし、下手をしたら宮廷騎士団に目を付けられかねない。だから、誰が俺たちのシマでこんなブツをばら撒いてやがるのか調べて、落とし前をつけてやらねえと気が済まねえんだ」
なるほど、ならば…
「そうか、よくわかった。ところでファング、これは提案なんだが…」
俺はそこまで言って、一拍置いた。
「俺たちと同盟を組まないか?」




